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バトル★ジャンキーズ

26 僕はお腹が空きました。

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「リィン君ーあたま洗ってー!」

「ハイハイ 殿下、お痒い所はございませんかー?」

 私、オカンかな?
ここはもともと客間だった場所に備え付けられた風呂だ。客間の方は今はコーディ殿下の部屋になっている。
 1番最初に寝ていたベッドもこの部屋のものだ。
 その風呂場で大型ワンコの丸洗い中だ。

 殿下はお湯に何も入れずに入る。匂いがきついと鼻がバカになるから、嫌なのだそうだ。

「でね、血の匂いで鼻が利かなくなるでしょう?」

 愉快そうに話す。今日あった出来事を。

「そうですね」

 静かに相槌だけを返す。

「でね、そこにアルトが来てさ、先頭で突っ込んで行くから皆んなびっくりして!で、新兵とか昔のアルト知らないから青くなったりしてさ!」

「お強いですからね。陛下は」

「まだまだ本気じゃなかったよ」

「あのお方を本気にさせるのは難しいです」

 だよね!


 そして、沈黙が降りた。

 私は何も言わず、コーディ殿下の両手の平を上に向ける。
 大きな手。一部皮が剥けたままで、暖かいお湯の中でひらひらと舞っている。

 手は震えていた。

 あえて、手のひらに話しかける。

「ありがとう、私の期待に応えてくれて。わがままを言ってごめ「謝らないで‼︎」」

 最後までは言わせて貰えなかった。

「これは僕の罪だ!僕の分まで持って行こうとしないでくれ!」

「殿下…」

「罪なんて怖くない」

 暖かい湯の中で、カタカタと震え続ける。

「何とも思わないんだ…武器を振り下ろすことを。その結果、どういうことが起こるのか、知っているのに何も思わないんだ」

「殿下…」

「何とも思わない自分が怖い。怖いんだ」

「大丈夫ですよ、コーディ殿下」






 風呂から殿下を引き上げる。夕食は部屋に用意してもらった。腹が減っていると余計な事ばかり考えてしまう。
 大勝の祝いと、比較的高級なワインを空けて行く。風呂上りの喉を潤すような口当たりの良い物を選んで。
 お腹が空いたからと、ステーキを頬張り、そして飲む。
 他愛のない話、気のおける友人のように、笑い合い冗談を言う。

そして

「リィンくぅんー好きぃ…」

「はいはい、知ってますよ」

「今日はぁ~寝かさないんだからねぇえ…」

 殿下は寝た。



「えーコー君またなの?ヘタレすぎたよ?」

「うわあああああーーー!」

 翌朝、私は涼しい顔をした。

 
 怨嗟の血の平原の話は、瞬く間に広がった。見せしめに放置することになる。

 処理が遅くなれば、魔物が沸く危険地帯になるだろう。戦争が終わったら最初に片付ける案件だ。

 そろそろ帝国が本格的に敵対してくるだろう。

 アルトはまだまだ進撃するようだ。
早くソランジェから返事が来ないものか?

 と、思っていたら空から男の子が降ってきた。親方に報告したい。

「リィンーー!」

「トットか!」

 空中でくるりと1回転して、きれいに着地したトットは、鞄から注文書を取り出した。
 
「こっちがーキューブワースの注文書でーこっちがファディアン用の注文書でーす」

 アルトに数枚の紙を渡す。後でカティスにも持っていくのだろう。

「リィンにお届けは、ソラナミンCと、ソラビタンDでーす。」

「ソラビタンD」

「ソラビタンD」

  繰り返してしまう。いっぱーつ!

「無理しちゃだめだよ、って伝言」

「とても元気がでそうなポーションだけどね?」

 ソランジェのポーションは一流品だからね!ふん!とトットは胸を張った。

「でも、トット。この注文書の1番下の『特製ポーション(時価:1000万以上ご用意下さい)』って何?」

「…!し、しりゅましぇええーーん!」

 ぽん!と大きな音を立ててトットは鳥の姿に戻り、空へ逃げ出した。

 マッド錬金術士ソランジェさん、何を売るつもりなの⁈






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