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その者魔王につき

60 きっととても

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 僕の学園生活は、おおむね順調に続いた。足りない知識を補うのに学園はちょうど良かった。
 寮からは出て、教会の隣の家に同居する事になったからだ。

「学園長の事はなんて呼んだら良いですか?」

「やはり名前ではないのか?」

「ライゼフォン…ライ…リーゼ?」

「分かった」

 ただ、どうしても様だけは取れなかったが。
 僕の毛並みは驚くほどツヤツヤになった。恐るべし、ビーストテイマーの力!

「リーゼ様、お城の方は良いんですか…?あの……お妃様とか」

 どうしても気になっていた事を聞いてみた。ほぼ毎日僕と一緒にいるのは困るのではないだろうか。

「城の事はしらんが、正妃は退いて領地に帰ったし、第2妃は残って魔王の妃を努めているはずだ。あれらは魔王の妃であるからな。魔王をやめた私はもう関わる事がないのだ」

「そ、そう言う感じなんですか……?好きとか…なかったんですか?」

「家柄と打算でやってきた妃だぞ?」

 そうなのか…意外で僕は驚いていた。偉い人の結婚はそんなものなんだろう。それは少し寂しい気がする。でもそう思うのも僕が平民なんだからなのかな?

「だから、私自らが望んだのはお前だけなんだ、ティアン」

 手を引かれ、すっかり定位置になった膝の上に座る。以前と違って今は向き合って座っていた。

「お前は暖かいな」
 
 ぎゅっと抱きしめられながら、僕は少し考える。一瞬だけ、丸い窓からお姉さんが無理やり顔を出して「良いのよ!」って言った気がした。
 大きな背中に手を回し、しっかりと抱き合った。

「君が学園を卒業したら、結婚しようティアン」

 びっくりして、飛び上がるかと思ったが、素直に

「はい」

 と、答えた。

 色々と不安なこともあるけれど、僕は大好きな人の側に居る。


 きっと、とても幸せだ。









終わり
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