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11 根は良くとも

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「マリー嬢」

「あら、ハリウスさん」

 ディアンナさんと仲直りしてすぐ、私は授業の終わりにハリウスさんに呼ばれた。何かと思ってお話を聞くと合わせたい人がいる、と。さて?何でしょう?

「私は君達より学年が一つ上のマーク・ドナンと言います」

「ドナン……聞いたことがあります……ドナン商会?」

「そうです、父が商いを手広くやらせてもらっています」

 さて、そんな大きな商会のご子息が私に何の御用なんでしょうか?

「実は……宝石糸のカイコの話なんですが、生物学の教授は全く話を聞いてくれなくて。是非ウチの商会で取り扱いたいのですよ!」

「それなら、先生に聞いてください。私には関係のない話ですわ」

 商品にしたいなら、私は何の関りもないもの。困ったわ、と思っているとハリウスさんが「実は……」と口を挟んできました。

「マークは私の友達なんだが、あまりにしつこく教授に会いに行ってね。もう顔を見せるなと出入り禁止にされたんだよ」

「だってハリウス!宝石糸だよ!?一体どれくらいの売り上げが見込めると思っているんだい!?この貴重な情報が他の商会にバレる前に是非我が商会で独占販売するべきだろう!!ああ!堪らない、堪らないよ!」

 流石の私もこのマークさんではなくてハリウスさんの方を見てしまいます。視線だけでごめんね、と謝罪されてしまいました。ちなみにマークさんは一人で自論を語り続けていて、これはこれで駄目な人だなとすぐに理解出来たのでした。
 ハリウスさん、私も嫌です。

「その点、君は教授のお気に入りだ!君から私の話をお伝えしてくれ。すぐに教授は頷いて下さる!」

「ありえません、ハリウスさん失礼しても宜しいですよね?」

 にべもなく断る私を流石のハリウスさんも苦笑したけれど、納得してくれた。

「ああ、すまないね。付き合ってくれてありがとう。この埋め合わせは後から何かさせて欲しい」

「分かりました、楽しみにしております」

 一度会えばハリウスさんの面子も立つという物でしょうし。マークさんは「何で?!」なんて驚いていますけど、当然だわ。まだまだ解明も研究も進んでいないのに、いきなり独占して売ってくれ!なんて失礼にも程があるもの。

「何でだ?!マリー嬢!」

 うそ、本当に分かってないの??こんなに面倒ならハリウスさんにはお礼を弾んで貰わないと割に合わないわ!!

「まずはシロカイコについて学んでみては?先生は学ぶ者には優しいですよ」

「それだ!!感謝する!マリー嬢!」

 ……あら?納得してくれたみたい。マークさんはいても経ってもいられなかったみたいでハリウスさんを置いて行ってしまいました。

「……何だか納得したね?凄く助かったよ、マリー嬢」

「根は良い方に感じましたが、忙しい方ですね」

 ハリウスさんはまた苦笑している。きっと何度も何度もマークさんに付き合っているんだろう。

「そうなんだよ、根は良い奴なんだけどね」

 私も思わず笑ってしまった。良い方向に向かっていくと良いですけど。

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