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7.君がいることがあたりまえになって

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「あー、もう工藤君ったら。鈴音ちゃん、髪結びなおしてあげるからこっちおいで」

 すっかり梨花さんに懐いているようだ。ふたりは顔は似ていないけれど、まるで姉妹のようにも見える。鈴音が何歳なのかはよくわからないけれど、外見だけで判断するなら、僕とそこまで離れてはいないのだと思う。

「この髪飾り可愛いね。鈴がついてて。鈴音ちゃん専用って感じで素敵」
「タクミ、これ買ってくれたやつか? ありがとう。大事にする」

 そういえば朝は慌ただしく準備したから、鈴音には髪飾りを見せられていなかった。髪飾りを手のひらに乗せて嬉しそうにしている鈴音を見て、なんだかむず痒くなってくる。

「そんなにまじまじと見ないで。綺麗に処理したつもりだけど、汚いところ見つかりそう」
「えっ、これ工藤君が作ったの? すごい。じゃあ、世界にひとつだけしかないんだ。特別だね」
「別にそんなに難しくないし……手先は器用なほうだから」
「特別……嬉しいな」

 嬉しそうに呟いた鈴音の顔を見て、こんなに喜んでくれるなら作った甲斐があったな、とほっとする。

 それから談笑しながら食事を済ませ、手土産いっぱいで家に帰った。梨花さん直筆のレシピをいくつかと、数日は持ちそうな大量のおかずをタッパーに詰めてもらって。鈴音のシャンプーについても相談したら、試供品のパックをたくさんくれた。あとは、この前約束した鈴音用の洋服も何着か。たくさんもらってしまって申し訳ないと言うと、熊谷さんも梨花さんも口をそろえて「この工場で働いているみんなは家族みたいなものだから」と笑っていた。

 熊谷さんたちは問題ないと言ってくれたけれど、負担をかけているに違いないだろう。いつまでも世話になるわけにはいかないな、とやはり思い直す。鈴音もやる気みたいだし、これからはちゃんと自炊もして自分の力で生活をうまく回していけるようにならないと。

「鈴音、次の休みは一緒にごはん作ろうか」
「タクミも料理できるのか?」
「やったことないからわかんないけど。鈴音のほうが上手かもしれないな」
「じゃあ教えてやろう」

 そう言った鈴音はやっぱり得意げで。

(なんか、上から目線なんだよなあ……)

「お手柔らかにお願いします」
「うむ」

 どこで覚えてきたのか、基本的に僕の言葉は理解しているけれど、たまに言葉遣いはおかしくて。それでも不思議と腹は立たない。むしろおかしくて笑ってしまう。
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