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2話 母
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父の執務室をあとにした。階段を降り、サロンに入ると母がまだお茶を飲んでいた。
「ディーも続きどう? 王都で1番人気のパティスリーの焼き菓子が届いたわよ」
「いただきます」
あの店の焼き菓子があるなら絶対食べないといけないわ。私は椅子に座った。
侍女のハンナが私のお茶を淹れかえてくれた。ハンナは母の侍女であり、我が家の侍女頭でもある。
私はお茶をひと口飲んでから、焼き菓子をパクりと頬張った。やっぱり美味しい。
母は愉悦に浸る私の顔を見た。
「ねぇ、お父様のお話って、縁談のお話だったんでしょう?」
「はい。辺境伯の後妻だそうです」
「確か、年も離れているし、子供もいるのよね?」
母はなんだか怖い顔になっている。
「年が離れているのですか? そこまで聞かなかったです。まぁ、子供がふたりいるそうですからそれなりの年ですよね」
「あの人、年齢のことはあなたに言わなかったの! それに子供がふたりもいるの?」
いや、言っていたかもしれないけど覚えていない。母はこの縁談に納得していないようだ。
「全く、何が王命よ。ディーが傷ついて戻ってきてまだ1年しか経ってないのに、傷も癒えないうちに、そんなコブ付きの妻に逃げられた辺境伯に嫁がせるなんて! 許せない。やっぱりお兄さまに文句を言いに行くわ!」
母は国王陛下の末の妹だ。私と同じで見た目は小柄で儚げな庇護欲を誘う感じなのだが、中身は苛烈だ。気が強く、曲がったことが許せない。口も行動も早い。有言実行型の人だ。
しかも元王族、微妙な威圧感があり、誰も反論ができない。
そんな母を抑えられるのは武門のアイゼンシュタット公爵家しかいないと父に嫁いだのだ。なんとか父は頑張って抑えている。まぁ、愛のチカラもあるのだろう。ふたりはとても仲が良い。
「お母様、落ち着いてくださいませ。辺境の地ってなんだか楽しそうではないですか?」
私の言葉に母は目を丸くしている。
「あら、そうなの? でも相手は田舎のコブ付きおじさんなのよ。ないでしょう?」
田舎のコブ付きおじさんは酷い。私だって出戻りだ。
「伯父様はきっと、辺境伯閣下のところなら私らしく生きていけると思われたのではないのでしょうか?」
「まぁ、そうかもしれないわね。お兄様もあなたを愛しているもの。変な人のところには行かせないはず。辺境の地は本当にあなたが生きやすい場所なのかしらね?」
母はこてんと小首を傾げる。可愛い。見た目は本当に可愛い。
「とにかくお会いしてみます。今は絵姿と妻に逃げられた子持ちの辺境伯というイメージしかないので、会わなければ中身がわからないですものね」
私は嘘くさい貴族笑いを母に向けた。
「そうと決まればドレスを作らなくてはならないわね。ハンナ! セレナール商会を呼んで頂戴」
母はやっぱり行動派だな。切り替えが早い。
「お母様、ドレスなんてあるものでいいですわ」
「何を言っているの! ドレスは女の戦闘服よ。こんな時にありものなんてダメ!」
ドレスは女の戦闘服か。母の口癖だ。貴族の女はドレスで武装し、ファイティグポーズをしながら嘘笑いを浮かべなくてはならないらしい。
私はそれが嫌で社交界と距離を置いていて、あまり姿を見せないし、たまに出ても猫をかぶっているせいか、身体が弱いだの、奥ゆかしいだの、人見知りだの、見た目だけで色々憶測され、噂されていた。
それゆえに元夫も勘違いしたのだろう。まさか、こんな見た目の私が武闘派とは思いもしなかっただろう。
私にぶん殴られたと言っても誰も信じない。反対に元夫が暴力を振るったとまで噂されている。私は否定した。暴力など受けていないと。でも否定すればするほど、私が可哀想。暴力を受けていたのに庇うなんて、なんて慈悲深いのだろうってね、
ほんとに思い込みって怖いわ。まぁ、元夫も愛する恋人と結ばれたのだからよかったんじゃないかしら。
すぐにセレナール商会の会頭とデザイナーがやってきた。母の意向を聞き、デザイン画をちゃちゃっと描いて、ちゃちゃっと細かいことを決めて「それでは大至急仕上げてお届けいたします」と言い帰っていった。
セレナール商会は私の外見に似合う母好みの戦闘服、いや、ドレスをあっという間に作り上げた。
届いたドレスは上品なシャンパンベージュのふんわりとした優しい感じのドレス。
スカートの部分が羽根のように薄い生地のラッフルを何枚も重ねている。胸の辺りには繊細な刺繍が施され、このドレスを着るとまるで妖精のように見えるだろう。
私の薄い金髪寄りのストロベリーブロンドの癖っ毛にもよく似合っている。
アクセサリーは華奢な作りのゴールドにピンクダイヤモンド。どこからどう見ても庇護欲をそそる儚げな弱々しい令嬢に仕上がるはずだ。詐欺だな。間違いなく詐欺だ。
◆◆ ◇
顔合わせの日がやってきた。例の妖精風ドレスを着て、鏡台の前に座る。
髪をハーフトップにし、緩く編み、小花の髪飾りを散らした。髪をセットしてくれていた侍女のメアリーが鏡の中の私を見て呆れた顔をした。
「ディー様、これじゃあ詐欺ですね。元夫様のように今度の夫様も騙されますよ。いっそ騎士服でお会いになられた方がディー様の人となりがわかるでしょうにね」
「本当だわ。騎士服で行きたいわ。こんな悪趣味なドレス勘弁してもらいたいわよ」
私も鏡の中の自分を見て、はははと苦笑した。
メアリーはハンナの娘で私より5歳年上。私にとっては姉のような存在だ。結婚したら辺境の地に一緒に行くと言ってくれている。なんだか申し訳ない。メアリーはメアリーの幸せを手に入れてもらいたいが「私の幸せはディー様の傍でお仕えすることです」と言って引かない。なかなかの頑固者だ。
さて、戦闘服を着て、髪も化粧もバッチリだ。
気合いを入れて闘いの場に挑むしかない。
私は手に持った扇子をパチンと鳴らした。
「ディーも続きどう? 王都で1番人気のパティスリーの焼き菓子が届いたわよ」
「いただきます」
あの店の焼き菓子があるなら絶対食べないといけないわ。私は椅子に座った。
侍女のハンナが私のお茶を淹れかえてくれた。ハンナは母の侍女であり、我が家の侍女頭でもある。
私はお茶をひと口飲んでから、焼き菓子をパクりと頬張った。やっぱり美味しい。
母は愉悦に浸る私の顔を見た。
「ねぇ、お父様のお話って、縁談のお話だったんでしょう?」
「はい。辺境伯の後妻だそうです」
「確か、年も離れているし、子供もいるのよね?」
母はなんだか怖い顔になっている。
「年が離れているのですか? そこまで聞かなかったです。まぁ、子供がふたりいるそうですからそれなりの年ですよね」
「あの人、年齢のことはあなたに言わなかったの! それに子供がふたりもいるの?」
いや、言っていたかもしれないけど覚えていない。母はこの縁談に納得していないようだ。
「全く、何が王命よ。ディーが傷ついて戻ってきてまだ1年しか経ってないのに、傷も癒えないうちに、そんなコブ付きの妻に逃げられた辺境伯に嫁がせるなんて! 許せない。やっぱりお兄さまに文句を言いに行くわ!」
母は国王陛下の末の妹だ。私と同じで見た目は小柄で儚げな庇護欲を誘う感じなのだが、中身は苛烈だ。気が強く、曲がったことが許せない。口も行動も早い。有言実行型の人だ。
しかも元王族、微妙な威圧感があり、誰も反論ができない。
そんな母を抑えられるのは武門のアイゼンシュタット公爵家しかいないと父に嫁いだのだ。なんとか父は頑張って抑えている。まぁ、愛のチカラもあるのだろう。ふたりはとても仲が良い。
「お母様、落ち着いてくださいませ。辺境の地ってなんだか楽しそうではないですか?」
私の言葉に母は目を丸くしている。
「あら、そうなの? でも相手は田舎のコブ付きおじさんなのよ。ないでしょう?」
田舎のコブ付きおじさんは酷い。私だって出戻りだ。
「伯父様はきっと、辺境伯閣下のところなら私らしく生きていけると思われたのではないのでしょうか?」
「まぁ、そうかもしれないわね。お兄様もあなたを愛しているもの。変な人のところには行かせないはず。辺境の地は本当にあなたが生きやすい場所なのかしらね?」
母はこてんと小首を傾げる。可愛い。見た目は本当に可愛い。
「とにかくお会いしてみます。今は絵姿と妻に逃げられた子持ちの辺境伯というイメージしかないので、会わなければ中身がわからないですものね」
私は嘘くさい貴族笑いを母に向けた。
「そうと決まればドレスを作らなくてはならないわね。ハンナ! セレナール商会を呼んで頂戴」
母はやっぱり行動派だな。切り替えが早い。
「お母様、ドレスなんてあるものでいいですわ」
「何を言っているの! ドレスは女の戦闘服よ。こんな時にありものなんてダメ!」
ドレスは女の戦闘服か。母の口癖だ。貴族の女はドレスで武装し、ファイティグポーズをしながら嘘笑いを浮かべなくてはならないらしい。
私はそれが嫌で社交界と距離を置いていて、あまり姿を見せないし、たまに出ても猫をかぶっているせいか、身体が弱いだの、奥ゆかしいだの、人見知りだの、見た目だけで色々憶測され、噂されていた。
それゆえに元夫も勘違いしたのだろう。まさか、こんな見た目の私が武闘派とは思いもしなかっただろう。
私にぶん殴られたと言っても誰も信じない。反対に元夫が暴力を振るったとまで噂されている。私は否定した。暴力など受けていないと。でも否定すればするほど、私が可哀想。暴力を受けていたのに庇うなんて、なんて慈悲深いのだろうってね、
ほんとに思い込みって怖いわ。まぁ、元夫も愛する恋人と結ばれたのだからよかったんじゃないかしら。
すぐにセレナール商会の会頭とデザイナーがやってきた。母の意向を聞き、デザイン画をちゃちゃっと描いて、ちゃちゃっと細かいことを決めて「それでは大至急仕上げてお届けいたします」と言い帰っていった。
セレナール商会は私の外見に似合う母好みの戦闘服、いや、ドレスをあっという間に作り上げた。
届いたドレスは上品なシャンパンベージュのふんわりとした優しい感じのドレス。
スカートの部分が羽根のように薄い生地のラッフルを何枚も重ねている。胸の辺りには繊細な刺繍が施され、このドレスを着るとまるで妖精のように見えるだろう。
私の薄い金髪寄りのストロベリーブロンドの癖っ毛にもよく似合っている。
アクセサリーは華奢な作りのゴールドにピンクダイヤモンド。どこからどう見ても庇護欲をそそる儚げな弱々しい令嬢に仕上がるはずだ。詐欺だな。間違いなく詐欺だ。
◆◆ ◇
顔合わせの日がやってきた。例の妖精風ドレスを着て、鏡台の前に座る。
髪をハーフトップにし、緩く編み、小花の髪飾りを散らした。髪をセットしてくれていた侍女のメアリーが鏡の中の私を見て呆れた顔をした。
「ディー様、これじゃあ詐欺ですね。元夫様のように今度の夫様も騙されますよ。いっそ騎士服でお会いになられた方がディー様の人となりがわかるでしょうにね」
「本当だわ。騎士服で行きたいわ。こんな悪趣味なドレス勘弁してもらいたいわよ」
私も鏡の中の自分を見て、はははと苦笑した。
メアリーはハンナの娘で私より5歳年上。私にとっては姉のような存在だ。結婚したら辺境の地に一緒に行くと言ってくれている。なんだか申し訳ない。メアリーはメアリーの幸せを手に入れてもらいたいが「私の幸せはディー様の傍でお仕えすることです」と言って引かない。なかなかの頑固者だ。
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私は手に持った扇子をパチンと鳴らした。
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