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閑話・セシルの結婚(セシル視点)

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 私はスパリーナ国の魔法学校で魔道具の製作を学んだ後、ランソプラズム国には戻らず、スパリーナ国の魔法省で働いている。
 宮廷医師の家に生まれたが次男だった為、自由にさせてもらっている。

 私も巻き戻る前の世界の記憶がある。魅了の魔法に耐性があるという特殊な体質だった為に魔法にかかったふりをしながら渦中にいた。

 あの時は本当に辛かった。弱い自分が情けなかった。

 しかし、ジークハルトが魔法で時を巻き戻してくれたおかげでやり直すことができた。
 あの時不幸になった者は皆、幸せになっている。

 私? 私はあの時も別に不幸でもなかったかもしれない。
 婚約者がいなかったので、皆のように婚約破棄し、不幸にすることもなかった。
 まだ、シャロンの魅了の魔法にかかっているふりをするのはキツかったが、所詮その他大勢のうちのひとりで、ジュリエッタの前世の世界では私のような者をモブと呼ぶと教えてもらった。

 今の世界でも私はまだ婚約者がいない。

 自分で言うのもなんだが、見た目もそれ程悪くないし、性格も明るく穏やかだ。家柄だって次男ではあるが公爵令息、今はスパリーナ国の魔法省に勤める文官なので収入もそれなりにある。しかし、生まれてこの方一度もモテた事がない。

 もう20歳、親はあちこちに縁談を頼んでいるようだが、ランソプラズム国で釣り合う令嬢はみんな結婚していたり、婚約者がいるそうなのだ。兄はもう結婚しているし、弟にも婚約者がいるのに私だけなんでだろう。

 仕事の帰りに寄ってくれとユアン殿下に呼ばれ、王族のサロンに来た。
 魔道具や魔法の事でユアン殿下にはちょこちょこ呼び出されている。気がつけば何故か側近状態になっているようだ。

 私はまだスパリーナ人ではないが、スパリーナ国の魔法省に勤めているのでいずれは帰化してもいいかなと思っている。

「セシル、今日来てもらったのはお前の縁談の話なんだ」

 縁談?

 ユアン殿下の隣にはエリーゼ様もいる。

「私のひいおばあさまの実家のサランルロッテ家の一人娘なの。婿入りになるんだけど、どうかしら?」

 サランルロッテ家?

「いやいや、サランルロッテ家って公爵家じゃないですか? そんな家に私が婿入り? 無理無理無理無理~」

 私は顔面蒼白になった。

「まぁ、公爵家の婿養子と言ってもそんなにビビる事はない。母親もひとり娘で婿養子を取っているしな」

「そうなの。クリスティーナ様の旦那様のオーウェン様も婿養子だし、今は次期公爵を継ぐために辞めているけど、前は文官だったそうよ。それにご実家は侯爵家だから、セシル様とも上手くやれるのではないかしら?」

「しかし、それならばいずれは私が公爵家を継ぐわけでしょう。荷が重いです」

 私は自分で言うのもなんだが、ビビリだ。

「ただね。年がちょっと離れているの。エレノアは今、10歳なのよ」

 10歳?

 いや、若すぎるだろう。10歳も年下だ。

「まぁ、会うだけでも会ってみてはどうかと思うので、今からサランルロッテ家に飛ぶぞ」

 私はユアン殿下に腕を掴まれ、気がつくと見知らぬ屋敷のサロンにいた。



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