【本編完結】神に捨てられた糸くずの俺は愛される~不幸な物語なんて変えてやるから安心して

鏑木 うりこ

文字の大きさ
30 / 69

30 シェリリア男爵令嬢

しおりを挟む
「こんにちわぁ~!シャトルリア様ァ……2年?3年ぶりかしらあ?」
「初めてお会いする、と思ったのだけれども?」
「あらやだ、つめたあぁい!学園で会ってたじゃないですかぁ?殿下がご卒業間際から、アタシィ殿下にお声がけもらってましたしぃ?」
「そうだったんだ、気が付かなかったよ」

 俺はきったない城の最下層の牢でシェリリア男爵令嬢と対面していた。

「は……やっぱアタシ、アンタのこと大っ嫌い!」

 憎々し気な目で睨まれても、俺も困ってしまう。はっきり言って俺はこいつのことを良く知らん。殿下にヤヴァイオクスリを渡していたことしかしらん。後、あんまり頭も良くないしマナーも悪いってことが2.3語言葉を交わして分かったって感じ。

「私に会わせろと申し伝えたそうだけど、何か用なんですか?」

 牢番達が伝えてきたんだ。シャトルリアに会わせろってシェリリア男爵令嬢が騒いでるって。

「なんかさぁ、アンタ。調子に乗ってるんだって?聖女とか呼ばれてるらしいじゃない?男のくせに!殿下に捨てられた癖にぃ!」
「そうらしいね」

 聖女のくだりはここに来てから宰相さんがぽろっともらしてびっくりしたよ。俺、男だっつーの。聖女ってなによ、笑うー!大笑いしたい所だったけれど、俺の頑張って創り上げた鉄壁の「淑女(淑女?)の仮面」はそんな事では傷一つつかないぜ。まあ殿下に捨てられたのは事実だ。別に否定する事でもないしみんな知ってるからいまさら言われてもなあ、って感じ。

「もっとさあ!泣き喚きなさいよ!平気な顔してホントやなやつ!!殿下に縋って泣きついて、そしてみじめに這いつくばればいいのに、やな奴、やな奴!!」
「貴様ーー!いい加減にッ!」
「シャトルリア様はホルランド様に捨てられてなんかーー」
「皆、静かに」

 俺より心配してついてきてくれた侍女ちゃんやら騎士さんやら牢番さんやらがきれた。いまさらだろう?婚約破棄から1年?2年?経ってるんだよ。それに国民だって知ってるのに、変な子だ。

「私を罵倒したくて呼んだのか?私も忙しくてね。君の話を聞くだけでこの城の最下層の牢獄まで呼ばれるのはちょっと困るんだ。用がないなら行くよ、きっと二度と会わないと思うけど」

 俺が傍にいないとホランがピィピィ泣くからな。早く戻ってやらないと。

「ハン!その余裕ぶった顔できんのも、今のうちよ!いいのぉ?アタシに、土下座した方が良いわよォ!知りたいんでしょう!あの薬の成分をさあ!」
「……」

 そういえばそうだっけ。何が含まれてたか分からないから解毒薬を作ることが出来ずにいるって言ってたっけ。頭の瘤の方は落ち着いて来たし、確かに成分は知りたいな。

「教えてくれるのかい?」
「アンタが!みっともなくそこで土下座して、この汚い床に顔を擦り付けてぇ「シェリリア様すいません!お許しください!!」って言えば教えてやるよぉ!」

 変な女だ。その成分の謎が知りたくて生かしておいて貰っているのに、喋ったら殺されちゃうだろうに。本当に喋るのかなあ?

「そんなことをしても君が言わない可能性の方が高いだろう?」
「アタシはぁ、嘘はつかないのよおお!だっていい女ですものォ!」

 はあ、めんどくさ。こういうのには付き合ってらんないよ。今、俺の着ている服は白い。何か知らないけれどこの国では俺に白い服を着せたがる。聖女っぽいイメージをつけたいんだろうか?白の手触りの良い高級な布地に金糸で縫い取りがしてある着心地のいい服。こんなのでこの汚物と泥に汚れた床に膝なんて付いたらあり得ないくらいドロドロに汚れちゃうだろ?どうすんだよ。

「シェリリア様すみません、どうぞお許しください」

 俺は汚い床に額を擦り付け土下座をした。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

処理中です...