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99 新しい出発に
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「好きです、リーヤ。もし、あの時リーヤを攫って行ったらリーヤは私を好きになってくれていたでしょうか」
「分からんなぁ……でも嫌いじゃなかったよ。帝国でフランに会えるって思った時は嬉しかったもん。……フラれたけど」
「これっぽっちも振ったつもりは無かったんですけどねぇ」
「俺もさ、貴族のやり取りとか体面みたいの、全然分かんなかったからな」
あの貧民街での平民のやり取りがまたあるんだって思ってたからな。
「そうですね。私も少し考えればわかる事でした」
フランが手を握っている。今度は俺が握られる番。あーこれが「見送られる」って感じか。
「で、ですね。次こそは結婚して欲しいんですよ。次こそは私の子供を産んでくださいよ」
「お前もしつこいね」
「はい!」
死の空気を吹き飛ばすようなフランの笑顔。
「レントが死ぬ前からリーヤに張り付いて、何十年経ったと思ってるんですか!」
ホントだよ、お前凄いよ。
「でもよー。レントと結婚するって言っちゃったよ。俺、嘘つきはやだなー」
確かあの時、俺は約束しちゃったよフラン。
「ですからねーリーヤをふたつに割って貰おうかなって!」
「こえーな、おい」
「右側のミギーヤを私が貰って左側のヒダリーヤをレントに上げます」
意味わかんねーし!
「俺、半分しかねーじゃん。どうすんの?残り半分」
なんか猫っぽいものでも足しときゃ良いんじゃないですかね?その辺はあんまり考えてなかったのか、フランは適当だ。
「今度は無理矢理しません。ちゃんと同意を得てからヤりますね」
「お、おう……良い心掛けだな」
「毎日、またたびを持ち歩きますから」
「こら、そもそも最初にヤること考えるなよ」
「何言ってんですか!さっさとヤらないと盗られるって私は学んだんです!」
「うーん……」
前例が良くないなぁ。
「じゃあ今度はちゃんとするから、フランもちゃんとしてくれ」
「分かりました!」
何がちゃんとなのかよく分からないけれど、まあちゃんとお付き合いする事にしよう。
「それでね、リーヤ。お願いがあるんですけど」
「ん……なんだ……?」
ああ、なんだか眠くなって来たなぁ。
「レントはあなたと結婚してたのに、私はあなたと結婚してないなんて悔しいんですよ!」
「ああ……そうだなぁ……」
何かと張り合ってたもんなあ……。
「私と結婚して下さい、リーヤ」
「あー……良いよ、フラン」
それが最後の言葉で悪かったな。その後の事はなんにも覚えていない。
「リーヤ、ありがとう」
そしてフランも静かに目を閉じた。
俺達の生きてきた時間は色々な脚色を加えて、後世に伝わるだろう。デズモンドがまだ生きていて、勇者と聖女が力を合わせて討ち取ったとか。
試練の洞窟から出て来る竜達はまだまだ出続けるだろうし、帝国はリュンが暴れ回っているし、クォンツはリリージャが暴れている。暴れん坊だらけだ。きっとあいつらがいなくなっても誰かが暴れるんだろうけど。
エルフローラ教とか言う宗教が台頭してきた。貧しい人からの支持が多くて、国で保護したりしている。女神エルフローラ様はいつも慈愛の瞳で皆を見つめているらしいけど、その神様の神託とかはとんでもない事を言い出しそうだから気をつけろよ。
何かと波乱の時代の中心を生きてしまった気がするけれど、悪い人生ではなかった。多分次の人生もあって、また賑やかな人達と暮らしていく事になりそうだ。次もまた廃品でも直そうかな?誰かが捨てた物でも、直せば色々使い道があるしなあ。
やっと来たわぁ!リーヤ!あのね、あのね!手伝って欲しいんだけどー!
あ、やっぱり母さんが手招きしてる。やっぱりあの世界に俺を送り込んだのは母さんだったんだな、しょうがない人だ。
で、ミギーヤとヒダリーヤってホント?
……嫌ですけど?
だよねー!普通に双子のリーヤで良いじゃない!変な子達よね!次も母さんが気合入れて産んであげるわ!任せて頂戴!
ああ、次も喧しい人生になりそうだな……退屈しなくていいか。俺の周りをワンコみたいにグルグル回っている魂が一つ。俺の頭の上に我が物顔で乗っかっているニャンコっぽい魂が一つ。またコイツらも一緒だし。母さんの足にべっとり張り付いている死神みたいな重苦しい魂も一つ。全部一緒だ。
じゃあな、また会おうぜ。母さん、しょうがないから次行けるぜ。
しょうがないって言いつつ結構楽しんでる癖に!さ、そこの穴に飛び込むわよー!
俺達は色々引き連れて、ぴょいっと穴に飛び込む。ワンコとニャンコが俺を引っ張るもんで、案の定俺は右と左に分かれちゃった。ミギーヤとヒダリーヤじゃねえか!魂は同質に、そして違う人間に。
皆、新しい人生に向かうんだ。
廃品を直して売る俺は娼婦の息子の奴隷商。聖女でも王子でもないからほっといてくれ!【終】
「分からんなぁ……でも嫌いじゃなかったよ。帝国でフランに会えるって思った時は嬉しかったもん。……フラれたけど」
「これっぽっちも振ったつもりは無かったんですけどねぇ」
「俺もさ、貴族のやり取りとか体面みたいの、全然分かんなかったからな」
あの貧民街での平民のやり取りがまたあるんだって思ってたからな。
「そうですね。私も少し考えればわかる事でした」
フランが手を握っている。今度は俺が握られる番。あーこれが「見送られる」って感じか。
「で、ですね。次こそは結婚して欲しいんですよ。次こそは私の子供を産んでくださいよ」
「お前もしつこいね」
「はい!」
死の空気を吹き飛ばすようなフランの笑顔。
「レントが死ぬ前からリーヤに張り付いて、何十年経ったと思ってるんですか!」
ホントだよ、お前凄いよ。
「でもよー。レントと結婚するって言っちゃったよ。俺、嘘つきはやだなー」
確かあの時、俺は約束しちゃったよフラン。
「ですからねーリーヤをふたつに割って貰おうかなって!」
「こえーな、おい」
「右側のミギーヤを私が貰って左側のヒダリーヤをレントに上げます」
意味わかんねーし!
「俺、半分しかねーじゃん。どうすんの?残り半分」
なんか猫っぽいものでも足しときゃ良いんじゃないですかね?その辺はあんまり考えてなかったのか、フランは適当だ。
「今度は無理矢理しません。ちゃんと同意を得てからヤりますね」
「お、おう……良い心掛けだな」
「毎日、またたびを持ち歩きますから」
「こら、そもそも最初にヤること考えるなよ」
「何言ってんですか!さっさとヤらないと盗られるって私は学んだんです!」
「うーん……」
前例が良くないなぁ。
「じゃあ今度はちゃんとするから、フランもちゃんとしてくれ」
「分かりました!」
何がちゃんとなのかよく分からないけれど、まあちゃんとお付き合いする事にしよう。
「それでね、リーヤ。お願いがあるんですけど」
「ん……なんだ……?」
ああ、なんだか眠くなって来たなぁ。
「レントはあなたと結婚してたのに、私はあなたと結婚してないなんて悔しいんですよ!」
「ああ……そうだなぁ……」
何かと張り合ってたもんなあ……。
「私と結婚して下さい、リーヤ」
「あー……良いよ、フラン」
それが最後の言葉で悪かったな。その後の事はなんにも覚えていない。
「リーヤ、ありがとう」
そしてフランも静かに目を閉じた。
俺達の生きてきた時間は色々な脚色を加えて、後世に伝わるだろう。デズモンドがまだ生きていて、勇者と聖女が力を合わせて討ち取ったとか。
試練の洞窟から出て来る竜達はまだまだ出続けるだろうし、帝国はリュンが暴れ回っているし、クォンツはリリージャが暴れている。暴れん坊だらけだ。きっとあいつらがいなくなっても誰かが暴れるんだろうけど。
エルフローラ教とか言う宗教が台頭してきた。貧しい人からの支持が多くて、国で保護したりしている。女神エルフローラ様はいつも慈愛の瞳で皆を見つめているらしいけど、その神様の神託とかはとんでもない事を言い出しそうだから気をつけろよ。
何かと波乱の時代の中心を生きてしまった気がするけれど、悪い人生ではなかった。多分次の人生もあって、また賑やかな人達と暮らしていく事になりそうだ。次もまた廃品でも直そうかな?誰かが捨てた物でも、直せば色々使い道があるしなあ。
やっと来たわぁ!リーヤ!あのね、あのね!手伝って欲しいんだけどー!
あ、やっぱり母さんが手招きしてる。やっぱりあの世界に俺を送り込んだのは母さんだったんだな、しょうがない人だ。
で、ミギーヤとヒダリーヤってホント?
……嫌ですけど?
だよねー!普通に双子のリーヤで良いじゃない!変な子達よね!次も母さんが気合入れて産んであげるわ!任せて頂戴!
ああ、次も喧しい人生になりそうだな……退屈しなくていいか。俺の周りをワンコみたいにグルグル回っている魂が一つ。俺の頭の上に我が物顔で乗っかっているニャンコっぽい魂が一つ。またコイツらも一緒だし。母さんの足にべっとり張り付いている死神みたいな重苦しい魂も一つ。全部一緒だ。
じゃあな、また会おうぜ。母さん、しょうがないから次行けるぜ。
しょうがないって言いつつ結構楽しんでる癖に!さ、そこの穴に飛び込むわよー!
俺達は色々引き連れて、ぴょいっと穴に飛び込む。ワンコとニャンコが俺を引っ張るもんで、案の定俺は右と左に分かれちゃった。ミギーヤとヒダリーヤじゃねえか!魂は同質に、そして違う人間に。
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