【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
94 / 139

94 社長、不祥事であります!

しおりを挟む
 俺は覚悟を決めて王妃宮に来ていた。

「う、うう……胃が痛い……」

 俺はラムと生きていく事を決めた。でもラムの正式な奥さんはソレイユ様だ。今まではなんていうか気持ちと覚悟が定まってなかったから良かったけれど、でもこれからは違う。ソレイユ様に謝らねば仁義が通らない!

 だからソレイユ様に面会を申し込んだ。うう、緊張する!

「失礼しますっ!」

 社長に不祥事案件を報告する気持ちだ!!この場合、不祥事を起こしたのは俺だ、俺が犯人だぁあ……胃がシクシク痛い。入ると涼やかな立ち姿のソレイユ様が待っていてくれた。

「座って、ディエス」

「は、はいっ!」

 俺はスサッと下座についた。そして

「この度は……!」

 と、口を開く前にソレイユ様が話し出した。

「私とラムは生まれた頃からの婚約者でした」

「はいっ!聞き及んでおりますっ!」

 カチコチと硬くなっている俺を他所に、ふふ、と薄く笑ってからソレイユ様は続ける。

「子供の頃は何の疑問もなく、ラムシェーブルと結婚して2人で帝国をよくして行くんだと思っておりました。そしてそれはラムシェーブルも同じ思いでした」

 俺は静かにソレイユ様の話を聞いていた。

「でもこの帝国は正妃は政治に関わらない。それが伝統であり、そうする様に私は躾けられ、学ばされた……私はその帝国のしきたりを破る勇気がなかった。共に来て欲しいと言うラムシェーブルの手を振り払い、その心を裏切り、しきたりに従いました。私は私自身を守ったの」

 葛藤があったんだろう。でもそれが常識と学んだ物を捨てる事は出来なかった。

「そうやってラムシェーブルを裏切ったのに、彼が側妃を取る事を恐れたわ。女性の側妃だったらどうしよう、ラムが私を見限ったらどうしようと震えたのよ、自分勝手でしょう?」

 俺は首を横に振る。女性の側妃が選ばれ、心が完全に離れたソレイユ様は離婚される可能性もあったんだ。皇帝の寵愛を失ったら正妃と言えど発言力は弱くなる。弱くなれば、この厳しい世界で生き残るのは難しい。

「そしてラムシェーブルは男性の貴方を選んだ。私はとても安堵したのよ?酷い女でしょう?」

 そんな事はない。ソレイユ様は最初から俺に優しかった。

「そうしたら、貴方はとても良い子だった。私をラムの妻として扱い、自分は下で良いと身を引いた。その姿に私がどれほど助けられたか……私の心は貴方に守られていたのよ?」

 そんなつもりはなかった。でもソレイユ様は絶対頼りになるって思ったから……取り入るのに必死だっただけ。

「それなのに貴方は何度も何度も私を救ってくれるの。ウィルも貴方がいなければ今頃名も貰えず土の下だった……そして私が殺したラムの心を生き返らせてくれた……ありがとう、そしてごめんなさい。そしてラムをお願い、私のように捨てたりしないであげて」

「ソ、ソレイユさま……」

「一度ラムシェーブルを裏切った私はもう子供の頃と同じように純粋にラムを愛する事が出来ない。でも貴方は違う。お願いします、ラムシェーブルをお願い」

 ソレイユ様は立ち上がり、床に膝をついて頭を下げようとする。

「わっ!やめて下さい!ソレイユ様、頭を上げて!!」

「もう貴方しかラムシェーブルを真に愛してあげられる人がいないの、お願いよ、ディエス!」

「えっと、あの……その件についてこちらにお邪魔したのですが……」

「私が出来る事なら何でも」

 俺はしどろもどろでラムを好きになって申し訳ない事を説明した。恥ずかしくて上手く話せなかった……ううっ!

「ディエス……貴方はなんて良い子なの!!」

 ソレイユ様にぎゅっと抱きしめられた!ひえっ!柔らかくて良い匂い……じゃなくて!

「ありがとう、本当にありがとう!ラムシェーブルをお願いね!ああ、貴方はまた私の心を救ってくれるのね!」

「そんな、私こそ……ラムはソレイユ様の旦那なのに……」

「旦那と言うより、ラムシェーブルは大きな子供みたいな物よ?なんだか息子に立派なお嫁さんが出来た心地だわ!」

「ええー……?」

 でも本当に嬉しそうに、まるで踊り出しそうなソレイユ様を見て、俺も物凄く安堵した。
 

 何だが思っていたのと違う結果になって、ある意味拍子抜けして正妃宮から帰ってきた。

「私はソレイユの子ではないぞ」

「分かってるよ……」

 ラムの執務室に戻ると口を尖らせて文句を言っているので、まあそれ程怒ってはいないようだ。ラムは怒ると無表情、無口になるタイプだもんな。

「ジンギとやらは通ったのか?」

「うん、通った、と思う」

 俺達は誰にも後ろ指を差されることなく笑い合っていたいから。それはとても贅沢な事だろう。
 ソレイユ様は俺の事を良い子だって言うけれど、ソレイユ様の方がずっと良い子で、素敵な人だ。

「俺は幸せ者だなぁ」

「不幸になられては私の沽券に関わる」

 あ、そうですね、旦那様よ。



しおりを挟む
感想 266

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

処理中です...