【完結】その壊れた恋愛小説の裏で竜は推し活に巻き込まれ愛を乞う

鏑木 うりこ

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18 本性を忘れてはいけない

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「ルシダールっ」
「〈竜鱗展開!〉」
「おっし! おめーらちょっと遊んでやんよぉ?」

 誰かに手引きされたのか、夕刻に暗殺者に襲われた。しかも城の渡り廊下でた。
 アリアンの指示通り、数語の発言で竜語魔法は発動し、半透明な鱗の防御膜が私とアスガン宰相の周りに出来上がる。

「くっ!」

 ガン、ガキン!と剣で切り付けられようと、鈍器のようなもので殴られようと、防御膜はびくともしない。

「炎っ!」
「うわっ」

 アスガン宰相は暗殺者が放った炎魔法が飛んでくるのを視認して声を上げるが、炎も防御膜に阻害される。

「熱くもない……」

 顔のほんの少し前に鱗のような膜があるのに、熱ささえ通さない……本当に便利な魔法だ。そして、暗殺者どもはアリアンのおもちゃにされている。

「あーっはっはっは! 脆い、人間は脆いなぁ? おい!」
「う、うぎゃっ」

 アリアンは護身用にと腰に剣を吊っているがそれを使うことは少ない。頭から六本角が生え、指には鋭い鉤爪が伸び、皮膚のあちこちに黒い鱗が浮かび上がる。
 暗殺者の腕を掴み、無理矢理むしり取り痛みに絶叫する様子を楽しそうに嗤いながら眺める。血生臭い惨状だとしかいいようがない。

「このアリアン様の姿を見るたびに彼が黒竜であることを思い出させてくれます」
「……そうですね」

 元々黒竜は数体いる竜の中でも凶暴で凶悪な竜だ。緑の大陸の緑竜や白の大陸の白竜は人間のことを慈しむ傾向にあるが、赤竜や黒竜は人間をおもちゃ以下にしか見ていない。
 だから普段のアリアンの姿を見慣れることは危険ともいえるのだ。あれはリンカの魔法によって本来の性格を捻じ曲げられているのだから。

「誰に雇われたかさっさといったほうがいいぞ? 魂までバラバラにされちゃあ堪らんだろう? ちなみに魂まで裂かれると、今の痛みを持ったまま、バラされた魂の欠片を全部集めるまで、地上を彷徨くしかなくなるんだぜ、神様の元にいけんのは100年後? 200年後? くっるしぃぜぇ?」
「ひ、ひぃ……ひぃい……っお、俺達は、ギ、ギルドで雇われ……」
「ふーん? ギルドのマスターの名前と場所は?」
「マ、マスターは、ノーネーム……場所は、暗黒街、七丁目ぇ……」
「おっけぇ。じゃあもう死んでいいよ」
「うぎゃっ」

 辺りを血で真っ赤に染めて、アリアンの遊びは終わる。後片付けが大変だが仕方ない。ああやっているアリアンを止めることは難しい。

「ルシー、ちょっと暗黒街七丁目に行ってくるわー」
「警邏に連絡を」
「邪魔だから要らねぇよ。あーやっぱり明日の朝に片付けに来るようにいっといて。放置して腐るとくせぇからな」
「分かった」

 アリアンはそのままふらりと姿を消し、夕食前に戻って来る。

「なーアンダン伯爵って知ってるー?」
「保守派の古狸だな」
「お手紙貰ってきたから、ルシにやるよ」

 無造作にアリアンが投げてよこした紙にはアンダン伯爵が暗殺ギルドに私とアスガン宰相の暗殺を依頼した時の依頼書だった。ご丁寧に伯爵自らのサインがしっかりはいっている。

「どうだ!?」
「完璧だ、ありがとうアリアン」
「へへっ! こういう物的証拠って大事だって俺、知ってるもんね!」

 依頼書は血が飛び散っているから、かなり強引な手段を使ったんだろう……いや、アリアンにとっては普段通りか。そういう荒事の時にリンカは現れない。血生臭い惨状が好きな女性はいない、当然のことだ。

「お前が知っていたんではなく、リンカが知っていたんだろう」
「え? なんかいったか?」
「何でもない、助かったアリアン。これで腐った貴族を一人始末できる」
「よかったな!」

 私とアスガン宰相の計画は順調に進んでいる。




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