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50 ワシ、ボーナスを出す

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「貴方達、ハンカチは?」

「「紫です!」」

 リドリーが扉の鍵を壊した部屋から出てきた子供達はアンナとルークに間違い無かった。

「アンナとルークね。今日から貴方達はバンドール家で働いて貰います。よろしいですね?」

「ここから出られるならどこへでも!」

「ぼ、僕も!げほっ、げほっ!」

 男の子のルークの方は健康状態はあまりよくないな。しかしバンドール家にはワシもお世話になった医者が出入りしておる。しっかり診てくれるだろう。

「ど、どう言う、は、ハンカチは?!」

 神父がワナワナと震えながらハンカチを握りしめている。

「ハンカチは?と聞かれたら紫だと答えるアンナとルークを連れて帰って来るように申しつかっております」

「な!あいつらからハンカチを取り上げたのに……っ!」

 ま、フェイクじゃな。分かりやすい目印を持たせておけば、それを取り上げた時点で満足するじゃろう。
 あの時アンナとルークに耳打ちしたのは

 ハンカチは、と聞かれたら紫と答えよ

 そう言っておいたのだ。あの虐待されているであろう子供達がすり替えられるのは想定内。だから、小さな罠を仕掛けた。

 見事に引っかかったわ。

「ちっ……」

 舌打ちをする神父にリドリーが吐き捨てる。

「あんた、悪い大人だね。この子達をみたら分かるよ」

「黙れ!私は王家からも認められているのだぞ!」

 まあ、昨日視察が滞りなく行われたしな。しかしだ。

「残念だよ、神父。私も自分の目が節穴であった事が恥ずかしい」

 セブスト殿下が物陰から出るが、まあ良いタイミングだろうな。

「で、殿下?!何故ここに?!?」

 さーーっと顔色を変えて慌てふためく神父を他所に、殿下はアンナとルークに近づいて行く。

「ごめんな?昨日私が気付くべきだったのに。怖かっただろう?お前たちだけじゃなく、この教会の皆も何とかするからお前達は何の心配もなくバンドール家でご厄介になると良い」

 子供達の頭を撫でながら、少しでも安心させようと笑ってみせる。

「お、王子様?!」

「ああ、でもあまり賢くない王子だけどね……婚約者様に助けられてばっかりだよ」

「婚約者様?あのきれいな男の人?ハンカチくれた人?」

「そう、あそこにいるだろう?」

 む、ワシのことはどうでも良いんじゃ。こっちに向かって手を振られたらしょうがなく振り返すしかないわなぁ……。
 引き攣った笑いで軽く手を振る。もう良いじゃろ?帰ろ、帰ろ。

「ダグラス様ー!よろしくお願いしますねー!」

 最後にリドリーがボーナスの申請をしてきおった。あやつめ、抜け目がないのう……だがきちんと働いた者にきちんと給金を出せるジジイは良いジジイじゃからの。

 マリエルにも勿論ボーナスじゃ!有能で良い者達じゃよ。
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