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そして入学へ
75 マリエルの評価(クラブエース視点)
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「クラブ、派手にやったな」
「……」
私はクラブ・エース。ブランドン・クラブだ。ここで言い負けてはいけない。私はクラブエースなのだから。
「ふ、しかしダイヤの売上も笑いが止まらないのではないか?」
確かにうちは儲かったが、うちだけじゃない、ダイヤ家だって相当だ。
「それもお前の娘の開発した絹織物だがな?」
「……」
ダイヤエース、金が入れば何だって良い癖に突っかかる。自分主体で興した事業じゃないからだろうけれど、私にそんなことを言われても困る。私だってそんな事知らなかったのだから。
「良いじゃないか、別に。両家ともいい感じだったんだし」
ハートエースはポスターをみてニヤニヤしている。確かにあのポスターはよく出来ている。ハート家の娘が馬鹿みたいに可愛く美しく、女神のように描かれていて、見た我々も少しドキリとしたものだ。
「ソレのせいでかなり遠い国からも婚約の打診があったのだろう?フン、良いところまで娘を売り込めて良かったな?」
一番実入が少なかったスペードエースが眉間の皺を深くする。知るか、お前の娘も息子もあまり全面に出てないと聞いている。
「……そんな遠くにローズリットを嫁にはやらんよ。会えなくなったら泣いてしまう」
ポスターに語りかけるハートエース。コイツ、そんなに娘の事を可愛がっていたか?もっとこう冷たくあしらっているイメージがあるのだが??
「どちらにせよ、招かれなかった貴族からの不満が多くては敵わぬ。来年の開催は国主催で執り行う、問題ないな?クラブエース」
「そのように」
国王にまでちくりと釘を刺されてしまったが、本当に私に言われても困る案件だ。何せ娘が勝手にやった事だ。
勝手に春先に子飼いの農家たちと契約を結び、花を育てさせ、いつの間にか知らないが中央大神殿の神官……いや、一番偉い教皇と懇意になっていた。しかも良く分からないブヨブヨした黒いんだか茶色なんだか分からない長い食べ物を毎回嬉々として持っていくらしい。
「……それはなんだ?」
「お答えしかねます、マリエル様の発案なので」
南の離れの料理人とメイドは本当に口が堅い。たまたま本邸のメイドがその長い食べ物をひと切れ貰ったらしいが
「とても甘くて…‥しっとりつるりとしていながらざらつき感もあるのですが、あああ、あと引くんです~もっと食べたい」
よくわからなかったが、「ヨーカン」というらしい。しかも北の離れの料理人達もそれの作り方を知っているという。おかしいのだ、本邸を挟んで北と南はいつも行き来し、
「トン汁美味しい」「マヨネーズに刻み卵を入れるんだけど」「エビカツがね」
食べ物の話らしいのだが、本邸にそんなものが出てきたことはない。一体何を食べているんだ??
「……クラブ、聞いているのか!クラブエース!!」
「……失礼」
そんなに美味いものが私の口に入らないなど腹立たしいが、今はまだ会議の席だ。考え事をしている場合ではなかった。
「それで今年も改良小麦の生産は順調なのだな?」
「問題なく」
マリエルが「何か」した小麦は病気に強く実入りも良いし何せ粒が大きい……何をしたのかと聞いたら
「いえ何も……ヒールの練習に使ったせいかしら……?」
作物に回復魔法をかける阿呆はいないと思うが、ぶつぶつと呟いていたので何かしたことは確かなようだ。またマリエル、またマリエル。大抵の騒ぎの先にはマリエルがいる。あの娘は一体何をしたいのだろうか。
「クラブエース。マリエル嬢がまた何かやる時は早めに申告するように言ってくれよ?今度はウチもしっかり乗らせてもらうからな」
「……そんなにやらかさんぞ、スペードエース。あまり派手にやるなと言い含めておいたから」
「はあ!?」
ガタガタガタッ!とエース3人が立ち上がる。
「馬鹿を言うな、クラブ家だけで利益を取る気か!?」
「我々に内緒か?マリエル嬢は好きにやらせろ、馬鹿かお前は」
「あの娘は金を生む!それを阻んでどうするんだ?阿呆」
阿呆呼ばわりは流石にないだろう、ハートエースめ。
「マリエル嬢はこの国に新しい風を吹かせるいい王妃になるだろう……クラブエース、君は良い子を育てたな」
「……勿体ないお言葉です」
マリエルの養育に全く関心を持っていなかったがこれからは家の、家族と言う物を振り返らなければならないようだ……。勝手に育ってああなったと言うわけにいかないのだから。
「ところでお土産にヨーカンは持って来ていないのか?あれは美味いなー」
「は!?なんでハートエースにヨーカンを渡さねばならんのだ!?私ですら食べたことないのに!」
「……いや、ウチに良く持って来てくれるぞ?」「アリアも良く貰ってくるが?」「ケイトも持ってくるぞ」
国王まで
「おやつにどうぞとルドルフが貰ったが余ったからと言ってワシにもくれるぞ。栗入りのがとても色合いも美しく素晴らしいな」
わ、私だけなのか!?私にだけヨーカンがないのか?!何故だ、マリエル!!
「……」
私はクラブ・エース。ブランドン・クラブだ。ここで言い負けてはいけない。私はクラブエースなのだから。
「ふ、しかしダイヤの売上も笑いが止まらないのではないか?」
確かにうちは儲かったが、うちだけじゃない、ダイヤ家だって相当だ。
「それもお前の娘の開発した絹織物だがな?」
「……」
ダイヤエース、金が入れば何だって良い癖に突っかかる。自分主体で興した事業じゃないからだろうけれど、私にそんなことを言われても困る。私だってそんな事知らなかったのだから。
「良いじゃないか、別に。両家ともいい感じだったんだし」
ハートエースはポスターをみてニヤニヤしている。確かにあのポスターはよく出来ている。ハート家の娘が馬鹿みたいに可愛く美しく、女神のように描かれていて、見た我々も少しドキリとしたものだ。
「ソレのせいでかなり遠い国からも婚約の打診があったのだろう?フン、良いところまで娘を売り込めて良かったな?」
一番実入が少なかったスペードエースが眉間の皺を深くする。知るか、お前の娘も息子もあまり全面に出てないと聞いている。
「……そんな遠くにローズリットを嫁にはやらんよ。会えなくなったら泣いてしまう」
ポスターに語りかけるハートエース。コイツ、そんなに娘の事を可愛がっていたか?もっとこう冷たくあしらっているイメージがあるのだが??
「どちらにせよ、招かれなかった貴族からの不満が多くては敵わぬ。来年の開催は国主催で執り行う、問題ないな?クラブエース」
「そのように」
国王にまでちくりと釘を刺されてしまったが、本当に私に言われても困る案件だ。何せ娘が勝手にやった事だ。
勝手に春先に子飼いの農家たちと契約を結び、花を育てさせ、いつの間にか知らないが中央大神殿の神官……いや、一番偉い教皇と懇意になっていた。しかも良く分からないブヨブヨした黒いんだか茶色なんだか分からない長い食べ物を毎回嬉々として持っていくらしい。
「……それはなんだ?」
「お答えしかねます、マリエル様の発案なので」
南の離れの料理人とメイドは本当に口が堅い。たまたま本邸のメイドがその長い食べ物をひと切れ貰ったらしいが
「とても甘くて…‥しっとりつるりとしていながらざらつき感もあるのですが、あああ、あと引くんです~もっと食べたい」
よくわからなかったが、「ヨーカン」というらしい。しかも北の離れの料理人達もそれの作り方を知っているという。おかしいのだ、本邸を挟んで北と南はいつも行き来し、
「トン汁美味しい」「マヨネーズに刻み卵を入れるんだけど」「エビカツがね」
食べ物の話らしいのだが、本邸にそんなものが出てきたことはない。一体何を食べているんだ??
「……クラブ、聞いているのか!クラブエース!!」
「……失礼」
そんなに美味いものが私の口に入らないなど腹立たしいが、今はまだ会議の席だ。考え事をしている場合ではなかった。
「それで今年も改良小麦の生産は順調なのだな?」
「問題なく」
マリエルが「何か」した小麦は病気に強く実入りも良いし何せ粒が大きい……何をしたのかと聞いたら
「いえ何も……ヒールの練習に使ったせいかしら……?」
作物に回復魔法をかける阿呆はいないと思うが、ぶつぶつと呟いていたので何かしたことは確かなようだ。またマリエル、またマリエル。大抵の騒ぎの先にはマリエルがいる。あの娘は一体何をしたいのだろうか。
「クラブエース。マリエル嬢がまた何かやる時は早めに申告するように言ってくれよ?今度はウチもしっかり乗らせてもらうからな」
「……そんなにやらかさんぞ、スペードエース。あまり派手にやるなと言い含めておいたから」
「はあ!?」
ガタガタガタッ!とエース3人が立ち上がる。
「馬鹿を言うな、クラブ家だけで利益を取る気か!?」
「我々に内緒か?マリエル嬢は好きにやらせろ、馬鹿かお前は」
「あの娘は金を生む!それを阻んでどうするんだ?阿呆」
阿呆呼ばわりは流石にないだろう、ハートエースめ。
「マリエル嬢はこの国に新しい風を吹かせるいい王妃になるだろう……クラブエース、君は良い子を育てたな」
「……勿体ないお言葉です」
マリエルの養育に全く関心を持っていなかったがこれからは家の、家族と言う物を振り返らなければならないようだ……。勝手に育ってああなったと言うわけにいかないのだから。
「ところでお土産にヨーカンは持って来ていないのか?あれは美味いなー」
「は!?なんでハートエースにヨーカンを渡さねばならんのだ!?私ですら食べたことないのに!」
「……いや、ウチに良く持って来てくれるぞ?」「アリアも良く貰ってくるが?」「ケイトも持ってくるぞ」
国王まで
「おやつにどうぞとルドルフが貰ったが余ったからと言ってワシにもくれるぞ。栗入りのがとても色合いも美しく素晴らしいな」
わ、私だけなのか!?私にだけヨーカンがないのか?!何故だ、マリエル!!
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