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三章 二年生 特級魔法使い

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 『使い魔』の授業がある。これは珍しく、オリバー・ローガン・リヴィア・アイリス・ギネが授業を受けていた。

 この授業はその名前の撮り、『使い魔』を召喚する授業である。同じグループになった私達は、講習を受けた後に早速実践の為に魔法陣を紙に書いていた。今回やるのは初級編である。なので一番力の弱い奴を呼ぶ。ちなみに使い魔の最上級に位置しているのは、私の心臓にいる精霊さんである。まだ私は会った事も無いのだけれど。

「わたしくし、使い魔というのに憧れていましたの」

 リヴィアが頬を染めながら魔法陣を描いている。

「昔、呼んだ童話の本にとても素敵な使い魔が出て来たんですよ」

「あ、おれそれ知ってるー『ルージと魔法の精』だろ。当時すっげー流行って、近所の子達もみんなあのごっこ遊びしてたんだよな」

 アイリスが綺麗に魔法陣を描いている。

「へー」

「リヴィアもよく、ぬいぐるみに話しかけてたよね」 

 ローガンが、にやりと笑う。

「ち、小さい頃の話しです……!」

「ぬいぐるみって、寮のベッドに置いてある奴?」

 リヴィアのベッドの枕元にはいつも、小さいクマぬいぐるみが置かれていた。落ち込んでいる時は、たまにそれを抱きしめている彼女の姿が見られた。

「そうですわ……」

 リヴィアの顔がますます赤くなっていった。

「よし、できた」

 オリバーが魔法陣を書き終わる。出来栄えを眺めた後に、テーブルに置いて手をかざす。

「魔力の囁きを聞け、僕の声に応えて欲しい。トゥイング」

 詠唱の後に、魔法陣に魔力が流れる。光が溢れた後に、オリバーが手のひらを離すと魔法陣の中央からぴょこと緑の物体が顔を出した。風の精霊のようだった。

「まぁ、かわいい!!」

 リヴィアが大きく声をあげると、びくついた風の精霊はオリバーの手の向こうに隠れてしまった。

「へー、これが僕の使い魔か」

 オリバーは嬉しそうに、その姿を見ていた。

「それじゃ、俺も召喚するかな」

 ローガンが、紙に手をかざす。

「魔力の囁きを聞け、俺の声に応えて欲しい。トゥイング!」

 同じように光が溢れた後に、オリバーのと色違いの黄色い精霊が現れた。

「ローガンのもかわいいですわねぇ」

 リヴィアがにこにこして、見ている。ローガンはその精霊を指でつつく。

「へぇ、こんな手触りなのか」

 つつくと、雷の精霊はローガンの手を押し返していた。精霊によって性格が違うらしい。

「おれも召喚するぞー!」

 アイリスが紙に手をかざして詠唱する。終わると、紙の上にごっつい岩の固まりの精霊がいた。たぶん土の精霊だと思う。何故か心無しか、彼女の父親に似ていた。

「おー! よろしくなぁ!」

 アイリスが、その子を肩に乗せて話している。

 ギネもそれに続いて召喚した。ギネの精霊は雪の精霊で帽子をかぶっていた。最後に私も召喚した。

「魔力の囁きを聞け、私の声に応えて欲しい。トゥイング…!」

 唱えた瞬間に私の心臓が突然高鳴り始めた。手の平から膨大な量の魔力が紙に注ぎ込まれる。小さな紙の魔法陣が強烈な力を発して、辺りの物を飛ばす。正直、ヤバイと思った。魔法陣から何かが出て来ようとした後に、紙は燃え尽きた。

「…………」

 嵐が去った後に、みんなが神妙な顔で私を見ていた。私の鞄に入れた、連絡手帳の石が点滅している。私はうろたえながら、それを開いた。

『おい、今強大な精霊召喚の予兆を感じたぞ。どうした』

『すいません、使い魔の授業で実習を受けていたら出そうとしたみたいです』

『……わかった』

 私の肩に手が置かれる。

「スカーレットさんちょっと……」

 振り向くと、顔面蒼白な使い魔学の先生が立っていた。それを見て私も顔を青くした。



 授業の終わりに、私は先生と対面で話す事になった。自分ではうまく説明できなかったので、ライアン先生にヘルプを出した。すると先生は、私が特級魔法使いの大精霊を宿している事をうまく伏せながらどうにか言いくるめてくれた。しかし、今後私は使い魔学の授業は受けれない事になった。楽しみにしていた授業なので、残念だ。

 ライアン先生の研究室で説明して貰った。

「えっとね、つまり君の宿している大精霊も使い魔と一緒なんだよね」

「はい」

「それで、使い魔呼ぶ時の魔法陣は使い魔を呼ぶサイズによって大きさや詠唱が代わるんだ」

 私は頷く。

「普通使い魔は、召喚者の属性や育った土地の縁があるものが呼ばれる。君の場合は、大精霊を心臓に宿していたせいで彼が呼ばれたみたいだね」

「マジですか」

「ただ、召喚サークルの輪っかが小さくてつっかえて出てこれなかったみたいだけど」

 さっき、魔法陣の紙に半端に浮いていたのは彼の頭だったんだろうか。何度か出て来ようと浮いたり沈んだりしている内に、紙は燃えた。燃えて良かった。

「これは俺の落ち度だよ。まさか、短い詠唱で精霊が呼び出せるとは……うぅん。クロエに話しを通しておくから、使い魔の使い方も彼女に習うと良い」

「ありがとうございます」

 せっかくみんなと同じ授業だった使い魔学が取れなくなるのは寂しいけど、まぁ仕方ないだろう。代わりに私は、その時間に空いていた『料理』 の授業を取る事にした。将来の為に必要だしね。

 それにしても、私の心臓に宿ってる大精霊っていったいどんな奴なんだろうか。いずれ召喚して、じっくり見てみたい。





つづく

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