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14 大好きな叔父上(カイラス視点)

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「叔父上……」

「ううっ……情けない叔父でごめんよ、カイラス」

 叔父上!食べたい、可愛いです。叔父上叔父上叔父上……はぁはぁ!鎮まれ私、今は駄目だ今は駄目だ。濡れた髪に簡単に羽織ったシャツ姿の叔父上なんてなんて素敵なオカズ……違った、間違えた。

 叔父上はクリスティンの婚約者の両親であるファール伯爵に送られて帰ってきた。どうもカルセニア伯爵に迫られて逃げ出したらしい。あのクソ野郎、今すぐ八つ裂きにしたい。このジェス家の為に10年も引き籠っていたフレデリク叔父上は立ち上がった。途切れてしまった人脈や人付き合いを復活させるために必死で苦手な夜会に出かけている。

「ううっ……」

 毎回毎回、苦手なパプリーを食べる時の顔で礼服に着替えているのがとても可愛らしい。叔父上がアージェ様を喪う前、一緒に食卓を囲み、アージェ様お手製の野菜炒めが出て来たっけ。

「クリス、カイラス。ちゃんと野菜も食べるのよ」

 そう笑顔でアージェ様に言われ……子供であった私とクリスティンに「教育の為」と苦手なパプリーもモリモリ齧って

「は、ハハハ!ジェスで採れた野菜は何でもおいしいなあ……ううっ!」

 と涙目になっていたことを思い出す。あの頃から私は叔父上が大好きだった。

 父との思い出は皆無だったが、母と私は貧しい暮らしをしていた。父親が誰だか分からない子供を一人で育てるには母は虚弱すぎた。無理がたたってすぐに寝込んでしまう。それを知って助けてくれたのはまだ当主になったばかりのハルトス義父上だった。
 
「……ジェスは貧しくて田舎だけれど、ご飯くらいは食べさせてあげられると思うから。大丈夫、王都からかなり遠い。誰も追いかけて来ないよ」

 そうやって母と幼い私に手を差し伸べてくれて、領地で匿ってくれた。ジェス家の皆の献身も届かず、母は亡くなったが、私がこうして暮らしていけるのも全てハルトス義父上とジェス家、そしてフレデリック叔父上のおかげだ。同い年のクリスティンと分け隔てなく接し、愛し、学園にも通わせて貰った。
 これから恩を返し、アージェ様を喪ったショックで空を見上げて暮らすフレデリック叔父上の世話を引き受けようと思っていた所にまさかの悲報。ハルトス義父上が事故で亡くなるなんて。

 しかしたった一つ嬉しかった事はフレデリック叔父上が戻ってきたことだった。

「兄上と義姉上……そしてアージェにしっかりしろと殴られたよ」

 自嘲気味に微笑む叔父上は相変らず女神のように美しかった。叔父上、叔父上の為なら私は何だってできます。


「叔父上……私がついています、大丈夫です」

「ありがとう……私はとても頼りになる甥を持ったね。大丈夫今度はあんな奴けちょんけちょんにしてやる」

 叔父上の細腕では難しいかもしれない。剣は学園の成績で上位3位に入るほどだったが、もっと実践的な物を覚える必要がある……叔父上は私が守る!!

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