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55 それとなーく探る

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 俺はラムの後ろに隠れている。

「ですから、騎士団はどうしてそんなに……」

「有事の際に備え、武具を整え、訓練するのはただでは出来ぬ。その優秀と言われている頭の中身は空っぽか!」

「貴方達に言われたくはありませんね。頭の中身まで鍛えすぎて中に何が入っているのか分かったものではない癖に」

「貴様……我らを愚弄するか!」

「本当の事を言ったまで!」

 全てタイミングが悪かったのだ。俺とラムは武官と文官のいざこざの原因は何なのか、それとなく探りを入れはじめだ。何せこの件はレジム公爵に任命してあるので、俺達はそれとなーく騎士団の訓練所に足を運んだり、図書館に行ってみたりとそれとなーく、それとなーく見ているんだ。

 二人でそれとなーく歩いていたらだ。右の廊下と左の廊下から武官の大ボスと文官の大ボスが歩いて来て挟まれたのだ。酷い!

 で、喧嘩を始めちゃった。

「これだから現場を見ないで机に齧り付いている奴らは!」

 かなり大きな声でいうのは武官大ボス、騎士団長のクロード。俺やラムより背も高くて筋肉のしっかりついた甲冑がよく似合うこれぞ、騎士!と言った男だ。濃い目の青い髪を一つに結わえ、前髪もきっちり上げている。
 はっきり言ってかっこいい。

「誰が机に齧り付いてるだって?お前らが後先考えずに予算を使うからその調整に毎回毎回走り回らされて、座っている暇もないっ!」

 そのクロードに負けずに怒鳴るのはセイリオス。文官の大ボスでこちらは宰相を務めている。
 薄い水色の髪が冷ややかな印象を与えるインテリ眼鏡で、美しい人とメイドちゃん達の間でも人気が高い。

「図書館の氷百合なんです!」

「はあ?」

 何のこっちゃ?と思ったけれど言われてみればなるほどなるほど。少し俯き加減で本を読む姿がまるで百合の様だそうな。何人もその姿を見る為だけに図書館に通ったそうだ。

「ラムは好きにならなかったの?」

「セイリオスはとても優秀だから気に入っている」
 
 恋愛関係の好きはなかったみたいだ。

 バチバチ!と本当に電撃の魔法でも飛び交っているのかもしれないほど、二人はやりあい始めた。俺たちを挟んで……!助けて、ラム!!

「2人とも落ち着け。お前達がそうだから部下達もああなのだぞ」

「しかし!陛下!」「そうです!陛下!!」

 俺とラムがそれとなーく調べた結果。この二人のバチバチが部下達に伝染しているのが原因っぽいんだよなぁ……。俺はラムの後ろで必死になって気配を消した。二人とも言っている事はまああながち間違っていない。

 騎士団はお金がかかる。まあそりゃ国の一大事が起こった時にヘナチョコじゃ困るからね。しかもここは帝国という大きな国家だ。騎士団も12騎士団あり、そして近衛騎士団があるんで、全部で13団体あるって事だからまあ国費の何パーセントも騎士団が食っているのはしょうがない。

 で、騎士達は大体が脳筋だから数字が弱い。そこであおりを食らうのが宰相セイリオス率いる城の政務に携わる者達だ。俺が皇帝に奏上する書式を決めた事で、皆それに習ってくれたから少しは楽になったみたいだが……。

「全て活動費で経費を上げて来るなと何度も言いましたよね!」

「活動費なんだから活動費と言って何が悪い!」

「壊れた練習用の装備の買い替えも、飲み会の費用も一緒に出すなと何度言ったらわかるんです!?飲み会の費用は経費ではありません!」

「経費だろう!!」

 経費じゃないと思うけれど、経費かもしんないよね。とにかく二人の間に何か力がグルグル渦巻いて怖いんだよ!

「ラム……なんか……バチバチでグルグルだ……」

「ああ、こんな所で魔力を練らんでも」

「?!これが魔力!?」

 俺が「魔力とは?」と言う未知の力の感覚をしっかり理解したのはこの時だった。


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