魔力がなくなって冷遇された聖女は、助けた子供に連れられて

10 飼育塔の騒ぎ

その時、俺はカミーユに危険が迫った事を感知した。

「オリビア様も休んだ方がいいのではありませんか？」と言うロザリーの声

「そうさせて貰うわ。レイ君一緒に行きましょう」とオリビアの声・・・


「僕、カミーユが心配なので迎えに行きます。飼育塔の方ですね」と言うと部屋を出た。




カミーユの元へ最速で走った・・・なんだこの短い足・・・もっと速く・・・速く・・・

悲鳴と怒鳴り声が聞こえる。カミーユがいた。なにやら太ったおばさんをかばっている。おばさん静かにしろよ・・・

「あなたたち、早く助けなさいよ・・・なにやってるの・・・ほらこっちに来るわ」

大声出すからだろう・・・

倒れた男のそばに落ちている剣を拾うと、カミーユに向かって走った。


カミーユに爪が届く前に一頭倒した。次はと身構えた。


「君、余裕そうだね。出来れば殺さないでくれる？」とのんきな声がした。

そちらを見ると護衛に守られたのんきな面の男が立っていた。


カミーユが無事ならなにも殺す必要はない。俺はじっとして騎士団らしき者が魔獣を檻に追い込むのを見物した。

「あなたが早く助けないから・・・枯れだから仕方ないけど・・・そこの若いのが来なかったら」とおばさんがのんきな男に話しかけ、カミーユはきれいに礼を取っている・・・

のんきな男は長い時間、カミーユに頭を下げさせ、じっと見ていたが

「楽にしていいよ」と言うと

「枯れ聖女がどうしてこんな所に？」と聞いた。

「はい、オリビア様の御用で」と答えた。ちっとも俺を見てくれない。子供のやることだ・・・カミーユに抱きつこう。と思ったが、目線が・・・カミーユが小さい・・・のんきの顔が同じ所に・・・

俺は自分を見下ろした。男がいた。

「そちらの従者は君の？」と俺を見た。

カミーユが俺を見て目を見張りそれから

「レイ、来てくれたのね」とだけ言った。

俺は黙ってうなづいた。

「御用も済みましたので戻ります。失礼します」とカミーユは戻ろうとしたが、

「なによ。待ちなさいよ。詫びて行きなさい」とおばさんがカミーユの腕をつかまえた。するとのんきが

「どうして、聖女がただの事務員に詫びるんだ？」と聞いた。

「はい、殿下。魔獣が逃げ出した時、わたしはすぐに逃げようとしました。そうしたら転んで足を痛めたのです。そうするとわたしの声を聞いたこの枯れが来たんですが、もたもたしていたんで魔獣がそばまで来たんです。あんな怖い思いをしたのは始めてです。この女がもっと早く来ていればよかったんです」

「聖女はおまえをかかえて逃げようとしたのか？」とのんきが言うと

「はい、ちゃんとかかえないから、痛めた足が痛いし・・・もたもたよたよたして」と言うと

もたもたの所でのんきの護衛の一人が吹き出しかけて必死でこらえていた。

のんきは真面目な顔で

「そうか、もたもたよたよたするのは良くないな」と言うとカミーユに向かって

「この女を抱えるのは大変だったであろう」と言うと今度は俺に向かって

「今日はゆっくり休ませてやってくれ。今怪我したものを治療するように聖女を呼んでいるが、枯れ・・・カミーユだったか？疲れたであろう。気をつけてな」と言った。俺は頭をのんきに向かって頭を下げた。

「カミーユ様帰りましょう」と手をとるとそのまま出口に向かった。