気がついたら無理！絶対にいや！

第21話 内緒話

二人は酒の入ったグラスを前に置いて話していた。

「食事しながら眠るって」とアレクが笑うと
「人生で一度は経験しておくことです」とデイビスが言った。そして、一口飲むと
「これで安心していいかな。男だったら騎士団にでも放り込む所だが・・・アリスが世間知らずのお嬢さんのおかげで楽しいやり方が出来た」というとアレクの反応を見て
「彼女、無理してたって言うか強がっていたのは気づいていただろう？だから頭を空っぽにすればいいかなって思って、くたくたに疲れると考えられない。眠くて。眠ると体からいらないものが出て行くと思ったんだ。彼女素直に歩くし、君も一緒に歩いてくれるし、予想より効果が出たと思う。国に連れて行って話をさせたほうがいい。そうでないと折に触れて思い出す。彼女のことだから、自分がああしていたら、こうしていたらって反省するぞ」

「だが・・・」とアレクが言うと

「整理しよう。わたしが見て感じたことだが・・・わたしがこう思っていたってだけで。正直、婚約者と言っても、所詮リーブル王国の婚約者だとわたしは少し見くびっていた。リーブル王国なんて港の干渉地帯って価値しかないだろう！　だから保護した令嬢を国に連れて行って、これはと言う男と結婚させる。それで終わりだと思っていたが、お前は途中から変わったな。

王国に関しては我が国が港を持つと怖がる国があるから、怖がることで厄介なことをしでかすのが面倒だから、そこに置いているだけ。そういう国だな。そこでどんな統治が行われているかなんて気にしない。『海の一族』を大事にしてくれればそれでいい。大事というよりなにもしないでいてくれればいいと言う認識でいいな」とデイビスは言うとアレクを見て笑った。

「彼女を手放す気はない。まだ彼女はわたしを保護者としか見てない。恩人と見ている。そこにつけ込む気はない。彼女は成長するよ。彼女の能力も彼女自身の前ではどうでもいいくらいだ。執務なんて彼女の本質の素晴らしさから見るとどうでもいい。急いで帰る必要はないから、ここで乗馬を教えようと思う。帰りは馬で帰る。ここは四季が揃っているから、ここだけで楽しめるし、その、喜ばせたい」とアレクが言うと

「拾いものでしたね」とデイビスが答えた。

「本当だ」とアレクは答えた。

『口にすれば恥ずかしいが、わたしは彼女の家族や王族に罰を与えたい。価値もわからず能力を便利に使ったことは許せない。頭を踏みつけたい・・・大人げないと彼女に呆れられると悲しいから黙っているけどね』とアレクが考えていると

「正直、あの国のやつらを滅ぼしたいですね」とデイビスが言いだし
「彼女に嫌われそうだからやりませんが」と残念そうに付け加えた。

「彼女が言っていた炊き出し、ピクニックって民を大切にしろ。特に『海の一族』を大事にするってことの一部だよなぁ。王室はそれを忘れてるんじゃないか？」とアレクが言うと

「わたしもそう思う。接触してみて場合によっては忠告するかな。国は存続して欲しいからな」とデイビスが言うと

「確かにクレールスター皇国としてはそうだな」とアレクが答えた。