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召喚勇者
11 歪みの壺2
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たくさんの魔族と人間が亡くなったミーティアの力が暴走した地は「歪みの壺」と呼ばれる跡地になった。
この地では歪んだ生き物が生まれるようになってしまった。
人間に片足だけひづめがある。魔族に角がない。歪な動物、魔物達。
暴走から2か月経ったが、まだ嵐は収まっていない。
「ふぅ……」
ジュンヤは銀月の剣を右手の甲に収めた。
「お疲れさまです、ジュンヤ。今日も金の勇者殿は見つかりませんね……」
「そうですね、ハーヴィ団長……生きていて欲しいですが、もう2ヶ月……」
2人の顔に希望は薄いが、まだ諦めてはいない。
あの時、ミーティアだろう声を聞いて、いち早く駆け出したルーカスのおかげで、ジュンヤは無事に海へ逃れた。
しかし、タカシは災禍の暴走に巻き込まれてしまった。
「うわぁあああ!」
たくさんの悲鳴の中に、タカシのものもあったであろう。ルーカスが覆い隠したので見えなかったが、力に巻き上げられ、タカシと副団長はのまれたらしい。
副団長の鎧が見つかったが、タカシは見つからなかった。
ジュンヤは1度王都へ渡り、戦いの基礎を学び成長してこの地へ帰って来た。
何せこの地は格段に経験値が良い。しかもジュンヤの持つ勇者の剣は、この地の歪み達と相性が良すぎるほど良くて、豆腐でも切っているかのようなのだ。
おかげでジュンヤは今400レベルを超える。
ゲームではこんなにヌルくレベル上げできなかったのになぁ!ジュンヤは心の中でにんまりした。
ゲームの「ゼノアギアス戦記」では200レベルくらいまでなら、サクサクと上がる。もちろんラスボスも180レベルくらいあれば余裕で倒せるのだ。
しかし、戦えば戦うほど強くなって行くゲームで、ネットの情報では800レベルまで上げた猛者がいると見た事があった。確かプレイヤー名はアリス……だったかな?
流石のジュンヤもそこまで上げる気はないが500レベルは超える予定だ。なぜなら500レベルを超えると「ゼノアギアス戦記2」でレジェンドクラスの攻略が可能になるからである。
女神は2の世界に繋がると言っていたのをジュンヤは忘れていなかった。
実の所、ジュンヤはタカシはもう駄目だと思っている。なぜなら、勇者の証である金陽の剣を手放してしまったからだ。
勇者が剣に選ばれたのではく、剣に選ばれた者が勇者になるシステムだから。
剣を手放した時点で、タカシは勇者の資格を失っているのではないかと予想している。
だが、タカシにまだ手の甲にあるはずの剣の痣があるかどうかは、わからない。
もし、この歪みの壺の中でまだ生きているなら、同じ転生者として助けてやりたいとも思う。
ついでに、タカシが金の勇者なら恋愛攻略には全く手を出さないだろうから、ライバルなしのハーレムし放題だ。
ゼノギアはダブル勇者なので、金の勇者についたキャラの対キャラは銀の勇者へと分かれる仕様になっている。
始めに出会ったルーカス騎士団長と副団長は対キャラになっていて、団長と親密になれば、絶対に副団長とは仲良くなれない。
しかし、話すらしなかったタカシなら……副団長もジュンヤに落ちたかもしれない。
ゲームでは絶対に出来なかったが、この世界では……?ジュンヤはワクワクした。
「今日は街へ帰りましょう、ジュンヤ」
「そうですね。皆さん、引き揚げましょう」
ジュンヤは引き揚げの合図を送る。付き従う騎士団が動き出す。レベルの上がったジュンヤは今ここに居る誰より強い。
2カ月前、ルーカスに守って貰っていた時とは違う。ルーカスは今、ジュンヤの側には居ない。王都の家で静かにジュンヤが帰るのを待っている。
「貴方を守る事が出来ない。せめてここで祈っています」
伏せた瞳は悲しく辛い。剣で騎士団長に登り詰めたルーカスだった。しかし、あの魔力の暴走からジュンヤを庇って左脚を失ってしまった。
片足では騎士団長を務めることは出来ない。戦いに赴くジュンヤを助けることも出来ない。
「ジュンヤ…ジュンヤ…。無事で戻ってきて下さい」
別れの際にぎゅっと抱きしめた、その時の瞳の奥に宿った昏い狂気を垣間見たとき、ジュンヤは震えた。
恐怖ではない、狂喜だ。
「ふ、ふふふ…!ルーカス、ヤンデレじゃん…最高ぉ…!」
やっぱりこの世界は大好きだ。ジュンヤは今日も胸を躍らせる。
この地では歪んだ生き物が生まれるようになってしまった。
人間に片足だけひづめがある。魔族に角がない。歪な動物、魔物達。
暴走から2か月経ったが、まだ嵐は収まっていない。
「ふぅ……」
ジュンヤは銀月の剣を右手の甲に収めた。
「お疲れさまです、ジュンヤ。今日も金の勇者殿は見つかりませんね……」
「そうですね、ハーヴィ団長……生きていて欲しいですが、もう2ヶ月……」
2人の顔に希望は薄いが、まだ諦めてはいない。
あの時、ミーティアだろう声を聞いて、いち早く駆け出したルーカスのおかげで、ジュンヤは無事に海へ逃れた。
しかし、タカシは災禍の暴走に巻き込まれてしまった。
「うわぁあああ!」
たくさんの悲鳴の中に、タカシのものもあったであろう。ルーカスが覆い隠したので見えなかったが、力に巻き上げられ、タカシと副団長はのまれたらしい。
副団長の鎧が見つかったが、タカシは見つからなかった。
ジュンヤは1度王都へ渡り、戦いの基礎を学び成長してこの地へ帰って来た。
何せこの地は格段に経験値が良い。しかもジュンヤの持つ勇者の剣は、この地の歪み達と相性が良すぎるほど良くて、豆腐でも切っているかのようなのだ。
おかげでジュンヤは今400レベルを超える。
ゲームではこんなにヌルくレベル上げできなかったのになぁ!ジュンヤは心の中でにんまりした。
ゲームの「ゼノアギアス戦記」では200レベルくらいまでなら、サクサクと上がる。もちろんラスボスも180レベルくらいあれば余裕で倒せるのだ。
しかし、戦えば戦うほど強くなって行くゲームで、ネットの情報では800レベルまで上げた猛者がいると見た事があった。確かプレイヤー名はアリス……だったかな?
流石のジュンヤもそこまで上げる気はないが500レベルは超える予定だ。なぜなら500レベルを超えると「ゼノアギアス戦記2」でレジェンドクラスの攻略が可能になるからである。
女神は2の世界に繋がると言っていたのをジュンヤは忘れていなかった。
実の所、ジュンヤはタカシはもう駄目だと思っている。なぜなら、勇者の証である金陽の剣を手放してしまったからだ。
勇者が剣に選ばれたのではく、剣に選ばれた者が勇者になるシステムだから。
剣を手放した時点で、タカシは勇者の資格を失っているのではないかと予想している。
だが、タカシにまだ手の甲にあるはずの剣の痣があるかどうかは、わからない。
もし、この歪みの壺の中でまだ生きているなら、同じ転生者として助けてやりたいとも思う。
ついでに、タカシが金の勇者なら恋愛攻略には全く手を出さないだろうから、ライバルなしのハーレムし放題だ。
ゼノギアはダブル勇者なので、金の勇者についたキャラの対キャラは銀の勇者へと分かれる仕様になっている。
始めに出会ったルーカス騎士団長と副団長は対キャラになっていて、団長と親密になれば、絶対に副団長とは仲良くなれない。
しかし、話すらしなかったタカシなら……副団長もジュンヤに落ちたかもしれない。
ゲームでは絶対に出来なかったが、この世界では……?ジュンヤはワクワクした。
「今日は街へ帰りましょう、ジュンヤ」
「そうですね。皆さん、引き揚げましょう」
ジュンヤは引き揚げの合図を送る。付き従う騎士団が動き出す。レベルの上がったジュンヤは今ここに居る誰より強い。
2カ月前、ルーカスに守って貰っていた時とは違う。ルーカスは今、ジュンヤの側には居ない。王都の家で静かにジュンヤが帰るのを待っている。
「貴方を守る事が出来ない。せめてここで祈っています」
伏せた瞳は悲しく辛い。剣で騎士団長に登り詰めたルーカスだった。しかし、あの魔力の暴走からジュンヤを庇って左脚を失ってしまった。
片足では騎士団長を務めることは出来ない。戦いに赴くジュンヤを助けることも出来ない。
「ジュンヤ…ジュンヤ…。無事で戻ってきて下さい」
別れの際にぎゅっと抱きしめた、その時の瞳の奥に宿った昏い狂気を垣間見たとき、ジュンヤは震えた。
恐怖ではない、狂喜だ。
「ふ、ふふふ…!ルーカス、ヤンデレじゃん…最高ぉ…!」
やっぱりこの世界は大好きだ。ジュンヤは今日も胸を躍らせる。
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