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45 俺、夜会に出ちゃう
しおりを挟む「あなたがフロウライト様の婚約者?!こんな背だけ高くて冴えない男が?信じられない」
「まったくだわ! しかも平民のくせに!」
「あり得ないわ!」
俺は六人の令嬢に囲まれてモテモテである。そう、フロウライトに頼まれて夜会に参加中なのである、しかも王城の。もちろん針の筵なんだけれど、そんなものは大したことない。所詮貴族の囁きだ。命を失うことは危険などないのに何を恐れれば良いのか分からない。
「聞いてるの?!」
聞いてはいるけれど、さっきからフロウライトと別れろとしか言われてないから飽きただけだ。正直マークとして来てなきゃ即家に帰っている所だ。平民が頑張って用意しました感のあるちょっときれいめな服をなるべく体形が目立たないように着て、ひょこひょことついて来た。
もちろん吊し上げられるのは承知の上だけれど、周りの周知と……もしかして誰か賛成してくれるかも?という淡い期待をフロウライトが持ったからだ。
そんな酔狂な人物いないとは思うけれど、試してみたいなら試したら良いと思ったんだ。案の定いなかった。
「あの……そういうことは、私一人では決められません……」
「あははっ! アイアンメイデン家のご当主様はわたくし達に賛成してくださっているわ!もう決まっているのも同然よ」
ああ、そういえばそうだったな。そういう後ろ盾があるから強いんだっけ。まあどうでも良い。派手な化粧と派手なドレスで高笑いする年若い令嬢……よく見るとあんまり可愛くないかも。あっちの子はお鼻が大きい。こっちの子はお口が大きい。こっちの子は……あらあらニキビがいっぱいだ。化粧品が合ってない……?いや、誰かに恨まれて薄い毒を混ぜられてるなぁ、怖い怖い!
「はあ……」
初級治癒術師のマークと別れろとアイアンメイデン家当主、まあフロウライトの父親に言われた時、あいつは即断った。
「嫌です、絶対に」
「お前をアイアンメイデン家から追放するぞ!」
「お好きに」
フロウライトがそう宣言し、当主の執務室から出て行って会話は終了したが、歩み寄りはなかった。
フロウライトは実力で聖騎士団団長になった男だし、完全に聖騎士の中で一番強い。そんなフロウライトを追放なんて出来るのかな?まあ知らんけど、興味ない。
俺はそれを天井裏からチョコレートを食べながら聞いていた。寛いでてごめん。アイアンメイデン家の天井裏は広くて歩きやす過ぎるぞっと。
「話を聞きなさいっ!」
一番手前の令嬢が扇を振りかぶって殴りつけて来た。あ、そうだそうだ、令嬢に囲まれてたんだ。えーと、マークなら殴られなきゃな、ハイハイどーぞ
〈ひいーーっ!なんてことを!〉
差し迫った声はあちらこちらの木陰や暗闇から聞こえてくる。お前ら何してんだ、盗賊からやり直しさせるぞ。
息を呑んだのは王家に仕える王家の影と呼ばれている闇のエキスパート達だ。王族を影から守護したり、情報を収集したり、ある時は暗殺を請け負うこともある……全部凛莉師匠の弟子だけど。
〈師匠が、殴られる!〉
〈だめだ!今は表の姿で来ていらっしゃる!〉
〈そうだ、殴られるしかない!〉
〈あのきれいな顔を殴るなんて!オイニス・テラコッサめ、あとでテラコッサ家にゲシゲシ虫を500匹投げ込んでやる!〉
わぁ、テラコッサ家の人可哀想。ぺひん、とおかしな音がして叩かれた……らしい。避けないように我慢するのが大変だったし、殴られたふりをして、更に赤い化粧を一瞬で塗るのも面倒くさいがやるしかない。
「あっ!」
「話を聞きなさいっ平民の癖にっ」
本当に面倒くさいなぁ。あと王家の影に就職した奴ら、修行し直せ。いっぱい課題を送り付けてやる!
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