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そして入学へ
63 ヒロイン、でも
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「ユウキさん、とりあえず話を聞いてください。私はあなたに何かしましたか?」
「これからするんでしょう!!騙されないわ!」
ユウキさんは神官達に囲まれて、逃げる場所がない。
「ユウキ!いい加減にしろ!聖女マリエル様に!」
「お前なんて声をかけて貰える方ではないのだぞ!!」
「やはりこの女はこの世を乱すだけです!放逐しましょう!教皇様!」
「ニギル子爵に責任があります!かの領に謹慎させましょう!」
「我慢なりません!修道院に入れてしまいましょう!」
口々に言われてやっと少し自分の立場の悪さに気づいたようだったわ。
「え、だって。わ、私はヒロインなのよ……修道院なんて、ヒロインの行くところじゃないわよ!」
「ヒロイン?何を言っているんだお前は。お前はただの女!もう聖女見習いでも何でもないんだぞ」
「う、嘘よ!私はヒロインだわ!!」
あー……ヒロイン最強脳か……ヒロインなら何をしても許されるって思ってるんだね。ヒロインは頑張ってるからヒロインなんだよ……頑張れないヒロインはヒロインじゃないんだから。
「ヒロイン?何を言ってるんだ、ユウキ」
「だってここは「トランプる!」の世界でしょう!!」
「とらんぷるってなんだ?いつもの妄想か?」
「全く、聖女マリエル様に虐められるとか騙されるとか。お前はどこへ行っても人に迷惑をかけているんだな」
なにを言っても神官達は取り合ってくれないし、ここに頼る人もいない。走って逃げる場所もない。これなら話を聞いてくれるかな?
「だって!私は異世界からきた聖女なのよ!」
「聖女じゃないだろう?聖女はマリエル様だ」
「異世界って言ったって、ニギル子爵と地方神殿がそう言っているだけだ。その異世界とやらの証拠はあるのか?」
……思えばそうなんだ、ユウキさんが異世界から来た証拠は……。
「だって、私!日本に住んでたんだよ!学校に通ってたし、電気もあったし、機械も車もスマホもあった!魔法なんてなかったし」
「本当に妄想ばかりだな。それでやっと入れて貰えた学園で貴族様達に迷惑をかけまくっているんだな」
「信じて!」
「何を信じればいいんだ?嘘つきのお前の言葉は何も信じられないじゃないか」
異世界、日本の事を知っている人がこの世界にいなければ、何も証明できないんだ。そしてもう嘘つきだと認定されてしまったユウキさんのいう事を信じてくれる人は誰もいない。
「ほ、本当だもん!私はこの世界の人間じゃなかったんだもん、日本人だもん!」
ぽろぽろと泣き出してしまった……15.6歳の女の子が泣けば、日本では色々許され、大目に見てくれる事が多いけれど、ここじゃ無理よ……この世界で15歳の女性と言えば大人だわ。しかも大人の女性が人前で泣くなんてとても恥ずかしい事って認識されちゃうんだから。
「嘘つきが見苦しい」
ますます冷たい目で見られちゃう。きっとユウキさんは誰かが「大丈夫?」と言って日本みたいに背中を撫でてくれるのを期待していたんだろうけど、誰もそんな事しないわ。人前で感情をコントロールできない出来損ないって思われるのよ。
「北のノーズヴァルド修道院へ送りましょう。もう中央神殿で修業をさせておけません」
「そうだな、ニギル子爵邸に送り返せ!」
なんだかとても可哀想になってきたわ……。
「ユウキっ!!」
その時、聞いたことのないおじさんの声が響いて、カツカツと神経質そうな足音が神官達を押しのけてやってきた。
「お、おじさん……」
ぐしゃぐしゃの顔で一人立つユウキさんの傍まで来ると、そのおじさんはあり得ない事に、手を振り上げてユウキさんをビンタした!な、なんなの!?
「このクズが!学園からとんでもない数の苦情と抗議文、多数の貴族から怒りの手紙が溢れておる!我がニギル子爵家を潰すつもりかっ!!」
「ひ、ひど……酷い、痛い……痛いよう!わあああんっお母さん、お母さんたすけて!」
「黙れ!聖女だと思って呼び寄せてみればただの出来損ないのガキではないか!何のために高い金を払って地方神殿を買収したと思っているんだ!!」
これは流石にユウキさんが可哀想すぎる!もう黙っていられない!!私は泣き喚くユウキさんに駆け寄った。
「これからするんでしょう!!騙されないわ!」
ユウキさんは神官達に囲まれて、逃げる場所がない。
「ユウキ!いい加減にしろ!聖女マリエル様に!」
「お前なんて声をかけて貰える方ではないのだぞ!!」
「やはりこの女はこの世を乱すだけです!放逐しましょう!教皇様!」
「ニギル子爵に責任があります!かの領に謹慎させましょう!」
「我慢なりません!修道院に入れてしまいましょう!」
口々に言われてやっと少し自分の立場の悪さに気づいたようだったわ。
「え、だって。わ、私はヒロインなのよ……修道院なんて、ヒロインの行くところじゃないわよ!」
「ヒロイン?何を言っているんだお前は。お前はただの女!もう聖女見習いでも何でもないんだぞ」
「う、嘘よ!私はヒロインだわ!!」
あー……ヒロイン最強脳か……ヒロインなら何をしても許されるって思ってるんだね。ヒロインは頑張ってるからヒロインなんだよ……頑張れないヒロインはヒロインじゃないんだから。
「ヒロイン?何を言ってるんだ、ユウキ」
「だってここは「トランプる!」の世界でしょう!!」
「とらんぷるってなんだ?いつもの妄想か?」
「全く、聖女マリエル様に虐められるとか騙されるとか。お前はどこへ行っても人に迷惑をかけているんだな」
なにを言っても神官達は取り合ってくれないし、ここに頼る人もいない。走って逃げる場所もない。これなら話を聞いてくれるかな?
「だって!私は異世界からきた聖女なのよ!」
「聖女じゃないだろう?聖女はマリエル様だ」
「異世界って言ったって、ニギル子爵と地方神殿がそう言っているだけだ。その異世界とやらの証拠はあるのか?」
……思えばそうなんだ、ユウキさんが異世界から来た証拠は……。
「だって、私!日本に住んでたんだよ!学校に通ってたし、電気もあったし、機械も車もスマホもあった!魔法なんてなかったし」
「本当に妄想ばかりだな。それでやっと入れて貰えた学園で貴族様達に迷惑をかけまくっているんだな」
「信じて!」
「何を信じればいいんだ?嘘つきのお前の言葉は何も信じられないじゃないか」
異世界、日本の事を知っている人がこの世界にいなければ、何も証明できないんだ。そしてもう嘘つきだと認定されてしまったユウキさんのいう事を信じてくれる人は誰もいない。
「ほ、本当だもん!私はこの世界の人間じゃなかったんだもん、日本人だもん!」
ぽろぽろと泣き出してしまった……15.6歳の女の子が泣けば、日本では色々許され、大目に見てくれる事が多いけれど、ここじゃ無理よ……この世界で15歳の女性と言えば大人だわ。しかも大人の女性が人前で泣くなんてとても恥ずかしい事って認識されちゃうんだから。
「嘘つきが見苦しい」
ますます冷たい目で見られちゃう。きっとユウキさんは誰かが「大丈夫?」と言って日本みたいに背中を撫でてくれるのを期待していたんだろうけど、誰もそんな事しないわ。人前で感情をコントロールできない出来損ないって思われるのよ。
「北のノーズヴァルド修道院へ送りましょう。もう中央神殿で修業をさせておけません」
「そうだな、ニギル子爵邸に送り返せ!」
なんだかとても可哀想になってきたわ……。
「ユウキっ!!」
その時、聞いたことのないおじさんの声が響いて、カツカツと神経質そうな足音が神官達を押しのけてやってきた。
「お、おじさん……」
ぐしゃぐしゃの顔で一人立つユウキさんの傍まで来ると、そのおじさんはあり得ない事に、手を振り上げてユウキさんをビンタした!な、なんなの!?
「このクズが!学園からとんでもない数の苦情と抗議文、多数の貴族から怒りの手紙が溢れておる!我がニギル子爵家を潰すつもりかっ!!」
「ひ、ひど……酷い、痛い……痛いよう!わあああんっお母さん、お母さんたすけて!」
「黙れ!聖女だと思って呼び寄せてみればただの出来損ないのガキではないか!何のために高い金を払って地方神殿を買収したと思っているんだ!!」
これは流石にユウキさんが可哀想すぎる!もう黙っていられない!!私は泣き喚くユウキさんに駆け寄った。
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