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嘘だ(カールハインツ殿下視点)
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父上からミレーユの罪を全て聞いた。
私が信じないかもしれないと、自白剤を飲ませるところから魔道具で録画していたそうで、全ての映像を見せられた。
「あたしが幸せになって何が悪いの! 母さんもバカよ。あんな男に何も言わないで愛人のまま市井で平民の暮らしなんてあり得ない! あの女さえいなきゃ、母さんはあの男の後妻になれる。そしたらあたしは男爵令嬢よ」
ミレーユに似ている別人なのではないのか? 私は気持ちが悪くなってきた。
「だからあたしはあの女が乗っている馬車に細工した。細工しただけよ。馬車は勝手に事故を起こして乗っていたあの女が死んだだけ。あたしは殺してない」
なんてことだ。ミレーユがそんなことをするなんて。それに話し方もいつもの可愛い感じじゃない。これがミレーユの本性なのか?
「虐め? 虐められてなんかないわよ。だってその留学生とはちらっとすれ違ったくらいで顔も覚えてないよ。キャラ被ってるし邪魔だったの。殿下はバカだからあの女のことも気になってるみたいだったし、早く排除してかないとあっちの方が身分が上だからヤバいじゃん」
嘘だ。あの可愛いミレーユがこんなことを言うなんて。
「でもさ、いちばんうっとおしかったエルって奴が簡単に死んでくれてヤッタァー!と思ったよ。殿下はまるでマザコンみたいにエルエルってウザかったもん。エルさえいなきゃ殿下はあたしの言いなり。これでこの国はあたしのものよ。ドレスだって宝石だって買い放題。贅沢できる。殿下なんてチョロいから上目づかいで目をうるうるさせて腕を絡ませて胸を押し付けりゃ赤い顔をしてなんでも言うこと聞いてくれる。一発ヤッタらもっと簡単に言うこと聞くと思ったけど、ビビってヤル甲斐性もなかったわ。エルは閨事は教えてくれなかったんだね。いくらでもあたしが教えてやるのにさ。あははははは」
私は目の前が真っ暗になった。
嘘だ。信じたくない。ミレーユがそんなことを言うわけがない。
「魅了の術は会わなければ発動しないようだ。しばらくここにいたら術が解けるだろう」
父は冷たい目で私を見下ろしている。
「エルフリーデを切ったこと一生後悔するんだな。エルフリーデはもう帰ってこない」
エルなんてもういい。ミレーユのことを良く言わないエルはいらない。私はミレーユがいればいいんだ。
父上の言うことなんか嘘だ。あんなの作り物だ。ミレーユがあんなこと言うわけないし、ミレーユは天使のように可愛いんだ。父上は嘘つきだ。
この貴族牢に来てから10日が過ぎた。
私は自分が取り返しのつかないことをしてしまったとようやくわかった。
あの日、初めてミレーユに会った時、可愛いと思った。その瞬間私はもうミレーユしか見えなくなった。
今思えばそれが術が発動するきっかけだったのだろう。
あのミレーユの自白映像を見て吐いた。
なんでこんなゲスイ女を正妃にしようと思ったのだろう。
ハイデマリー嬢に酷いことを言ってしまった。
国に抗議しなくてよかった。抗議のやり方も私はわからない。
エルがいないと何もできない。
エル助けてよ。私はどうすればいい。
エルに会いたい。エルなら私を助けてくれる。
私は貴族牢の外にいる騎士に声をかけた。
「エルに会いたいんだ。エルを呼んでほしい」
「殿下、何をおっしゃっているのですか? キシロカイン公爵令嬢は少し前にお亡くなりになりましたよ。殿下も葬儀に参列されたのではありませんでしたか?」
エルが死んだ? エルが? エルが死んだ……。
私の頭の中に魅了の術にかかっていた時の記憶が流れ込んできた。
エル……。
「うおぉ~~~~~!」
「殿下、大丈夫ですか? 殿下! 殿下!」
私だ私がエルを殺した。エルを殺したんだ。
私が
私が
エル。エル。エル。
ー騎士視点ー
殿下に「エルを呼んできて」と言われたのでお亡くなりになったとお伝えしたら、急に大きな声を出して叫び、倒れた。
どうしていいのかわからないので医師を呼び陛下にも知らせた。
殿下は何かショックなことがあり、心を閉ざしてしまったようで記憶がなくなってしまったらしい。
やはり、婚約者が亡くなったのがショックだったのだろうか。
自分が誰かもわからないようだ。
しばらくして殿下は王太子ではなくなった。
王妃とともに南の領地にある別邸に移った。陛下もあとから行くらしい。
この国はどうなるのだろう?
私が信じないかもしれないと、自白剤を飲ませるところから魔道具で録画していたそうで、全ての映像を見せられた。
「あたしが幸せになって何が悪いの! 母さんもバカよ。あんな男に何も言わないで愛人のまま市井で平民の暮らしなんてあり得ない! あの女さえいなきゃ、母さんはあの男の後妻になれる。そしたらあたしは男爵令嬢よ」
ミレーユに似ている別人なのではないのか? 私は気持ちが悪くなってきた。
「だからあたしはあの女が乗っている馬車に細工した。細工しただけよ。馬車は勝手に事故を起こして乗っていたあの女が死んだだけ。あたしは殺してない」
なんてことだ。ミレーユがそんなことをするなんて。それに話し方もいつもの可愛い感じじゃない。これがミレーユの本性なのか?
「虐め? 虐められてなんかないわよ。だってその留学生とはちらっとすれ違ったくらいで顔も覚えてないよ。キャラ被ってるし邪魔だったの。殿下はバカだからあの女のことも気になってるみたいだったし、早く排除してかないとあっちの方が身分が上だからヤバいじゃん」
嘘だ。あの可愛いミレーユがこんなことを言うなんて。
「でもさ、いちばんうっとおしかったエルって奴が簡単に死んでくれてヤッタァー!と思ったよ。殿下はまるでマザコンみたいにエルエルってウザかったもん。エルさえいなきゃ殿下はあたしの言いなり。これでこの国はあたしのものよ。ドレスだって宝石だって買い放題。贅沢できる。殿下なんてチョロいから上目づかいで目をうるうるさせて腕を絡ませて胸を押し付けりゃ赤い顔をしてなんでも言うこと聞いてくれる。一発ヤッタらもっと簡単に言うこと聞くと思ったけど、ビビってヤル甲斐性もなかったわ。エルは閨事は教えてくれなかったんだね。いくらでもあたしが教えてやるのにさ。あははははは」
私は目の前が真っ暗になった。
嘘だ。信じたくない。ミレーユがそんなことを言うわけがない。
「魅了の術は会わなければ発動しないようだ。しばらくここにいたら術が解けるだろう」
父は冷たい目で私を見下ろしている。
「エルフリーデを切ったこと一生後悔するんだな。エルフリーデはもう帰ってこない」
エルなんてもういい。ミレーユのことを良く言わないエルはいらない。私はミレーユがいればいいんだ。
父上の言うことなんか嘘だ。あんなの作り物だ。ミレーユがあんなこと言うわけないし、ミレーユは天使のように可愛いんだ。父上は嘘つきだ。
この貴族牢に来てから10日が過ぎた。
私は自分が取り返しのつかないことをしてしまったとようやくわかった。
あの日、初めてミレーユに会った時、可愛いと思った。その瞬間私はもうミレーユしか見えなくなった。
今思えばそれが術が発動するきっかけだったのだろう。
あのミレーユの自白映像を見て吐いた。
なんでこんなゲスイ女を正妃にしようと思ったのだろう。
ハイデマリー嬢に酷いことを言ってしまった。
国に抗議しなくてよかった。抗議のやり方も私はわからない。
エルがいないと何もできない。
エル助けてよ。私はどうすればいい。
エルに会いたい。エルなら私を助けてくれる。
私は貴族牢の外にいる騎士に声をかけた。
「エルに会いたいんだ。エルを呼んでほしい」
「殿下、何をおっしゃっているのですか? キシロカイン公爵令嬢は少し前にお亡くなりになりましたよ。殿下も葬儀に参列されたのではありませんでしたか?」
エルが死んだ? エルが? エルが死んだ……。
私の頭の中に魅了の術にかかっていた時の記憶が流れ込んできた。
エル……。
「うおぉ~~~~~!」
「殿下、大丈夫ですか? 殿下! 殿下!」
私だ私がエルを殺した。エルを殺したんだ。
私が
私が
エル。エル。エル。
ー騎士視点ー
殿下に「エルを呼んできて」と言われたのでお亡くなりになったとお伝えしたら、急に大きな声を出して叫び、倒れた。
どうしていいのかわからないので医師を呼び陛下にも知らせた。
殿下は何かショックなことがあり、心を閉ざしてしまったようで記憶がなくなってしまったらしい。
やはり、婚約者が亡くなったのがショックだったのだろうか。
自分が誰かもわからないようだ。
しばらくして殿下は王太子ではなくなった。
王妃とともに南の領地にある別邸に移った。陛下もあとから行くらしい。
この国はどうなるのだろう?
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