47 / 139
47 俺、しーらね
しおりを挟む
「帝国の太陽にご挨拶致します!」
「……」
扉を開けさせると満面の笑みの男がツカツカと入ってきて、執務机についたままのラムに口上を述べ始めた。俺はラムの後ろに立っている。
その男の後ろを真っ赤な物体がついて来て……横幅が広いもんで、窮屈そうだ。
腰を屈めて女性特有の跪礼をしている。まあ、礼は綺麗だと思う、礼はね。
「何用か、ウォルター・レジム公爵」
硬質なラムの声が飛ぶ。あーかなりご立腹だ。皇帝であるラムは基本あまり感情を表には出さない。だから気が付かない人もいるかも知れないが、これはかなり怒っている。
いや、流石に公爵家当主なら陛下の気持ちにくらいは気がつくよね?
「本日は我が娘リリシアを陛下の御前に連れて参りまして……」
気づいて、ない、のか?!にこにこと何故か上機嫌で、自分の言いたい事を言い始めた。おーい、礼儀どうした?偉い人から聞かれたらまず答えなきゃいけないんだぞー。お前の娘の話なんて誰も聞いちゃいないぞー。
これはレジム公爵家は大丈夫じゃない家だな。娘の教育が悪いだけじゃない。この家ぐるみで「ダメ」なんだ。教育もマナーも家柄が良いならばそれ相応のレベルがないと駄目なんだからな!
「私は今、武官と文官の軋轢について側妃と議論をしていた。それを邪魔するそちとそちの娘とやらはさぞかし素晴らしい解決策を持っているのであろうな」
「は……?」
まさかそう来るとは思わなかったらしく、レジム公爵はぽかんと口を開けた。いや、だってここは執務室。仕事する場所よ?仕事の話をするのは当然だよ。
……過去に何回がむにゃむにゃして、侍従達とメイドちゃんにやんわり叱られたことはあったけど、今は綺麗さっぱり忘れた!
「発言を許そう、さあ解決策を述べよ。その不快な色の服を我が前で纏う理由もあるのであろう!」
「え……」
俺はじぃっと公爵令嬢を観察する。突然言われ、言葉を失ってしまっているが……何故この令嬢は真っ赤なドレスなど着ているのだろうか……。
皇帝ラムシェーブルの前で赤い服は禁止、もっと言えば赤いドレスは禁忌とされているのに。
赤はラムの嫌いな色だ。俺の何着入っているか分からないワードローブの中にも赤い服は一つもない。しかも真っ赤なドレスはラムの大っ嫌いな服装だ。王宮の皇帝の側で働く者ならば誰もが知っている事なのに、公爵令嬢は何故真っ赤なドレスをまとっているんだ?
憎しみの眼差しすら向けるラム。俺は理由をソレイユ様から聞いて知っている。赤い服は飛び散った血を連想させるから……ラムの母親は真っ赤なドレスを着ていた時に暗殺者に斬られて死んだらしい。まだ10歳程だったラムの目の前で起こった惨劇。赤いドレスはラムにとってトラウマの塊であり、それを克服するのにかなりの時間を要した……。
先日は公爵令嬢だから見逃したが、また赤いドレスで来るとは。正気を疑うぞ。
きついラムの視線にレジム親子は石像のように固まっている……どうすんだ?コレ。まーしばらく放置だな。見栄えが悪いから早目に徹去して欲しい。
「誰かジョエルを医務室へ。ルト、窓を開けて」
「あ!はい!」
扉の前で青い顔をしているジョエル。相当強く打ったのかな……お前の仕事っぷりは評価されてるぞ!そしてジョエルが戦線離脱で代わりにルトが戦場に。何で窓かって?
あの太ましい真っ赤令嬢、香水のつけすぎで臭いんだよ……。しかもラムの嫌いな甘ったるい薔薇の香水。
こんなに機嫌の悪いラムを見たのは初めてかも……俺、しーらね……!
「……」
扉を開けさせると満面の笑みの男がツカツカと入ってきて、執務机についたままのラムに口上を述べ始めた。俺はラムの後ろに立っている。
その男の後ろを真っ赤な物体がついて来て……横幅が広いもんで、窮屈そうだ。
腰を屈めて女性特有の跪礼をしている。まあ、礼は綺麗だと思う、礼はね。
「何用か、ウォルター・レジム公爵」
硬質なラムの声が飛ぶ。あーかなりご立腹だ。皇帝であるラムは基本あまり感情を表には出さない。だから気が付かない人もいるかも知れないが、これはかなり怒っている。
いや、流石に公爵家当主なら陛下の気持ちにくらいは気がつくよね?
「本日は我が娘リリシアを陛下の御前に連れて参りまして……」
気づいて、ない、のか?!にこにこと何故か上機嫌で、自分の言いたい事を言い始めた。おーい、礼儀どうした?偉い人から聞かれたらまず答えなきゃいけないんだぞー。お前の娘の話なんて誰も聞いちゃいないぞー。
これはレジム公爵家は大丈夫じゃない家だな。娘の教育が悪いだけじゃない。この家ぐるみで「ダメ」なんだ。教育もマナーも家柄が良いならばそれ相応のレベルがないと駄目なんだからな!
「私は今、武官と文官の軋轢について側妃と議論をしていた。それを邪魔するそちとそちの娘とやらはさぞかし素晴らしい解決策を持っているのであろうな」
「は……?」
まさかそう来るとは思わなかったらしく、レジム公爵はぽかんと口を開けた。いや、だってここは執務室。仕事する場所よ?仕事の話をするのは当然だよ。
……過去に何回がむにゃむにゃして、侍従達とメイドちゃんにやんわり叱られたことはあったけど、今は綺麗さっぱり忘れた!
「発言を許そう、さあ解決策を述べよ。その不快な色の服を我が前で纏う理由もあるのであろう!」
「え……」
俺はじぃっと公爵令嬢を観察する。突然言われ、言葉を失ってしまっているが……何故この令嬢は真っ赤なドレスなど着ているのだろうか……。
皇帝ラムシェーブルの前で赤い服は禁止、もっと言えば赤いドレスは禁忌とされているのに。
赤はラムの嫌いな色だ。俺の何着入っているか分からないワードローブの中にも赤い服は一つもない。しかも真っ赤なドレスはラムの大っ嫌いな服装だ。王宮の皇帝の側で働く者ならば誰もが知っている事なのに、公爵令嬢は何故真っ赤なドレスをまとっているんだ?
憎しみの眼差しすら向けるラム。俺は理由をソレイユ様から聞いて知っている。赤い服は飛び散った血を連想させるから……ラムの母親は真っ赤なドレスを着ていた時に暗殺者に斬られて死んだらしい。まだ10歳程だったラムの目の前で起こった惨劇。赤いドレスはラムにとってトラウマの塊であり、それを克服するのにかなりの時間を要した……。
先日は公爵令嬢だから見逃したが、また赤いドレスで来るとは。正気を疑うぞ。
きついラムの視線にレジム親子は石像のように固まっている……どうすんだ?コレ。まーしばらく放置だな。見栄えが悪いから早目に徹去して欲しい。
「誰かジョエルを医務室へ。ルト、窓を開けて」
「あ!はい!」
扉の前で青い顔をしているジョエル。相当強く打ったのかな……お前の仕事っぷりは評価されてるぞ!そしてジョエルが戦線離脱で代わりにルトが戦場に。何で窓かって?
あの太ましい真っ赤令嬢、香水のつけすぎで臭いんだよ……。しかもラムの嫌いな甘ったるい薔薇の香水。
こんなに機嫌の悪いラムを見たのは初めてかも……俺、しーらね……!
895
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる