【完結】転生悪役っぽい令嬢、家族巻き込みざまぁ回避～ヒドインは酷いんです～

26 私はいつも気を引き締めておりますわ

「私、ニーナ・ハヴェルはこれよりエイミア様の手足として借金返済及び自由獲得のため頑張ることをここに誓います！つきましてはこのシャンプーというものについて提案させてください」
「シャンプーはもうあるわよ。リンスもボディソープも」
「うそー！ポテトフライも？！」
「ええ、あるわ」
「終わった、あたし終わったわ」

　ニナ、いえもうニーナで統一しましょう。多少恋愛ラノベというものを読んでいた子だったみたいで、異世界チートでウハウハよ！なんて浅はかな考えももっていたみたいだった。その辺りはもう10年も前に私が売り出しているから、かなり浸透してるのよね。

「ニーナ。真面目にやるんでしょう？」
「はぁい」

　それでもニーナは手先が器用な子で、要領も悪くなかった。掃除もすぐに覚えたし、洗濯も一生懸命した。ちょっとお喋り好きだけど、許される範囲だった。裁縫も最初は叫んでいたけど今はかなり複雑なレースも作れるようになった。

「んふーんふふーん」

　今では鼻歌を歌いながら綺麗に仕上げられるくらい上手になった。

「良いわね。ニーナの勉強レベルを上げましょう」
「えー！お嬢様。あたしこれ以上勉強やだよー」
「上級メイドになれば給料が上がるわよ？」
「やります！」

　ニーナは鼻息も荒く頑張っている。しかし彼女の母親はあまり良くないらしい。カリンの母親であるモリー夫人と自分は同等であると思い込んでいて、事あるごとに陰口や文句ばかり言っている。

「お情けで置いてもらってるという自覚がないのかしら？」
「ないようですわ、エイミア様。あれでは下級メイドどころかクビにしなくてはいけませんわね」
「頭の痛い所ね」

　とりあえずニーナの母親はお母様とモリー夫人にお任せした。何とか更生してくれれば良いのだけれども。

「エイミア、本当に大丈夫なのかい？」
「もちろんですわ。ニーナは少ずつですが令嬢らしくなっています。まだ先のことになると思いますが彼女の婚約者を探したいくらいですね」
「そうか、それは私も気にかけておこう。でも本当に無理はしないでくれよ？エイミア」
「ええ、分かりましたわ。グウェイン様」

　毎日グウェイン様は私を心配して下さる。少し過剰かと思うくらいだけど、何だか少し嬉しいなんて思ってしまう。

「それにエイミアが傍に居ないと……私はなんだか片羽根を失った鳥のような気がする。君がいないと何をしてもつまらない……君がいてくれれば面倒な書類整理もとても……楽しい」
「まあ、それでは事務官達を困らせないように、私はグウェイン様の傍にいなくてはいけませんね」
「事務官達のためになのかい？」
「……えっと……」

　優しい私だけに向けられた微笑み。ずっと独り占めしていたいけれど、この先何があるか分からない。
　ニーナはこの世界が自分が少しだけ作ったゲームの世界だって主張してたけれど、本当かどうか怪しい。

「そんなことはありません。私もグウェイン様と一緒にいたいです……いつまでも」

　これは本心だわ、その為にはもしかしたらこれから起こるかもしれない数々のざまぁに対抗する力をつえなくっちゃ！
　結婚してから、子供が産まれてから襲いかかってくるざまぁものもあるから全然油断できないわ！

「ありがとう、エイミア。ずっと私の隣にいて欲しい」
「嬉しいです」



　この後、数々のざまぁを乗り越えることなく、私は王妃として幸せに暮らしたのだけれど……？おかしいわね、お婆ちゃんになってからもざまぁってあるのかしら？

「老女ざまぁモノって流石の私も読んでなかったわ」
「ははは、エイミアは今日もざまぁを気にしてるのかい？」
「それはそうですわ。お爺ちゃんになってもグウェイン様は素敵ですからどんな人に狙われているか分かったものではございませんもの」
「この歳でも素敵といってくれて嬉しいよ、エイミア。私の一番可愛い愛する人」
「て、照れますわ……」

　まだまだ気を引き締めていかなきゃいけないみたいですわ！だって私、ざまぁされたくないんですもの！


　終