【完結】良い子な邪神に転生した俺は強すぎて封印不可?頑張って封印されます!

鏑木 うりこ

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 結局、俺がイビルドラゴンを倒す事になってしまった。

「強力な結界と封印を施した馬車で現地まで参ります」

「……分かった」

 そして封印布にぐるぐる巻きにされて顔しか出てない俺はセラフィスさんに抱っこされて、馬車に乗り込んだ。

「ミノムシみたい……うふふ」

「本当ですね。ふふ!」

「ルーチェ様ミノムシは可愛いです!私にも抱っこさせてください!」

「次はわたしですわ!かーわいい!」

「えへへ、照れるなぁ」

 馬車にはセラフィスさんと、レオニスとアドニス。そして聖女のフィナが乗っていて代わりばんこに俺を抱きしめて……力を抑えるのを手伝ってくれている。

 俺の雄っぱい係に任命された3人はやはり群を抜いて強いが、聖女のフィナは疲れ切ってしまい、別の聖女と交代しながら進んだ。

「みんな、大丈夫……?」

「はいっ……がんばります!」

 そうしてイビルドラゴンが近づいて来ると空気が汚れて来る。

「近づいて来たね、この程度なら大丈夫そうかな?」

 空中の穢れを集める。ぱぁっと見えない霧が晴れたように辺りが明るくなるから不思議。普通は目に見えないんだけど、重苦しい気はやっぱり無い方が良いね。

「ルーチェ様?!この結界の中でも出来るのですか?!」

「あ、うん。全然へいき。どう?少し苦しくなくなった?」

 皆びっくりしつつもこくこくと頷く。そういえば、俺の力がどれくらいか知らないんだっけ……。

「……みんなが思ってるより、俺は強いのかもね……」

 封印が遠くなりそう。

 まだイビルドラゴンは見えない位置、ただ遠くには負の気が渦巻くいやな黒雲が満ちた空が広がっている。そして王国騎士団が防衛線を張る位置まで馬車は進んできた。イビルドラゴンはまだ見えないが、悪意と腐臭が漂って気分を悪くさせている。こういう空気の中にいるだけで、ちょっとづつ蝕まれていくんだよね。

「こ、これは神殿の方々!それではその馬車に邪神が……!」

「……そちらから依頼しておいて何という言い草!こちらは再三お断りしたのですよ!それでも対処できるものがいないと泣きつかれ、死人がこれ以上出るのが可哀想だとのルーチェ様のご慈悲だと言うのに!」

「帰りましょう、ルーチェ様。貴方様が苦労なさってやる事ではない!なんということだ騎士とはこのような物だったとは」

 あれ?神官たちと揉めている?この良くない気の流れの中じゃケンカも起きやすいよね。良くないけど、俺が馬車から顔を出したり声をかけたりするのは良くないんだ。これだけ邪気が満ちてるとどんな影響が出ちゃうか考えたくないや。

 暫く揉めていると、この場所の総責任者だという偉そうな貴族の人が出て来て、俺の乗っている馬車の前で全員土下座をしたもんだ。

「ルーチェ様!申し訳ございません!お力をお貸しくださいませ!」

 あらら……そこまでさせる事はなかったんじゃないかな……?

「良いんですよ、偉い人と現場の意見なんて食い違うものなんですから。現場でもそういう意見にまとまったってことで……ルーチェ様、本当に大丈夫ですか……?」

「うん、だってみんなが住んでる神殿まで来られたらどうせ倒しちゃうんだし……早いのがいいか遅いのがいいかって言われたら早い方がいいよ。ああ言うのは怨嗟を力にしちゃうからどんどん強くなるし」

 セラフィスさんに笑いかける。

「ね、この封印布から右手だけ出して?」

 ミノムシみたいになっている俺は自分で無理やり布を外さない。そっとほどいてもらって右手だけ自由になった。良いの、それで。

「何を……?」

「馬車の窓、ちょっとだけ開けて。うん、右手が……ううん、右の人差し指が出るくらいでいいよ」

 アドニスがちょっとだけ窓を開けてくれた。それでいいんだ。すっとイビルドラゴンがいる方向を指差す。

「行くよ~……【去ね】」

 指先からビームみたいに力の塊を飛ばして貫いた。それはかなり遠くで暴れているイビルドラゴンの眉間を的確に捉えて一撃で倒す。あの程度ならこんなもんでしょ。
 そして奴の邪悪な力が全部俺の流れ込んでくる……大した量じゃないけれど、影響はありそうだなあ……。

「え?」

「あ、アドニス。もう窓閉めて。終わったよ」

「うそ」

「ん?近くの瘴気も吸っとく?祓う事は出来ないけど、集めることはできるよ?」

 俺が飲み込んじゃうしかないんだけど、このくらいなら影響ないはず。ついでにかなりの広範囲に広がっている嫌な瘴気も集めておく。あのイビルドラゴンが巻き散らかしていたんだなあ……。

「ドラゴンの死体はちゃんと処理できる?結構穢れてるよ??」

「え、えっとあの……倒したの……ですか……?」

「うん、弱っちいからね」

「弱っ……!?我々が全員で止める事すらできなかったイビルドラゴンを……一撃……しかも指一本で……」

 あ、あれ?なんかごめんね……でも、あれくらいすぐだったんだもん。

「もう、帰っても大丈夫?俺、あんまり外に居たくないから……」

「あ!そうですね!急いで帰りましょう!」

 馬車を飛ばして神殿に戻って貰った。イビルドラゴンの力のせいでやっぱり俺は寒気が止まらなくなってしまった。
 あれっぽっちの力でも増えるのはほんとに良くない。




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