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婚約解消
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「殿下~、お話があるのです」
ミレーユが泣きながら私のところに来た。びしょ濡れだ。どうしたんだろう?
「ハイデマリー様に嫌がらせをされました」
「ハイデマリー嬢に?」
「はい。今まで黙っておりましたが、もう我慢できなくて。殿下にお話することにしました~」
ミレーユは私の腕をぎゅっと握り身体を寄せてくる。目には涙をいっぱい溜めていて、それが流れ落ちている。
「どんなことをされたんだい?」
まさかハイデマリー嬢が嫌がらせなどするはずはない。きっとミレーユは勘違いをしてるんだ。
ゆっくり話をすればわかるはず。
「最初は校舎の裏に呼び出されて殿下に近づくなと言われました。その時に突き飛ばされました」
突き飛ばした?
「それから、今日は水をかけられました。あとは教科書を破かれたり、噴水に突き落とされたりしたのです~。ほら見てください」
ミレーユは打身やすり傷を見せた。
「殿下と仲良くしているのが気に入らないみたいです。私、ハイデマリー様と仲良くなりたかったのに~」
そんな、ハイデマリー嬢がそんな酷い人だったなんて。
ミレーユは何もしていないのに。私は腹が立ってきた。
「見損なったよ! ハイデマリー嬢! 君とは絶交だ! 何もしていないミレーユに酷いことをするなんて許せない! 王家から君の国に抗議させてもらう」
そうだ。従姉妹のエルにも文句を言っておこう。
あんなに見た目はあんなに可愛いのに中身は最低だ。
あんな女にいっ時でも恋をした自分が馬鹿だった。
見た目に騙された。やっぱり私はミレーユだ。可哀想なミレーユ。私のせいで酷い目に遭ってしまった。
私は王宮に戻るとすぐにエルの執務室に行った。
「エル! ハイデマリー嬢がミレーユに酷いことをしていたんだ。君からも抗議してほしい。もちろん王家からもセフォチアム王国に抗議するつもりだ。あんな女即刻国に送り返したいよ」
エルは感情のないような顔をしている。
「ラメルテオン王国からセフォチアム王国に抗議するのですか?」
「そうだよ」
エルはため息をついている。
「セフォチアム王国からの留学生が我が国の生徒に危害を加えたと抗議するのですか?」
「あぁ」
「危害とは瀕死の重症ですか?」
「瀕死ではないけど、打身やすり傷が痛々しかったよ。
「打身やすり傷ですか。カール様はミレーユ嬢とセフォチアム王国を天秤にかけるとミレーユ嬢の方が重いのですね」
「当たり前だ」
エルは何を言っているのだ。当たり前じゃないか。
「その抗議でセフォチアム王国と国交が断絶したり、最悪戦争になるかもしれませんがよろしいですか?」
えっ? なんで? ただ抗議するだけじゃないか。
エルは冷たい目で私を見る。
「カール様、ハイディがミレーユ嬢に酷いことをしたというのはちゃんと裏は取れているのですね」
「裏をとるとは?」
「証拠ですよ。目撃者は? 間違いなくハイディはミレーユ嬢に危害を加えたのですね。抗議したあとで間違いでしたではすみませんよ」
「間違いはない! ミレーユが言ったんだ!」
「ミレーユ嬢の証言だけなのですね」
「そうだよ。ミレーユが嘘を言う訳がない!」
「では、こちらできちんと調べてみます」
「エルはハイデマリー嬢と従姉妹だから揉み消そうとしてるんじゃないのか!」
私は腹が立って来た。
エルはハイデマリー嬢をかばうつもりだろう。
「カール様、私は言いましたよ。よく見て下さいと。何も見えてないのですね。私はお手伝いいたしませんが、カール様がセフォチアム王国へ抗議なさればよろしいではありませんか。それがこの国にどんな影響をもたらすか、やってみたらわかりますわ」
あぁやってやる。エルなんかいなくても自分でできる。
「あぁ、わかった。もうエルには頼らない! 婚約も解消だ! 私はミレーユと結婚する」
「かしこまりました。婚約解消お受け致しますわ。この部屋にいる影の方々今の王太子殿下の発言をお聞きになりましたわね。この婚約は解消となりました。私は今この時をもって、携わっておりました全ての事から手を引かせていただきます。陛下や王妃様は本日王宮におられませんのでご挨拶できませんが、影の方々からエルは無念だったとお伝え下さいませ。それでは失礼致します」
エルは移動魔法で消えた。
影からの連絡を受けたのかすぐに両親が戻って来た。
「この馬鹿者が!」
父上は私の顔を見るなり、そう叫び殴ってきた。
「あなたのような愚かな子はいりません」
母上にも平手打ちをされた。
なぜだ。悪いのはエルだろう? ミレーユが嘘などつくわけがない。
エルが従姉妹を庇いたい気持ちはわかるがミレーユは怪我をしたんだ。きちんと抗議しなくてはいけないだろう。
エルがあんなやつだとは思わなかった。
公爵が来た。
「婚約解消の旨、しかと受け取りました。エルフリーデには近日中に毒杯をあおらせます」
毒杯? 婚約を解消したらエルは死ぬのだったな。
まぁ、いい。仕方ない。
エルなどいなくてもミレーユと国を栄えさせる。
その時の私はエルが消えたあとのことなど何も考えていなかった。
ミレーユが泣きながら私のところに来た。びしょ濡れだ。どうしたんだろう?
「ハイデマリー様に嫌がらせをされました」
「ハイデマリー嬢に?」
「はい。今まで黙っておりましたが、もう我慢できなくて。殿下にお話することにしました~」
ミレーユは私の腕をぎゅっと握り身体を寄せてくる。目には涙をいっぱい溜めていて、それが流れ落ちている。
「どんなことをされたんだい?」
まさかハイデマリー嬢が嫌がらせなどするはずはない。きっとミレーユは勘違いをしてるんだ。
ゆっくり話をすればわかるはず。
「最初は校舎の裏に呼び出されて殿下に近づくなと言われました。その時に突き飛ばされました」
突き飛ばした?
「それから、今日は水をかけられました。あとは教科書を破かれたり、噴水に突き落とされたりしたのです~。ほら見てください」
ミレーユは打身やすり傷を見せた。
「殿下と仲良くしているのが気に入らないみたいです。私、ハイデマリー様と仲良くなりたかったのに~」
そんな、ハイデマリー嬢がそんな酷い人だったなんて。
ミレーユは何もしていないのに。私は腹が立ってきた。
「見損なったよ! ハイデマリー嬢! 君とは絶交だ! 何もしていないミレーユに酷いことをするなんて許せない! 王家から君の国に抗議させてもらう」
そうだ。従姉妹のエルにも文句を言っておこう。
あんなに見た目はあんなに可愛いのに中身は最低だ。
あんな女にいっ時でも恋をした自分が馬鹿だった。
見た目に騙された。やっぱり私はミレーユだ。可哀想なミレーユ。私のせいで酷い目に遭ってしまった。
私は王宮に戻るとすぐにエルの執務室に行った。
「エル! ハイデマリー嬢がミレーユに酷いことをしていたんだ。君からも抗議してほしい。もちろん王家からもセフォチアム王国に抗議するつもりだ。あんな女即刻国に送り返したいよ」
エルは感情のないような顔をしている。
「ラメルテオン王国からセフォチアム王国に抗議するのですか?」
「そうだよ」
エルはため息をついている。
「セフォチアム王国からの留学生が我が国の生徒に危害を加えたと抗議するのですか?」
「あぁ」
「危害とは瀕死の重症ですか?」
「瀕死ではないけど、打身やすり傷が痛々しかったよ。
「打身やすり傷ですか。カール様はミレーユ嬢とセフォチアム王国を天秤にかけるとミレーユ嬢の方が重いのですね」
「当たり前だ」
エルは何を言っているのだ。当たり前じゃないか。
「その抗議でセフォチアム王国と国交が断絶したり、最悪戦争になるかもしれませんがよろしいですか?」
えっ? なんで? ただ抗議するだけじゃないか。
エルは冷たい目で私を見る。
「カール様、ハイディがミレーユ嬢に酷いことをしたというのはちゃんと裏は取れているのですね」
「裏をとるとは?」
「証拠ですよ。目撃者は? 間違いなくハイディはミレーユ嬢に危害を加えたのですね。抗議したあとで間違いでしたではすみませんよ」
「間違いはない! ミレーユが言ったんだ!」
「ミレーユ嬢の証言だけなのですね」
「そうだよ。ミレーユが嘘を言う訳がない!」
「では、こちらできちんと調べてみます」
「エルはハイデマリー嬢と従姉妹だから揉み消そうとしてるんじゃないのか!」
私は腹が立って来た。
エルはハイデマリー嬢をかばうつもりだろう。
「カール様、私は言いましたよ。よく見て下さいと。何も見えてないのですね。私はお手伝いいたしませんが、カール様がセフォチアム王国へ抗議なさればよろしいではありませんか。それがこの国にどんな影響をもたらすか、やってみたらわかりますわ」
あぁやってやる。エルなんかいなくても自分でできる。
「あぁ、わかった。もうエルには頼らない! 婚約も解消だ! 私はミレーユと結婚する」
「かしこまりました。婚約解消お受け致しますわ。この部屋にいる影の方々今の王太子殿下の発言をお聞きになりましたわね。この婚約は解消となりました。私は今この時をもって、携わっておりました全ての事から手を引かせていただきます。陛下や王妃様は本日王宮におられませんのでご挨拶できませんが、影の方々からエルは無念だったとお伝え下さいませ。それでは失礼致します」
エルは移動魔法で消えた。
影からの連絡を受けたのかすぐに両親が戻って来た。
「この馬鹿者が!」
父上は私の顔を見るなり、そう叫び殴ってきた。
「あなたのような愚かな子はいりません」
母上にも平手打ちをされた。
なぜだ。悪いのはエルだろう? ミレーユが嘘などつくわけがない。
エルが従姉妹を庇いたい気持ちはわかるがミレーユは怪我をしたんだ。きちんと抗議しなくてはいけないだろう。
エルがあんなやつだとは思わなかった。
公爵が来た。
「婚約解消の旨、しかと受け取りました。エルフリーデには近日中に毒杯をあおらせます」
毒杯? 婚約を解消したらエルは死ぬのだったな。
まぁ、いい。仕方ない。
エルなどいなくてもミレーユと国を栄えさせる。
その時の私はエルが消えたあとのことなど何も考えていなかった。
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