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85 弾む会話はケーキと共に
しおりを挟む「見目良いだけはないのだな」
「ふふっアルバを馬鹿にされたらドラゴンにでも噛みつきそうな勢いね……ますます可愛らしいわ」
国王陛下達の呟きは、撫でられてついほわーんとしていた私の耳には届かなかった……。
「この城の来客用の部屋はいくつかあるが、宝石の名前がついているんだ。碧玉の間はこっちだ、行こう」
「はい」
勝手知ったる王宮をアロウ様と一緒に進んでいく。フィーラの王宮はやはり柱や扉が大きくて、王族の方が頭をぶつけないように造られていた。
そしてすれ違う人達は普通の大きさの人が多くて、アロウ様達のように大きい方はやっぱり少ないんだと分かった。
「フィーラ王家の血を継いでも全員身体が大きくなる訳じゃないんだよ。私は十人兄妹で、上から五番目の弟と末の九番目の弟、十番目の妹が小さい……いや、小さいんじゃないな、普通サイズというべきかな?」
「でも大きな人が多いんですね」
「そうなんだ。傍系になると身体が大きくなる子はもっと減って行く。不思議な事だ」
「そうですね」
何か理由があるのかもしれないがそれは誰にも分からないそうだ。私がアロウ様との間に子供を作ったら大きな子が産まれるかもしれないのか……頼もしいな……!
「アウリー? どうしたの? 顔が赤いよ、疲れた?」
「い、いえっ大丈夫ですっ」
昼間から何を考えてるんだろ、私は! 碧玉の間にはすぐについて、中に入ると本当に私と同じかそれより大きなケーキが何台も並んでいてびっくりした。
「どうだ! 凄いだろう! キリアスやモンティに負けられないからな!」
「す、凄いです……」
「そうだろう! そうだろう! さあ、たくさん食べなさい! そして色々話を聞かせておくれ。小粒達もアルバとアウラリスの仲の良さを教えて欲しいぞ」
「はいっ! いっぱい語れますっ」
「レンスン?! やめなさいっ」
「あらあら、私も聞きたいわぁ。レンスン、話してくれるわよね?」
「勿論です! 王妃殿下」
レンスンが私を裏切ったー?! なんて事!
それでも大きなケーキはすごく美味しい。残ったら使用人のおやつになるから問題ないらしい。それに国王陛下の質問は国王としてじゃなくてアロウ様のお兄様であるシュバリエラ兄上としてのお話ばかりだった。
「アルバとあのフォッフ家の娘との婚約は5歳くらいからだった。もう上に私とキリアスがいる以上、アルバはどこか有力な貴族の元に婿入りが最初から決まっていたようなものでね」
シュバリエラ様は怒りながらも事細かく教えてくれた。
「我らフィーラ王家の者も子供の頃は普通の大きさなのだ。10歳を過ぎる頃から成長速度がぐんと増してな。だから、アルバが婚約した時は小さかった……それ故にきちんと説明をし、誓約書も交わす。身体が大きいからと言っての婚約の中断は絶対に認めない、多額の賠償金を請求するという内容だ。それなのにあの丸っこい女は解消を申し出た! 許せんだろ!」
「はいっ! 許せませんっ」
つい国王陛下なのを忘れて思いっきり同意してしまう……シュバリエラ様はすごく接し易い方でついつい敬語が疎かになってしまう、反省だ……。
「しかもフォッフ家はあの頼りない公爵を見てわかる通り、軟弱であり金遣いもあと先考えぬ愚か者。アルバが取り仕切ってなんとか今代、次代も公爵としての体面を保つ事ができると思っておったのに、アレだ!」
「なるほど、アレですか」
つまりは小さな頃からアロウ様がフォッフ家の財政状況を管理していらしたんだろう。甘く見通しの悪いフォッフ公爵に代わって仕事をしていたに違いない。それなのにそんなアロウ様を追い出した……きっとしばらくの間はアロウ様の政策のお陰で家は回っていたけれど、時間が経つにつれ綻びが出て来て自分達で修復出来なくなったんだ。だから今更になってアロウ様を連れ戻そうとしたんだろうな。なんと愚かな……。
「そう、アレだ。しかもアルバを婚約者に戻せば賠償金も支払わなくていいと思っていたんだろうよ、舐められた物だ!」
「そして今どこかの信用ならない筋から新しい婚約者は大した事ないお顔立ちだと聞いたんでしょうね。ならばリオリシアの方が見目が良いと思いこんな行動に出た、自国の貴族ながら情けないわ」
王妃殿下もふう、とため息をついてこめかみを押さえている。
「でも、私をアウラリス様と間違えるなんてあり得ませんよ~! 髪の毛の色がまったく違うのに~。アウラリス様は綺麗な水色で、私は干し草色!」
「そうなんだよなぁ、干し草色なんだよなぁ。なんていうか艶がない」
「ヨキシャだって木鼠色じゃないか!」
「否定はしない!」
「ふふふ! 木鼠と干し草なんて、本当に自分を飾らない子達なのね」
「アウラリス様がキラキラしてるからこれくらいがちょうど良いって思ってます!」
「そうなんですよぉ~」
「まあ! そうだったのね」
ヨキシャとレンスンは王妃殿下に懐いている……相変わらず、どこに取り入れば一番効果的か本能で察せられる奴らだ……。
「それなのにこんな可愛い子が現れてあ奴らの顔は見ものであったわ! 沼カジカより間抜け顔!」
「おほほ、貴方。それは沼カジカに失礼だわ。私も人間の顔があそこまで伸びたり開いたり歪んでだらし無くなるなんて初めて見ましたわ」
お二人は大笑いしていて、私もフォッフ公爵達の顔を思い出して笑ってしまう。そうするように仕向けたんだけれど、まさかあそこまでびっくりされるとは思わなかった。
「そうだね、それでいてアウリーから目が離せない……あの自己評価が不当に高いリオリシアも敗北を認めていたな。格好良かったよ、アウリー」
「えへ……照れます……」
なんだか今更恥ずかしくなって来た……もっとお淑やかにアロウ様の上着の裾を握ってしおらしくしてた方が良かったかもしれない。
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