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3 永遠に目覚めないでいただきましょう、ホトトギス

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「あの、シェリーはどうなりました……?」

「シシリー様がお倒れになったことで、こちらの方に皆が集中してしまいましたが……両家で話し合いが行われるそうです。フォニオ様の家に相談もなく、フォニオ様の独断だったらしく……」

「そう」

 ならシェリーにもワンチャンあるわね……ないにしても破棄は頂けないわ。せめて解消に持っていければ……。シェリーだって年頃の娘なんだから傷は小さいに越したことはないもの。なんとか、なんとかシェリーを援護できれば。私の未来の安泰にもつながるはずなのよ。

「聖女……ルーナ」

 本当に聖女なのかしら?

「聖女の力はまだまだですが……あのように男性達と親しくなるなんて……少しどうかと思いますよね」

 今、私と話をしているのは女官のマリリー。マリリーは伯爵家の3女だから貴族の常識は普通に持っている。そうよね、貴族としては受け入れられない態度だわよね。召喚聖女という事で大目に見て貰っているが……。

「聖女としての、力がまだまだ……なの?」

「え、ええ。回復力も人並みだし、結界の維持もまだ無理だとか」

「……ありがとう!マリリー」

「えっ!皇女様が感謝を……!?」

 ……やだわ、私ったら高飛車キャラだったわね。って今は良いの。なるほど、聖女ルーナはどうも面倒くさい事を後回しにするタイプね。夏休みの宿題は最終日に詰め込むタイプと見た。まだ魔の森をクリアしてないんだわ。

「マリリー。ちょっと宝物殿に行きます」

 マリリーは許可がないといけません、なんて言ってるけど、大丈夫よ。私だもん。マリリーを伴って広い王宮内を歩いて宝物殿へ着いた。

 ルーナがまだ真の聖女として目覚めていないなら……永遠に目覚めないでいただきましょう、ホトトギス!!私はキラッキラの宝物の中から「古ぼけたサークレット」と「曇った水晶玉」「頼りない杖」「錆びた腕輪」を探し出す。

「……これ、本当に宝物殿の宝物なんですか?」

 マリリーが不思議そうに見るけれど、これで正解なんだ。ゲームの時何度も何度も探し出した品物だもの、間違えないわ。

「ええ、必要なの。マリリー、これから4人の令嬢の呼び出しと騎士を何名か見繕ってくれない?魔の森へ行くわ」

「ええええ!無茶ですおやめください、皇女様!!」

 マリリーが何と言おうが私は行かなければならないのよ、ルーナに「真の聖女」の力を渡すわけにはいかないんだから!

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