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 タイミング、と言うものがある。別にルイフト様のことを避けている訳でもないのですが、何となく会えなかったり、見かけても声をかけられなかったり。
 そんな日々が数日続いた。

「おーほほ!とうとうルイフト様に捨てられたのね!所詮、男爵令嬢ですものね!当たり前だわ」

 クラスから出た廊下で待ち伏せしていたようなパルスェット様にそう言われた。

「いい気味よ」「当然だわ」

 パルスェット様の後ろに控えるご友人方も品悪く大きな口を開けて笑っている。そんな事をしてあの厳しい教育係の侯爵夫人に叱られないのかしら?
 会話の内容より、マナーの悪さが目についてしまいます。それでも今日もお城でお勉強の日ですから、ここで立ち止まっている訳にもいきません。

「用事がありますので、失礼いたします」

 パルスェット様の横を軽く会釈をしながら通り過ぎようとした時です。

「無視するんじゃないわよ!この芋女が!!」

 何を思ったのか彼女はわたしを思いっきり突き飛ばしました。

「きゃ……っ!」

 いくら、農作業で鍛えているとはいえ、不意にしかも横から押されると私だって踏ん張れません。
 どんっ!と勢いよく押された体は運悪く廊下のガラス窓に弾き飛ばされます。

 ガシャーーーン!

「うっ……い、痛……っ」

「ひっ!」

「血だわ!」

「パ、パルスェット嬢がアナスタシア嬢に!!」

 女子の高い悲鳴が響き、辺りは騒然とした。窓ガラスに突っ込んだ形になった私は、割れたガラスで右手を切ってしまう。
 ぼたぼたと血が流れ、流石の私も青ざめた。

「ひ、わ、わた、わたくしは、わ、悪く、ないですわ」

 その場にへなへなと座り込んでしまうパルスェット様。悪くない訳ないじゃないですか。あなたが押したんですよ。
 廊下には沢山の生徒達がいて、かなりの人数が見ていましたし。

「侯爵令嬢といえ……これはやり過ぎだ」

「怖いわ……振られた仕返しを男爵令嬢にするなんて」

「おい、そんな事より救護室だろ!」

 クラスの人達がハンカチを貸してくれました。

「アナスタシアさん、まず手当だわ」

「あ、そうですね。すみません誰か、2年のリンデール・カラド子爵令嬢に今日は行けませんのでとお伝え願いませんか?」

「伝えておくから、早く行くんだ。血が止まってないじゃないか」

「一緒に行きましょう?」

 ついて来てくれると言った方もいらっしゃったが、幸いに足には怪我はないので、その場の片付けをお願いして、一人で救護室に向かいました。
 あまり行きたい場所ではないのですが、手当はして貰いたいですね。

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