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20 断罪し、追放した王太子の弟

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「返事はゆっくりで良い。でも手をこまねいていたら誰かに君を取られそうだから、つい」

 オルウィンは何を言っているのか。とりあえず、王の侍従が呼びに来たのでそちらへ逃げさせて貰った。

「フレイ、変な顔をしている。さてはオルウィンに告白でもされたか?」

「ベルモンド義兄上。オルウィンの病は深刻です。早く医者に」

 王が待つ部屋の前にはベルモンド義兄上もいた。早く何とかしないと手遅れになる!

「フレイ。君は恋愛についてはポンコツだったね。後、オルウィンはだいぶ昔から手遅れだから、あれで良いんだ」

 非常にひどい事を言われた気がするが、王からの呼び出しの方が大切だ。

「開けます」

 侍従は頭を下げてそう言ったので、私達は無駄口を叩くのをやめた。追求は後でだ。

「フレデリック、本当にすまなかった。謝って済む事ではないが、あの兄のやらかした事だ」

「滅相もございません……」

 私はそう言うしかない。今の王はアージェを断罪し、追放した王太子の弟だ。アージェを追放し、当時の王太子と聖女は婚約し結婚したが、長くは続かなかった。最初は良かったが、どんどんメッキが剥がれ……そしてアージェを手にかけた事でそれまで証拠を溜め続けていたヴィオル家に完膚なきまでに叩きつぶられた。

「もっと早くあいつらを殺せていればアージェも子供もこんな目に遭わなかったのに!!」

 何度も何度も言われた言葉を夢現に聞いた気がする。正気を失っていて良かったのかもしれないと今では思う。もし、正気だったらヘルガ義姉上になんと暴言を浴びせ掴みかかったかわからない。
 きっとヴィオル家の人々全てに噛み付いただろう。そんな事をしてもアージェもあの子も戻ってこないのに。

 ヘルガ義姉上に全てを暴かれ、偽聖女は死罪、王太子は廃嫡の上北の外れに「療養」に出された。そして第二王子だった人が王太子となり、今の国王になって……目の前にいる。
 謝られても過去は何も変わらない。

「しかもジェス家の不幸……違うとは思うがまたあの偽聖女が絡んでいないかとても心配だ」

「まさか」

 そんな恐ろしい事があってたまるか。

「王家としても最大限の便宜を図りたい。何でも頼って欲しい、フレデリック・ジェス子爵」

「ありがたきお言葉、勿体のうございます。甥のクリスティン共々、誠心誠意王家に仕える所存であります」

「ありがとう、フレデリック」

 はぁ。王家という最強の後ろ盾を得た気がする。やったぞ、私はやり遂げたのだー!これなら皆に大きな顔が出来るだろう!
 後は確実で堅実な領地経営をして行くだけ!

 まだ残って何か話したそうな王の前を下がらせて貰う。ベルモンド義兄上はまだ何かあるらしく残ったが、私の精神力はもうゼロだ!倒れちゃうよ。

 何とか扉から退出して

「ひはぁーーーー!」

 と、大きく溜息をついたら侍従殿にクスクスと笑われてしまった。

「仕方がないでしょ、最近まで引き篭もりのただの子爵当主代行なんだから……」

「そういえばそうでございますね。でもフレデリック様と言えば有名人で……」

「それは私じゃなくて「フォデリック」でしょう?」

「あ!そうでございますね」

 この少しお喋りな侍従殿との会話は緊張しきっていた私を少し解してくれてとても助かった。さあ、今日はもう帰りたいぞ!!ベルモンド義兄上を置いて帰ったら怒られちゃうだろうなぁ~。それでもパーティ会場へ戻る為に廊下を歩き始めた。

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