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ほんとかよ?(キシロカイン公爵〈エルパパ〉視点)
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国王から4大公爵家に召集がかかった。
ラメルテオン王国の4つの公爵が王宮の客間に集まった。
「今日来てもらったのは、これからのことについて皆に頼みたいことがあってな」
国王はみんなの顔を見ている。
「今回のことは申し訳なかった。ひとえに私の不徳の致すところだ。特にキシロカイン公爵と令嬢のエルフリーデ嬢には本当に申し訳ないと思っている」
国王は私に頭を下げた。
「いえ、お気になさらないで下さい。どうか頭を上げてください」
「ありがとう。これからの話をしたい」
国王は私たちに着席するように勧めた。
「愚息のカールハインツが体調を崩し、王太子を続けるのは無理になった事は皆の知るところだと思う」
国王は悲しそうな顔をしている。
確か魅了の術から解け、現実を知った時、心を閉ざしてしまったらしい。
「今は王妃と共に南の領地で静養している。いつ治るか、もう治らないかわからない。そこで近いうちに私も退位して、そちらに移りたいと思っているのだ」
退位か。自ら退位するおつもりなのだな。
「しかし、次の国王はどうするおつもりですか?」
ミカルディス公爵が口を開いた。
ミカルディス家は国の暗部を取り仕切っている。裏の王ではあるので、表の王になるつもりはないだろう。
「ノルバスク公爵家のエアハルトに頼みたいと思っている」
「エアハルトですか?」
ノルバスク公爵は息子の名前が出たので驚いているようだ。
私達はノルバスクがいいとは思っていたが、息子か……。
ノルバスクの息子は国外を飛び回っている。いずれは公爵を継ぐのだから、若いうちは好きにさせてもらうと学園を卒業するとすぐ行方不明になった。
行方不明という言い方は少しおかしいかもしれないが、まさにそんな感じだ。
ノルバスクが言うには冒険者をしているらしい。
そういえば、エルも冒険者になりたいと言っていたな。冒険者とはそんなに魅力的な仕事なのだろうか?
難しい顔をしながらノルバスクが口を開いた。
「息子は今冒険者をしていて、どこにいるかわからない。いきなり次期国王と言われても……」
「探してくれ。ミカルディス、頼む」
なるほどミカルディスなら探せるな。
「そして、エルフリーデ嬢と結婚してほしいのだ。エルフリーデ嬢の頭の中にはこの国の王妃、いや国王としての全ての知識が詰まっている」
「それならエルフリーデ嬢を国王にしたらどうだ?」
この国の宰相でもあるメドレニックが恐ろしいことを言い出した。
「いや、エルは死んだことになっている。別人になって生きる準備をしているところだ」
私がそう言うと、メドレニックは口角を上げた。
「我が国の宝を他所に出すのはもったいない。死んだ事はお前が得意の魔法で記憶操作すれば問題ないだろう? エルフリーデ嬢を女王にして、エアハルトを王配にするのはどうだ。まぁ、逆もありだかな」
いやいや、ダメだろう。確かローゼマリーが誰かと婚約させると言っていたはず。まさかこんな事になるなんて、困った。
「エルは無理だ。諦めてくれ」
「キシロカイン、諦めるのはお前の方だ。もう逃げられない。エルフリーデが国王か王妃になる案なら俺も乗る。このミカルディスが全力で応援しよう」
待て待て待て待て、ミカルディスが乗り出してきたということは、裏の王がエルについたってことか?
エルどうする? カールハインツどころの騒ぎじゃないぞ。
私は冷や汗が止まらなかった。
「ノルバスク、お前は知ってたのか?」
私はノルバスクに声をかけた。
「いや、今初めて聞いた。あいつが国王を降りたら次は私かと思っていたのだが、エアハルトとは全くノーマークだった。エアハルトはかなり自由な思想の男だ。あんなのが国王になって大丈夫か? そりゃカールハインツよりはましだけどな」
「首を縦に振りそうか?」
「いやわからん。その前にみつかるかどうか」
「ミカルディスが探すなら見つかるだろう」
「だな」
私達が困り顔で話していると、メドレニックてミカルディスがやってきた。
「よぉ、エアハルトが見つかったぞ」
さすがミカルディスは仕事が早い。
「こっちへ向かってる。エルには話はついたのか?」
つくわけないだろう。
「いやまだだ。とりあえず王宮に呼んだ」
私は説得などできない。
「説得はお前たちがしてくれないか? 私は無理だ」
私はため息をついた。
エル、もう諦めろ。諦めてくれ。
ミカルディスとメドレニックが手を組んでお前とエアハルトを推している。私は魔法では誰にも負けないが、あいつらのように狡猾老獪ではない。私ではあいつらには太刀打ちできないんだ。
エルもう無理だ。諦めろ。
ラメルテオン王国の4つの公爵が王宮の客間に集まった。
「今日来てもらったのは、これからのことについて皆に頼みたいことがあってな」
国王はみんなの顔を見ている。
「今回のことは申し訳なかった。ひとえに私の不徳の致すところだ。特にキシロカイン公爵と令嬢のエルフリーデ嬢には本当に申し訳ないと思っている」
国王は私に頭を下げた。
「いえ、お気になさらないで下さい。どうか頭を上げてください」
「ありがとう。これからの話をしたい」
国王は私たちに着席するように勧めた。
「愚息のカールハインツが体調を崩し、王太子を続けるのは無理になった事は皆の知るところだと思う」
国王は悲しそうな顔をしている。
確か魅了の術から解け、現実を知った時、心を閉ざしてしまったらしい。
「今は王妃と共に南の領地で静養している。いつ治るか、もう治らないかわからない。そこで近いうちに私も退位して、そちらに移りたいと思っているのだ」
退位か。自ら退位するおつもりなのだな。
「しかし、次の国王はどうするおつもりですか?」
ミカルディス公爵が口を開いた。
ミカルディス家は国の暗部を取り仕切っている。裏の王ではあるので、表の王になるつもりはないだろう。
「ノルバスク公爵家のエアハルトに頼みたいと思っている」
「エアハルトですか?」
ノルバスク公爵は息子の名前が出たので驚いているようだ。
私達はノルバスクがいいとは思っていたが、息子か……。
ノルバスクの息子は国外を飛び回っている。いずれは公爵を継ぐのだから、若いうちは好きにさせてもらうと学園を卒業するとすぐ行方不明になった。
行方不明という言い方は少しおかしいかもしれないが、まさにそんな感じだ。
ノルバスクが言うには冒険者をしているらしい。
そういえば、エルも冒険者になりたいと言っていたな。冒険者とはそんなに魅力的な仕事なのだろうか?
難しい顔をしながらノルバスクが口を開いた。
「息子は今冒険者をしていて、どこにいるかわからない。いきなり次期国王と言われても……」
「探してくれ。ミカルディス、頼む」
なるほどミカルディスなら探せるな。
「そして、エルフリーデ嬢と結婚してほしいのだ。エルフリーデ嬢の頭の中にはこの国の王妃、いや国王としての全ての知識が詰まっている」
「それならエルフリーデ嬢を国王にしたらどうだ?」
この国の宰相でもあるメドレニックが恐ろしいことを言い出した。
「いや、エルは死んだことになっている。別人になって生きる準備をしているところだ」
私がそう言うと、メドレニックは口角を上げた。
「我が国の宝を他所に出すのはもったいない。死んだ事はお前が得意の魔法で記憶操作すれば問題ないだろう? エルフリーデ嬢を女王にして、エアハルトを王配にするのはどうだ。まぁ、逆もありだかな」
いやいや、ダメだろう。確かローゼマリーが誰かと婚約させると言っていたはず。まさかこんな事になるなんて、困った。
「エルは無理だ。諦めてくれ」
「キシロカイン、諦めるのはお前の方だ。もう逃げられない。エルフリーデが国王か王妃になる案なら俺も乗る。このミカルディスが全力で応援しよう」
待て待て待て待て、ミカルディスが乗り出してきたということは、裏の王がエルについたってことか?
エルどうする? カールハインツどころの騒ぎじゃないぞ。
私は冷や汗が止まらなかった。
「ノルバスク、お前は知ってたのか?」
私はノルバスクに声をかけた。
「いや、今初めて聞いた。あいつが国王を降りたら次は私かと思っていたのだが、エアハルトとは全くノーマークだった。エアハルトはかなり自由な思想の男だ。あんなのが国王になって大丈夫か? そりゃカールハインツよりはましだけどな」
「首を縦に振りそうか?」
「いやわからん。その前にみつかるかどうか」
「ミカルディスが探すなら見つかるだろう」
「だな」
私達が困り顔で話していると、メドレニックてミカルディスがやってきた。
「よぉ、エアハルトが見つかったぞ」
さすがミカルディスは仕事が早い。
「こっちへ向かってる。エルには話はついたのか?」
つくわけないだろう。
「いやまだだ。とりあえず王宮に呼んだ」
私は説得などできない。
「説得はお前たちがしてくれないか? 私は無理だ」
私はため息をついた。
エル、もう諦めろ。諦めてくれ。
ミカルディスとメドレニックが手を組んでお前とエアハルトを推している。私は魔法では誰にも負けないが、あいつらのように狡猾老獪ではない。私ではあいつらには太刀打ちできないんだ。
エルもう無理だ。諦めろ。
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