【完結】闇暗殺者と入れ替わった社畜の俺を聖騎士様が離さない

鏑木 うりこ

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79 ちょっと嬉しかったりするわけなんだが

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「聖騎士達と街の人達に言われて急いで来てみれば、リ、マーク! 誰だ、この男はっ」

 俺の名前はリマークって名前じゃないけど、青筋立ててブルブル怒りに震えているフロウライトがちょっと面白かったりした訳で、その顔をじっと見ていた。

「えーと、あれ?聖騎士団長? あ、今は元聖騎士団長かい? 一体何をそんなに怒って……あれ……怒られているのはもしかして私……?!」

 後ろを振り返って一度身震いし、俺に確認してくるけど、愛想笑いを返すしかない。王太子殿下は慌てて振り返ると、それはそれは必死に弁解を始めた。

「だ!団長! 私だ、私っ!!けしてデートなのではないっ」
「貴様など知らぬっ!」

 フロウライトが中々上手な王太子殿下の変装に気がつく訳がない。

「お、王太子のウィントンだ! 君が不在だから隣国が騒がしい。その相談をマークにしていたところだ!」
「嘘だ!」
「嘘じゃない! この石頭っ」
「確かに私は石頭だが、見ず知らずの人間に言われる筋合いはないっ」
「見ず知らずじゃないだろう?!王宮で何度も顔を合わせているじゃないか!」
「貴様など知らん!」

 フロウライトに恫喝されて王太子は涙目で助けを求めて来た。

「マーク! 助けてくれ」
「えーと……」

 面白いからもう少し見ていたい気もするんだが……?

「頼む! 依頼料なら払う」
「え?」

 俺、高いのに。むしり取っちゃおうかなー? いくらふっかけるか考えつつ、フロウライトに笑顔を向けた。

「フロウ、フロウライトさん。私は浮気なんてしませんよ?」
「あ、そうだな」

 ぷしゅーっと怒気が音を立てて抜けていって王太子殿下の命は助かったようだ。もっと追い詰めれば良かったかな、つまらん。

「話がしたいといっても、ここにしたウィルさんも悪いです……このお店は私とフロウさんが初めてデートしたお店ですから」
「なんと」
「う、うむ……そ、そうだったな」

 無言でずっとお茶を飲み続ける拷問のようなアレね。今思えばあれも中々いい思い出になっているんじゃないだろうか……インパクトは強かったよな、うん。お人好しの笑顔を浮かべながら俺は立ち上がる。このままだと王太子殿下も可哀想だし、フロウライトの眉毛と眉毛の間に皺が出来っぱなしなのも男前が台無しで勿体ない。

「ではウィルさん、私は行きますね。本当にお手伝いしたほうが良いことがあるなら、フロウライトさんにお伝えください。前向きに対処させていただきます」
「本当か! 助かる!!」

 ちょっと食い気味に返事をする王太子殿下に俺じゃなくて、フロウライトが一睨み後、ため息をついて対応してくれた。あんなに必死にならなきゃいけないことが起っているんだろうか? そんな情報入って来なかったから違うだろうけど、意外と頭の回るウィントン王太子のことだ、なにか考えがあってのことかもしれない。

「行くぞ、マーク」
「はい、フロウライトさん」

 歩いてフロウライトの隣に立つとやっと機嫌が直ったらしい。皺が消えていつもの男前が戻ってきた、良かった……こっちの方が俺は好きだな。

「浮気を疑ったんですか?」
「いや、その! 団員と店の店主が一大事だと飛び込んできたもので……つい」
「心外だなあ」
「うっ!」

 眼鏡をちょっとずらして下から見上げる。俺の事疑ったのか? んん? どうなんだ、コラ。お尻でも思いっきりつねってやったら良かったんだろうか?

「す、すまない……! 今後絶対そんなことしない」
「分かってくれたらいいんですよ」

 眼鏡を元に戻して、お人好しの笑顔を浮かべる。でも、俺が誰かとデートモドキをしていると聞いて飛んでくるところがとても可愛いし、ちょっと嬉しくてお人好しの顔の奥に本心がにじみ出てしまう。多分今の俺の顔、にやけてるんじゃないかな……恥ずかしい!








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