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33 波及する戦い

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 そんな平凡で爵位も低いと言う皮を被った上に努力を惜しまないマリーはとんでもないモノにレベルアップしつつあるのだ。

「ねえ、イザベラ。上級ポーションまで透明に近づいて行くのだけれど何故かしら?」

「マリー、私にわかると思って?」

 二人が話しながら寮から学園へ向かう途中は色々な人に話しかけられる。主にマリーが作り過ぎたポーションをあちこちに配っているせいなのだけれども、今の一年生の下位クラスは何かと評判がいい生徒が多い。

「やあ、マリー。この前のポーションありがとうね。あんなに美味いの初めてだよ」

「あら良かったわ。妹さんも飲めましたか?」

「おかわりをくれってさ」

 小さな妹が薬を絶対拒否して困っていると相談を受けた男子生徒に渡した。どうやら良い結果が得られたようだ。

「マリー、あの飴良いわね。喉が爽やかだわ」

「持ち運びを考えての小型化の実験でした」

 和やかに会話をしながら登校すると、上位クラスはほとんどの生徒が欠席だった。何事かと思ったが、マリーは自分の席に着席する。いるのはコリアンナ・セルウィッチ公爵令嬢と他マリーを虐めるのに消極的だった伯爵家の令息が数人それだけ。王太子の告発で生徒たちはそれぞれの親から謹慎を言い渡されたのだ。

「よくもまあ、そんな涼しい顔をしていられますわね。貴女のせいでクラスが滅茶苦茶だというのに」

 とうとうコリアンナと直接対決に持ち込まれる。しかし、マリーは臆することはない。何も割る事をしていないと分かっているからだ。

「コリアンナ様。私のせいと仰りますが、私は何かしましたか?」

「……っ」

 コリアンナはこれには反論のしようがない。いつもならこんな時でも彼女の取り巻き令嬢が理不尽な理由で文句をつけていた。しかし、コリアンナが理不尽な理由でマリーを貶めれば「コリアンナ」が「その程度」だと認めなければいけない事になる。
 自己評価が高いコリアンナは自分を貶める事を極端に嫌う。

 実際にマリーはこのクラスの人間に何もしていない。マリーはただ静かに受け入れただけで、仕返しも何もしていない。実際に何かしたのは王太子で不服なら彼に訴えるのが筋だろう。

「あなたは……っこのような事をして、お父様が黙っていませんよ!」

 とうとうコリアンナはその禁句を口に出してしまった。

「あら?親を呼びますか?では私も同じく両親を呼びましょう。お母様がたまには王都へ来たいと言っていましたし、ではそういう事で……ただ、私のお母様は中々苛烈な方ですからお覚悟は宜しいですか?」

「え……」

 思った反応との違いにコリアンナは絶句する。公爵家に睨まれればどの家でも首を垂れるというのに、たかが田舎の子爵家がこの反応とは。何が何だかわからないコリアンナを他所にマリーは天井に向かって話しかけている。

「そういう訳なので、影さん。お母様をお呼び致しますと伝えて下さいませ」

「かかかかかかしこまりましたマリー嬢ッ!」

「え……?」

 コリアンナは天井に人が居たとは知らなかった。しかもそれが返事をし、慌ててどこかへ連絡へ消えた事が、どういう意味を成しているかそれも分からなかった。


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