48 / 49
48
「パルスェット様が学園をおやめになる?」
アナスタシアが聞いた噂だった。
「ええ、どうやらサティナ公爵に嫁がれるとかで、公爵側のご意向で学園は通う必要はないと……」
「サティナ公爵ってもう50近いわよね……」
「ええ、でもそう言う事らしいですわ」
最後の挨拶と荷物を取りに来るのだと言う。アナスタシアは少し気の毒に感じたが、何かかけるべき言葉は無い。
「きっと、私の顔も見たくないはずだわ」
私も会いたくないし……と、絶対に会わないであろうスチュアートが設置した区域に足を伸ばした。
その時ちょうどルイフトもアナスタシアを探していた。アナスタシアに自分の本気が伝わっていないと気づいてはいた。
「はっきり言わないと駄目だ!」
自分を奮い立たせて、ルイフトはアナスタシアを探す。
「ん?」
自分とスチュアート、アナスタシアとリンデールしか入れない区画に誰かいた。
「あれは……救護室の……?」
トーマス・ギルムがキョロキョロとあたりを見回している。
「あいつ、クビになったんじゃ……?」
学園の救護室職員のくせに、生徒が怪我をしたのに追い払ったのだ。職務怠慢で学園から解雇されたはずなのに。
「……!あいつ、確かヘザー家の!」
ルイフトはトーマスに向かって走り出した。
「久しぶりね、アナスタシア・ローレット」
「パ、パルスェット・ヘザー様……何故、ここに」
アナスタシアの前にパルスェットが立っていた。
「あなたのせいよ、わたしが学園に通えなくなったのも、きむずかしい公爵に嫁がねばならないのも、ルイフト様からすてられるのも、お父様から叱られるのも」
「ひ……」
尋常でない様子に、アナスタシアは一歩、また一歩と後ずさる。
「あなたが、いるから」
パルスェットは持っていたカバンからナイフを取り出した。
「あなたが、いなくなれば、ぜんぶ、ぜんぶ元通りなのだわ」
「そ、そんな事あるはずが」
「いいえ!あなたさえいなければ、ルイフト様は私の手をとってくださるわ!!」
パルスェットの細腕が渾身の力で振り上げられた。
「死んでちょうだい!アナスタシア・ローレットっ!」
「いやーーー!助けて!ルイフト様!」
「アナスタシアっ!」
「ひぃ!」
ずぶり、とナイフが肉に差し込まれる感覚を両手に味わって、パルスェットは短く悲鳴を上げた。
「アナスタシア、怪我は」
「ど、どこも痛くありません……っ!ルイフト様!ルイフト様!!誰か!誰かーーー!」
パルスェットのナイフはルイフトの腹に刺さっていた。
「は、はは。咄嗟になると上手くいなせないもの、だな。格好悪い」
「喋らないで!ルイフト様!」
警備員がすぐさま駆けつける。
「ルイフト様が怪我を!早く、早くお医者様を!」
アナスタシアは素早くハンカチでルイフトの傷を押さえた。ナイフは刺さったままだが抜くのは危険と判断したのだ。
「え、わた、わたし?なにを……?え?」
「お嬢様!!」
呆然と両手を見つめるパルスェットと、パルスェットを逃がそうとするトーマス。しかし警備員は二人を素早く確保する。
「王族に刃を振るうとは!何という!」
「ルイフト様!」
学園は大騒ぎになった。
アナスタシアが聞いた噂だった。
「ええ、どうやらサティナ公爵に嫁がれるとかで、公爵側のご意向で学園は通う必要はないと……」
「サティナ公爵ってもう50近いわよね……」
「ええ、でもそう言う事らしいですわ」
最後の挨拶と荷物を取りに来るのだと言う。アナスタシアは少し気の毒に感じたが、何かかけるべき言葉は無い。
「きっと、私の顔も見たくないはずだわ」
私も会いたくないし……と、絶対に会わないであろうスチュアートが設置した区域に足を伸ばした。
その時ちょうどルイフトもアナスタシアを探していた。アナスタシアに自分の本気が伝わっていないと気づいてはいた。
「はっきり言わないと駄目だ!」
自分を奮い立たせて、ルイフトはアナスタシアを探す。
「ん?」
自分とスチュアート、アナスタシアとリンデールしか入れない区画に誰かいた。
「あれは……救護室の……?」
トーマス・ギルムがキョロキョロとあたりを見回している。
「あいつ、クビになったんじゃ……?」
学園の救護室職員のくせに、生徒が怪我をしたのに追い払ったのだ。職務怠慢で学園から解雇されたはずなのに。
「……!あいつ、確かヘザー家の!」
ルイフトはトーマスに向かって走り出した。
「久しぶりね、アナスタシア・ローレット」
「パ、パルスェット・ヘザー様……何故、ここに」
アナスタシアの前にパルスェットが立っていた。
「あなたのせいよ、わたしが学園に通えなくなったのも、きむずかしい公爵に嫁がねばならないのも、ルイフト様からすてられるのも、お父様から叱られるのも」
「ひ……」
尋常でない様子に、アナスタシアは一歩、また一歩と後ずさる。
「あなたが、いるから」
パルスェットは持っていたカバンからナイフを取り出した。
「あなたが、いなくなれば、ぜんぶ、ぜんぶ元通りなのだわ」
「そ、そんな事あるはずが」
「いいえ!あなたさえいなければ、ルイフト様は私の手をとってくださるわ!!」
パルスェットの細腕が渾身の力で振り上げられた。
「死んでちょうだい!アナスタシア・ローレットっ!」
「いやーーー!助けて!ルイフト様!」
「アナスタシアっ!」
「ひぃ!」
ずぶり、とナイフが肉に差し込まれる感覚を両手に味わって、パルスェットは短く悲鳴を上げた。
「アナスタシア、怪我は」
「ど、どこも痛くありません……っ!ルイフト様!ルイフト様!!誰か!誰かーーー!」
パルスェットのナイフはルイフトの腹に刺さっていた。
「は、はは。咄嗟になると上手くいなせないもの、だな。格好悪い」
「喋らないで!ルイフト様!」
警備員がすぐさま駆けつける。
「ルイフト様が怪我を!早く、早くお医者様を!」
アナスタシアは素早くハンカチでルイフトの傷を押さえた。ナイフは刺さったままだが抜くのは危険と判断したのだ。
「え、わた、わたし?なにを……?え?」
「お嬢様!!」
呆然と両手を見つめるパルスェットと、パルスェットを逃がそうとするトーマス。しかし警備員は二人を素早く確保する。
「王族に刃を振るうとは!何という!」
「ルイフト様!」
学園は大騒ぎになった。
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました
おりあ
恋愛
アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。
だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。
失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。
赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。
そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。
一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。
静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。
これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気
ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。
夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。
猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。
それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。
「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」
勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。