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28 小話・旅の神官
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私は旅の神官だ。貧しい村々を回り、病気の子供を助けたり、怪我をしたものを治療したりして修業を続けている。いつか神の声を聞く神官として人の役に立つ為に。
たまには都市部に寄ってみようかと思い立ち、レゼラント王国へ立ち寄った。何故ならこの王国の中央神殿にはきな臭い噂があったからだ。
「神殿で邪神を飼っている」
と……。それが本当の事ならば神への重篤な裏切り行為である。そして神殿の腐敗を招く。そんなことが許されていいはずがない。私は覚悟を持ってレゼラント王国へ踏み込んだ。
「いらっしゃい、旅の神官様」
ふむ、門番は明るく挨拶をしてくれる。何の問題も起こっていなさそうだ。そうだ、軽く噂話を聞いてみるか。
「門番さん、邪神の話を聞いたことないかい?」
門番は、思い当たる節があるのか「ああ」と一声発してから
「中央神殿の地下に封印されている邪神の事かい?大丈夫だよ、中央神殿は大神官様もたくさんいるし、何せこの国には聖騎士様がいらっしゃるからね!何かあっても大神官様と聖騎士様が何とかしてくださるよ。心配ならみてくるといい、街の中央辺りにあるからね」
「そうだったんですね」
なるほど、邪神を飼っている、ではなく邪神を封印しているであったか。それならば納得は行く。倒しきれない邪神を神殿で封じ続ける……地方ではありがちな事だが、この王国の中央でそんなことが……。
話と言うものは歪んで伝わる。やはり一度自分の目で確かめる必要がある、私は中央神殿へ向かう事にした。
「かーみーっさま~今日もご飯が美味し~です、ありがと~ふんふふーん」
神殿へ着くと神官の一人が、鼻歌を歌いながら掃除をしていた。おや、この神殿には見習い神官はいないのか?神官自ら掃除をするとは……。
「そこの神官の方、私は旅の者なのですが祈りを捧げてもよろしいですかな?」
すると、その徳の高そうな神官は、はっと振り返り
「あ!旅の神官様ですか!ええ、どうぞ。ご案内致しますね」
「いえいえ、見習いでもいれば案内してもらいますよ」
「私が見習いです!この神殿で一番の下っ端は私です!」
う、嘘でしょう?目の前でニコニコと笑っている……よく見ればまだ少年だろうか。彼からはかなり強い神聖なる力を感じます!私と同等か、それ以上か……。こんなにすごい力を持っている神官が見習いのはずがない。
「こちらです、旅のお方。ささ、どうぞ」
彼は箒をしまい、私の前を歩き始める……ほかに神官はいないし、彼について行ってみよう。少し内部に踏み込むと
「こ……これはなんと清浄な空間でしょうか!」
中央神殿の中は素晴らしい神気に満ち溢れている。素晴らしい、こんなに神の力が身近に感じるとは……!
「そうですか?割と普通ではないですか?あーでもこれも神様のお力かもしれませんね~ありがと~神様~大好き~!」
彼の言動は不思議だ。日常の会話の中に神への感謝が織り交ぜられている。それでいて不思議と悪い気はしない。
「トム見習い神官、旅の方ですか?」
「ええ、聖女ホリー様。祈りの間へとのことで、案内中です」
「そうですか、よろしくお願いします。あ、でも中庭にはルーチェ様が来ていらっしゃって、いつものアレをやっていますから」
「あー!アレですか!僕も参加したいな~」
「ふふ!間に合うと良いですね。では旅の神官様、ごゆるりと」
にこやかな笑顔で去っていく女性神官は聖女の位に相応しい慈愛に満ちた方だ。聖女のようになかなか現れない傑物に会えるとは私はとても運がいい。暫く行くとまた女性神官に出会う。おや?この方も……?
「聖女ミリム様、こんにちは!中庭のアレ、まだ終わっていませんか?」
「まだやってましたよ、でもトム見習い神官。お客様の案内が先でしょう?」
また、聖女だ!こ、この神殿には二名も聖女がいるのか……なんと尊い。それがこの澄んだ気の源か。私は気になってトムと呼ばれる見習い……?神官に声をかけてみた。
「この神殿には聖女様が2名もおられるのですね、素晴らしいですね」
「へ?聖女様ですか?20名おりますよ」
「は!?そんな馬鹿な!!」
「ほとんどの女性神官は聖女の位をいただいております。ここで働いていて聖女の位がないのは私と一緒に入ったミントくらいです。ミントももうそろそろ聖女の位を授かるかと思いますよ。これもみんなルーチェ様のお陰です」
「いやいや!待ってください、トムさん。聖女とは生まれながらの資質とその後の厳しい訓練を積み重ねて……」
「でも神様から、聖女だよ、って言われたら聖女なのでは??」
「か、神の!神のご神託が聞けるのですか!?」
トムさんは首を傾げて、
「え、神様のご神託は大体の神官なら皆聞けるのでは?」
そんな馬鹿な話がありますか!!私は一度も聞いたことがありません!!
「あれ~?そうなんですか……おかしいなあ。食堂のマリリンさんも「明日は山盛りクッキーを作ってあげてくださいね」って聞いたって言ってたけどなあ?」
「神はそんなご神託を下しません!!」
トムさんは「そっかなあ……?」などと首を傾げながら、歩いて行きます。何か、何かこの神殿はおかしいです!
祈りの間についた私はがらんと静まり返った部屋に驚きました。誰も祈りを捧げていないのです。
「トムさん、何故誰もいないのですか?毎日の祈りはどうしたのですか???」
神官ならば毎日かなりの時間を祈りに割くはずです。地上の平和を願い、神に聞き届けていただくために。
「あーちょっと前まではそうだったんですけど、変えたんですよ。実際神様も長い長ーい祈りを聞き続けるのは飽きるってことで、心を込めてお祈りすれば短時間でも神様には届くって!
実際大神官様だと「ありがとうございます」だけで神様には感謝の気持ちが届いてるらしいですよ。俺みたいな見習いはまだまだなので、何かあるたびにありがとうございますって言う事にしてます!そのほうが気持ちが入るでしょ!」
「いや……そんな馬鹿な……」
「主神様も「良いですね、そうしましょう」って言ってくださってるってセラフィス大神官が言ってましたし」
私は何を聞いているのだろうか……神殿の常識をぐちゃぐちゃと潰されているような気がする……しかし、この神殿は美しいし、目の前の見習いだと言い張る神官は素晴らしい力の持ち主だ。祈る気持ちがぐらついてしまった……こんな気持ちでは神に祈りは捧げられない……。
「案内は大丈夫。自由に見て回っても良いですか?」
「勿論ですよ、なんならお泊りになってください。宿泊の方に伝えておきますね!」
トム神官はパタパタと走って行ってしまった……この神殿は何か、おかしい。私がウロウロと神殿の中を歩いていると遠くにトム神官が見える。急いで中庭の方に向っているようだ。
「ルーチェ様~!私も、私もやりたいです!」
「あ、トム。そうだねえ、まだ見習いだもんね。いいよ~補習だよ~」
私はトム神官がにこやかに話しかけた少年をみてぎょっと目を剥いた。な、なんだ……あのそらおそろしい生き物は……!浅黒い肌に真っ黒な髪。金色の目は邪悪そのもの……そして抑えつけているようだが、邪悪な気が満ち溢れている……!あの小さな少年のような姿のモノはその気になれば、この神殿、いやこの国など一息で吹き飛ばしてしまうだろう!
私は恐ろしくてガタガタと震え出した……!
「行くよ~」「はーい!」
その異形が少し身を震わせると、その邪悪な影から黒いモノが飛び出してくる!なんと、何と恐ろしい!あの小さく蠢く物体一つでどれだけの人間が殺されてると言うのだ!?しかもそれが……何十……何百も……!終わった、この国はあの邪悪に一夜ももたずに滅ぼされるだろう!うわああああああっ!
「えい!」
ぷちん。邪悪がトム神官の靴裏でつぶれた。
「え?」
「えいえい、えい!むむ、意外とすばしっこいですね。えいえい」
「そんなことないよ~トムが……鈍いんじゃ?」「そ、そんなことありません!」
なんの遠慮もなしに、トム神官はこともなげに国を亡ぼす邪悪をぷちんぷちんと潰していく。なんで、なんであの程度で倒せるのだ!?あんな巨悪を!!恐ろしい、恐ろしすぎる!トム神官!!
「……あれ誰?」
目も合っていないはずなのに、少年の形をした恐怖の塊が私に気が付いたようだ!し、死ぬ、死んでしまう!私の心臓は爆発する寸前だ!神よ!我を守り給え!!
「あ、旅の神官さんっす。今日お泊りするみたいですよ」
えいえい!トム神官は靴裏でぷちぷちいわせながら私の事をばらしてしまった!なんと、何という事を!!
「駄目だよう、トム。この神殿の常識は外の常識と違うんだから……お客さんが来たら、教えてって言ってるでしょ!それ終わったら俺は戻るね。あの人すんごいびっくりしてるから、ちゃんと説明してあげて。俺は神官さんを虐めるつもりはないの!あと、あんまり俺を嫌わないでねって……」
「ルーチェ様を嫌う神官なんているんすかぁ?こぉんなに可愛いのに~肩車しましょっか?」
今日はやめとく!ルーチェ様と呼ばれたモノは苦笑して、トム神官が蠢く物体を潰し終わると足早に神殿の奥へ消えていった。な、なんだったんだ……アレは……!私は命拾いしたのだな……。
「旅の方、すみません。あの方はちょっと怖いですけど、とってもいい子なので嫌わないで上げてください」
物陰でガタガタ震えていると、トム神官がやってきた。
「あ、アレは……アレはなんなのですか!トム神官!」
「ルーチェ様の事をアレなんて呼ぶな!!あの人は、あの人は!凄くいい子なんだ!あの人を侮辱するなんてこの中央神殿全部を敵に回す事ですよ!」
「ひっ!」
あまりの剣幕に私はつい声が漏れた。そして、大声で叫んだトム神官の声を聞いてたくさんの神官たちがこちらを見ている。その目はトム神官をとがめるのではなく、私を睨んでいる。
「……旅の方、ルーチェ様を傷つけることは私達が許しません」
「そうです、このルーチェ様にいただいた力はルーチェ様の為に使いますから……あの方はとても大切な方なのですから」
「ルーチェ様に敵意を向けるならここから出て行っていただかなければなりません」
訳が分からず、私はより一層震えるしかなかった。
たまには都市部に寄ってみようかと思い立ち、レゼラント王国へ立ち寄った。何故ならこの王国の中央神殿にはきな臭い噂があったからだ。
「神殿で邪神を飼っている」
と……。それが本当の事ならば神への重篤な裏切り行為である。そして神殿の腐敗を招く。そんなことが許されていいはずがない。私は覚悟を持ってレゼラント王国へ踏み込んだ。
「いらっしゃい、旅の神官様」
ふむ、門番は明るく挨拶をしてくれる。何の問題も起こっていなさそうだ。そうだ、軽く噂話を聞いてみるか。
「門番さん、邪神の話を聞いたことないかい?」
門番は、思い当たる節があるのか「ああ」と一声発してから
「中央神殿の地下に封印されている邪神の事かい?大丈夫だよ、中央神殿は大神官様もたくさんいるし、何せこの国には聖騎士様がいらっしゃるからね!何かあっても大神官様と聖騎士様が何とかしてくださるよ。心配ならみてくるといい、街の中央辺りにあるからね」
「そうだったんですね」
なるほど、邪神を飼っている、ではなく邪神を封印しているであったか。それならば納得は行く。倒しきれない邪神を神殿で封じ続ける……地方ではありがちな事だが、この王国の中央でそんなことが……。
話と言うものは歪んで伝わる。やはり一度自分の目で確かめる必要がある、私は中央神殿へ向かう事にした。
「かーみーっさま~今日もご飯が美味し~です、ありがと~ふんふふーん」
神殿へ着くと神官の一人が、鼻歌を歌いながら掃除をしていた。おや、この神殿には見習い神官はいないのか?神官自ら掃除をするとは……。
「そこの神官の方、私は旅の者なのですが祈りを捧げてもよろしいですかな?」
すると、その徳の高そうな神官は、はっと振り返り
「あ!旅の神官様ですか!ええ、どうぞ。ご案内致しますね」
「いえいえ、見習いでもいれば案内してもらいますよ」
「私が見習いです!この神殿で一番の下っ端は私です!」
う、嘘でしょう?目の前でニコニコと笑っている……よく見ればまだ少年だろうか。彼からはかなり強い神聖なる力を感じます!私と同等か、それ以上か……。こんなにすごい力を持っている神官が見習いのはずがない。
「こちらです、旅のお方。ささ、どうぞ」
彼は箒をしまい、私の前を歩き始める……ほかに神官はいないし、彼について行ってみよう。少し内部に踏み込むと
「こ……これはなんと清浄な空間でしょうか!」
中央神殿の中は素晴らしい神気に満ち溢れている。素晴らしい、こんなに神の力が身近に感じるとは……!
「そうですか?割と普通ではないですか?あーでもこれも神様のお力かもしれませんね~ありがと~神様~大好き~!」
彼の言動は不思議だ。日常の会話の中に神への感謝が織り交ぜられている。それでいて不思議と悪い気はしない。
「トム見習い神官、旅の方ですか?」
「ええ、聖女ホリー様。祈りの間へとのことで、案内中です」
「そうですか、よろしくお願いします。あ、でも中庭にはルーチェ様が来ていらっしゃって、いつものアレをやっていますから」
「あー!アレですか!僕も参加したいな~」
「ふふ!間に合うと良いですね。では旅の神官様、ごゆるりと」
にこやかな笑顔で去っていく女性神官は聖女の位に相応しい慈愛に満ちた方だ。聖女のようになかなか現れない傑物に会えるとは私はとても運がいい。暫く行くとまた女性神官に出会う。おや?この方も……?
「聖女ミリム様、こんにちは!中庭のアレ、まだ終わっていませんか?」
「まだやってましたよ、でもトム見習い神官。お客様の案内が先でしょう?」
また、聖女だ!こ、この神殿には二名も聖女がいるのか……なんと尊い。それがこの澄んだ気の源か。私は気になってトムと呼ばれる見習い……?神官に声をかけてみた。
「この神殿には聖女様が2名もおられるのですね、素晴らしいですね」
「へ?聖女様ですか?20名おりますよ」
「は!?そんな馬鹿な!!」
「ほとんどの女性神官は聖女の位をいただいております。ここで働いていて聖女の位がないのは私と一緒に入ったミントくらいです。ミントももうそろそろ聖女の位を授かるかと思いますよ。これもみんなルーチェ様のお陰です」
「いやいや!待ってください、トムさん。聖女とは生まれながらの資質とその後の厳しい訓練を積み重ねて……」
「でも神様から、聖女だよ、って言われたら聖女なのでは??」
「か、神の!神のご神託が聞けるのですか!?」
トムさんは首を傾げて、
「え、神様のご神託は大体の神官なら皆聞けるのでは?」
そんな馬鹿な話がありますか!!私は一度も聞いたことがありません!!
「あれ~?そうなんですか……おかしいなあ。食堂のマリリンさんも「明日は山盛りクッキーを作ってあげてくださいね」って聞いたって言ってたけどなあ?」
「神はそんなご神託を下しません!!」
トムさんは「そっかなあ……?」などと首を傾げながら、歩いて行きます。何か、何かこの神殿はおかしいです!
祈りの間についた私はがらんと静まり返った部屋に驚きました。誰も祈りを捧げていないのです。
「トムさん、何故誰もいないのですか?毎日の祈りはどうしたのですか???」
神官ならば毎日かなりの時間を祈りに割くはずです。地上の平和を願い、神に聞き届けていただくために。
「あーちょっと前まではそうだったんですけど、変えたんですよ。実際神様も長い長ーい祈りを聞き続けるのは飽きるってことで、心を込めてお祈りすれば短時間でも神様には届くって!
実際大神官様だと「ありがとうございます」だけで神様には感謝の気持ちが届いてるらしいですよ。俺みたいな見習いはまだまだなので、何かあるたびにありがとうございますって言う事にしてます!そのほうが気持ちが入るでしょ!」
「いや……そんな馬鹿な……」
「主神様も「良いですね、そうしましょう」って言ってくださってるってセラフィス大神官が言ってましたし」
私は何を聞いているのだろうか……神殿の常識をぐちゃぐちゃと潰されているような気がする……しかし、この神殿は美しいし、目の前の見習いだと言い張る神官は素晴らしい力の持ち主だ。祈る気持ちがぐらついてしまった……こんな気持ちでは神に祈りは捧げられない……。
「案内は大丈夫。自由に見て回っても良いですか?」
「勿論ですよ、なんならお泊りになってください。宿泊の方に伝えておきますね!」
トム神官はパタパタと走って行ってしまった……この神殿は何か、おかしい。私がウロウロと神殿の中を歩いていると遠くにトム神官が見える。急いで中庭の方に向っているようだ。
「ルーチェ様~!私も、私もやりたいです!」
「あ、トム。そうだねえ、まだ見習いだもんね。いいよ~補習だよ~」
私はトム神官がにこやかに話しかけた少年をみてぎょっと目を剥いた。な、なんだ……あのそらおそろしい生き物は……!浅黒い肌に真っ黒な髪。金色の目は邪悪そのもの……そして抑えつけているようだが、邪悪な気が満ち溢れている……!あの小さな少年のような姿のモノはその気になれば、この神殿、いやこの国など一息で吹き飛ばしてしまうだろう!
私は恐ろしくてガタガタと震え出した……!
「行くよ~」「はーい!」
その異形が少し身を震わせると、その邪悪な影から黒いモノが飛び出してくる!なんと、何と恐ろしい!あの小さく蠢く物体一つでどれだけの人間が殺されてると言うのだ!?しかもそれが……何十……何百も……!終わった、この国はあの邪悪に一夜ももたずに滅ぼされるだろう!うわああああああっ!
「えい!」
ぷちん。邪悪がトム神官の靴裏でつぶれた。
「え?」
「えいえい、えい!むむ、意外とすばしっこいですね。えいえい」
「そんなことないよ~トムが……鈍いんじゃ?」「そ、そんなことありません!」
なんの遠慮もなしに、トム神官はこともなげに国を亡ぼす邪悪をぷちんぷちんと潰していく。なんで、なんであの程度で倒せるのだ!?あんな巨悪を!!恐ろしい、恐ろしすぎる!トム神官!!
「……あれ誰?」
目も合っていないはずなのに、少年の形をした恐怖の塊が私に気が付いたようだ!し、死ぬ、死んでしまう!私の心臓は爆発する寸前だ!神よ!我を守り給え!!
「あ、旅の神官さんっす。今日お泊りするみたいですよ」
えいえい!トム神官は靴裏でぷちぷちいわせながら私の事をばらしてしまった!なんと、何という事を!!
「駄目だよう、トム。この神殿の常識は外の常識と違うんだから……お客さんが来たら、教えてって言ってるでしょ!それ終わったら俺は戻るね。あの人すんごいびっくりしてるから、ちゃんと説明してあげて。俺は神官さんを虐めるつもりはないの!あと、あんまり俺を嫌わないでねって……」
「ルーチェ様を嫌う神官なんているんすかぁ?こぉんなに可愛いのに~肩車しましょっか?」
今日はやめとく!ルーチェ様と呼ばれたモノは苦笑して、トム神官が蠢く物体を潰し終わると足早に神殿の奥へ消えていった。な、なんだったんだ……アレは……!私は命拾いしたのだな……。
「旅の方、すみません。あの方はちょっと怖いですけど、とってもいい子なので嫌わないで上げてください」
物陰でガタガタ震えていると、トム神官がやってきた。
「あ、アレは……アレはなんなのですか!トム神官!」
「ルーチェ様の事をアレなんて呼ぶな!!あの人は、あの人は!凄くいい子なんだ!あの人を侮辱するなんてこの中央神殿全部を敵に回す事ですよ!」
「ひっ!」
あまりの剣幕に私はつい声が漏れた。そして、大声で叫んだトム神官の声を聞いてたくさんの神官たちがこちらを見ている。その目はトム神官をとがめるのではなく、私を睨んでいる。
「……旅の方、ルーチェ様を傷つけることは私達が許しません」
「そうです、このルーチェ様にいただいた力はルーチェ様の為に使いますから……あの方はとても大切な方なのですから」
「ルーチェ様に敵意を向けるならここから出て行っていただかなければなりません」
訳が分からず、私はより一層震えるしかなかった。
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