青眼の烏と帰り待つ羊

鉄永

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6部

第二話

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 ちひろは、生のことが好きだ。
 それは、生と暮らし始めたころとは、また違う「好き」だった。
 ちひろは生の帰りを待ちながら、ソファに寝転がって顔をうずめ、生の香りを堪能する。
 生は香水をつけることがあるので、生が寝床にしているソファには、生の香りと香水の香りが混じった、ほんのり甘い匂いがして、生の隣で寝ているようでどきどきするのだ。
 そのまま微睡んでいると、玄関から生が帰ってくる音がして、ちひろはガバリと身を起こす。
 玄関まで走れば、疲れた様子の生が「ただいま」とちひろに微笑んで立っている。
 ちひろもにっこり笑って「おかえりなさい」と返す。
 さて、こういう疲れている時の生は、まずお風呂だ。ちひろは「コートかけとくから、お風呂どうぞ」と生の上着を受け取ろうと近寄る。
 言われるまま、ちひろにコートを渡そうとする生が、ふと不思議そうな顔をした。
「ちひろ、外に出た?」
 心当たりのないちひろは、受け取ったコートを手にして瞬きをする。
「出てないよ。どうして?」
「や…なんか…ううん…」
 生は考えるように眉を寄せ、少しだけ上体を倒し、ちひろの背中を覗き込むように顔を寄せた。
「ちひろじゃない匂いする」
「そう…?」
「お菓子でも作った?」
「作ってないよ」
 ちひろは自分の腕を嗅いでみるが、いまいちわからない。
「私、どんな匂いするの?」
 生は体勢を戻し、小首を傾げる。
「ちょっと甘い…みたいな。いつもと違う」
「そうじゃなくて、いつもの。普通のときの」
「いつも?いつもは…普通に、シャンプーとか?」
 もう慣れちゃってよく分からないけど、と生は思い出すように少し目を斜め上に揺らしながら言う。
 ちひろはへぇ、と頷く。
 ちひろが最近使っているシャンプーやボディーソープはシトラス系のものなので、甘い香りとは少し違う気がする。
 つまり、この家の中で過ごす中で思い当たる甘い香りの出どころは一つだ。
「いくは甘い匂いするから、それじゃない?」
「俺?」
「そう」
 ほら、とちひろは生のコートを差し出す。
 生はもう一度上体を倒し、コートを軽く嗅いでから、ちひろの髪の近くですん、と軽く息を吸った。
 少し恥ずかしくてちひろはくすくす笑いながら、「どう?」と聞く。
「んん…ちひろ、俺の香水つけた?」
「ううん、つけてないよ」
「じゃあなんで?」
「多分、ソファかな」
 ちひろの返答に「ソファ?」と生は眉を寄せてから、ああ、と納得したように頷く。
「成る程。ソファで休憩してたんだ」
「うん、お昼寝」
「お昼寝は別にいいけど、ソファで寝ない」
「えっなんで?」
「ちひろが体痛くなるから。…ベッドじゃだめ?」
「ベッドはだめ」
「どうして?」
「あれは夜に寝るところだから。寝巻きじゃなきゃだめ」
「…そっか…」
 生はいまいち腑に落ちない顔をするが、「風邪ひかないようにね」と言って風呂場に向かった。
 ちひろはそれを見送って、コートをクローゼットにかけに行く。
 ハンガーを手に取る前に、ちひろは腕の中のコートに鼻を寄せる。
 生の香水の甘い匂いが襟元に微かに残っている。
 ちひろの髪の香りを確かめる生の顔の近さを思い出し、湧き上がる嬉しさと恥ずかしさに上機嫌になりながら、ハンガーにコートをひっかける。
 そして、かかっている服の少なさに、そういえば、とちひろは仕舞っていないタオルや洋服たちを思い出した。
 リビングに戻ると、やはり畳んだまま放置された洗濯物たちが並んでいる。
 自分のものを寝室に仕舞い、残りのタオルを片付けるために、ちひろはそっと脱衣所に入った。
 持ってきた洗濯物を収納し、一息つき、摺りガラス状に影を写す風呂場の扉を眺める。
 普段はものの数分で上がってくる生だが、今日は疲れているからか、まだしばらくは中にいそうだった。
 ちひろはそのまま、聞こえてくる水音に耳をすませる。
 水が浴室内と生を打ち、排水溝に流れていく音、石鹸の匂い。
 今日は怪我をしていないだろうか。どんな風に外で仕事をしてきたのだろうか。
 ちひろはそんなことを考えながら、扉の影を目で追う。
 シャワーの音が止み、扉に手がかけられる気配がして、ちひろははっと我に返った。
 大変だ、急いで出なければ、いや、やましいことをしていたわけでは無いし、逆に意識しているように思われるかもしれない。
 ちひろはあわあわとその場で回る。
 そして、生が風呂場から出たときに見えたのは、腕で顔を隠して明後日の方向に体を逸らせているちひろだった。
「…」
「み、見てないので」
「…」
「見てないので…!」
 ちひろはそのまま後ろを向き、腕を顔から外さないよう、奇怪な動きで脱衣所を出た。
 後ろ手に扉を閉め、気まずさで上ずりながら脱衣所の外から生に話しかける。
「えっと、お水いる?」
「ううん、大丈夫」
「またすぐお仕事行く?」
「いや、今日はもう店じまいだよ。だからゆっくりしようかな」
 生がいつもの様子なことにちひろは「そっか」と息を吐く。
 そして、夕飯の準備をするべく、小走りで台所へ向かったのだった。


***


 ちひろが遠ざかっていく音を聞きながら、いつからいたんだ…と生は苦笑いしてバスタオルを取り出す。
 水気を拭き取り、上下黒の部屋着を纏って、髪を結ぶ。
 服とタオルはまとめて洗濯機に入れて乾燥までのコースを選択して、スイッチを押して脱衣所を出た。
 のんびりと荷物を片付け、スマホを充電し、リビングへ向かう。
 香りから察するに、今日は和食らしい。
 キッチンに立つちひろに「お待たせ」と声をかけると、ちひろは「あ、ご、ごはん、もうできるから、ドウゾ…」と汁椀にご飯をよそおうとして、あわあわと飯椀を持ち直す。
 風呂上がりで気怠い生は、その様子に突っ込むこともなく、へらりと笑いながら「ありがと」と数粒白いご飯の浮いた汁椀と飯椀を受け取った。
 二人でテーブルに着き、手を合わせる。
 卵焼きと茄子の味噌汁、餡かけ豆腐にいんげんの胡麻和え、白ご飯の並ぶ食卓から、生は迷うことなく卵焼きの乗った皿に箸を伸ばし、その黄色の表面に箸を入れて一口大に割る。
 黄身と白身がしっかりと混ざって均一に火の通った卵焼きを口に含めば、出汁と卵の香りがして、噛むとほんのり甘い味付けが口の中に広がり、思わず顔が緩む。
 ちひろはだんだんと生の食の好みを把握してきているらしい。
 視線を感じてちひろを見ると、むずむずと上がりそうな口角を引き締めようとしているのが分かった。
 「おいしいよ」と言えば、引き締めていた表情がとろけるように解けた。
 その後は黙々と、しかし穏やかに食べ進め、皿の上はすっかり無くなった。二人で「ごちそうさまでした」と手を合わせる。
 その後、洗い物をして、机を拭き、生は黒い水面を薄茶色になるまで甘くしたコーヒーを、ちひろは薄い色の緑茶を、ソファに並んで座りながら飲む。
 テレビを付ければ特番で映画を放送していて、ああ、そういえば週末だったのか、と思い出す。
 舌を火傷しないように時間をかけてコップの中身を空にして、生はソファに深く座って片脚を乗せる。
 そのまま、若かりし頃のハリウッドスターがバイクの後ろにヒロインを乗せて走る画面を眺めていると、うとうとと眠気が襲ってきた。
 立ち上がるのが億劫になる前に、すっかり冷めたコップの残りをあおる。
 そして、どちらからともなく寝る準備を始め、いつものように生はソファで、ちひろは寝室で眠った。
 生はその夜、人の気配に意識が浮上し、薄く目を開いた。
 近くから聞こえる静かな寝息に、そっと首を回すと、穏やかな寝顔でソファにもたれながら眠るちひろが見えた。
 寝室に行くのは見届けたはずなので、わざわざ起きだしてここで寝たらしい。眠れなかったのだろうか。
 生はちひろを抱き上げる。
 浮遊感で起きたのか、ちひろはむずがるように生の首に腕を回してきた。
 ちひろからほんのりと清涼感のある石鹸の香りがする。
 そして、その石鹸の下に隠れたちひろ自身の甘い肌の香りを、生は脳から追い出しながら、寝室の扉を開ける。
 そのままちひろをベッドに下ろそうとするが、ちひろが腕を回したまま離れない。
「ちひろ、ベッドついたよ」
 軽く背中を叩いて知らせるが、やはりちひろの腕が緩まる気配は無い。
「…ベッドでしょ…?」
「うん」
 ぶら下がるように生の首に腕を回すちひろは、生をベッドに引き込むように、回した腕を強める。
「…ちひろ…」
「ふふ…、うん、ソファじゃなくて、ベッドでしょ?」
「そうだよ」
 あくびをしながら嬉しそうにクスクス笑うちひろに、生は眉を下げながら、仕方なく自分もベッドに入る。
「ほら、おやすみ」
 布団をかけてやり、寝かしつけるように撫でる。
 ちひろは頷いてようやく腕を緩める。
 その隙に腕から抜け出ようとするも、生はちひろに服を引っ張られて止められる。
「…、いく」
「なぁに」
「もうちょっと一緒に、ごろごろ…」
 あわよくばいちゃいちゃ、ううん、それはまだか…とむにゃむにゃ言うちひろに、生は勘弁してくれと天井を仰ぎたい気持ちになった。
 溜息をついて腕を伸ばし、カーテンを少しめくると、まだ外は暗い。
 生は諦めてベットに入りなおす。
 嬉しそうに擦り寄ってくるちひろの体温をできるだけ意識しないよう、生は自身の睡眠欲に集中する。
「いく、いく…ちゃんと、言うね」
「ん?」
 生の胸元でもごもごと呟くちひろを見る。
「もやもや、いや、だから」
「…うん」
 明日の朝、どうやって何でもなかったような振りをしようとしていた生は、ちひろのその言葉に外堀を埋められる気配を感じた。
「あ」
 ちひろは思い出したように声を上げると、よたよた布団を抜け出し、寝室の扉へ向かう。
 その様子を何事かと目で追うと、ちひろはそのまま寝室の扉の鍵を閉めた。
 そのまま戻ってきて、ちひろはまた布団に入る。
「…どうしたの?」
「ん、えっと」
 ちひろはへにゃりと笑いながら答える。
「どっか、行かないように」
 とうとう逃げ場のなくなった生は、それを聞いて目を丸めたあと、眉を下げて笑った。
「そっか…」
「おやすみ、生」
「おやすみ、ちひろ」
 ほどなくすると、ちひろは寝息を立て始めた。
 生はちひろの顔を眺める。
 ここまでされては、流石に逃げられない。
 むしろ、ここまでお膳立てがされなければ、相手の想いを受け止める覚悟が決まらない自分もどうかとは思うが。
 崖の前に立たされたような気持ちに、生は唯一の出口である扉を見る。
 内側からかけられた部屋の鍵は、ただ、生の選択を待っている。
 生は扉から目線を外し、腕をちひろの体に沿わせ、目を閉じた。


***


 ちひろは、ウトウトと意識を揺蕩わせながら目を開く。
 普段とはどこか違う目覚めの気配に、首を回せば、すぐ近くに生の顔があり、ちひろはガバリと身を起こした。
 もしかしてあまりにも欲求不満で、生を襲ってしまったのだろうかと布団を剥いで中を確認する。
「服、ある…」
 はぁ…と、安心したような残念なような気持ちで、ちひろは溜息をつく。
 けれど、どうして二人で寝ているんだろうと部屋を見渡して、ちひろは徐々に思い出した。
 そうだ、ちひろは昨日、寝室の扉に鍵をかけたのだ。
 何のために?
 生を、この場所から出さないように。
 そうだ、自分は、生に…。
 はっきりと思い出した記憶に、ちひろは頬を火照らせる。
 そっと生を見ると、いつの間に起きていたのか、こちらを見ている生とばっちり目が合った。
「…お、おはよ、生」
「おはよ」
「えと、…運んでくたんだよね、ありがと」
「どういたしまして」
 生は肘ついて体起こし、髪をかき上げる。
 掛け布団を肩から下ろして、髪を解いて結び直す生に、ちひろも自分の髪の毛を整えたり、意味もなく掛け布団を手で握りなおす。
「えっ、と…」
「うん」
 息を吸って顔を上げれば、生の青い瞳に真正面から捉えられ、目と口をきゅうと引き締めてから下を向く。
 生は、昨晩のちひろとは違う消極的な様子にくすくすと笑う。
「今のどういう表情?」
「す、すきだなぁって、…あ」
 思わず口からまろびでた、好意を伝える言葉に、ちひろはやってしまった、と口を押えるが、もう遅かった。
 タイミングを予想していなかったのか呆けた表情になる生に、半ばやけくそになりながら、ちひろはもう一度言った。
「す、好きだなって!顔です!」
 こんなふうに言うつもりじゃなかったんだけど、としどろもどろになるちひろに、我に返った生はふふ、と笑い声を漏らす。
「そっか。ありがと」
 ちひろは顔上げ、不安そうな表情をする。
 生の返答が、肯定にも拒絶にも受け取れたからだ。
 はっきりとした意思を知りたくて、ちひろはおずおずと問いかける。
「…いくは、そういうんじゃない、から、困る?」
 改めて正面に相対した生の顔には、ちひろの好きな穏やかな微笑みが浮かべられていた。
「…んーん」
「わ、わたしのこ、と。好きになって、くれる?」
「…」
 生はじっとちひろを見てから、顔を寄せてくる。
 ちひろは突然のことに動けなかった。
 そのまま生は、ちひろと鼻が触れる直前まで近づけて、ぴたりと止まると、囁くように言った。
「…もう、ずっと」
 ふ、と漏らされた吐息を感じ、ちひろの肌が軽く粟立つ。
「好き」
 ちひろは一拍置いてから、ぶわりと体の熱が上がるのを感じた。
 目を見開いて茹で上がるちひろの頬に、生は自身の頬を擦り寄せてから離れる。
「大事、だいじ」
 ふふ、と笑う生に、ちひろは恥ずかしさやら嬉しさで声を出せないまま、ぽろりと涙をこぼす。
 生が目尻に指を沿わせてそれを拭うと、金縛りから解けたようにちひろは体を震わせてしゃくりあげた。
「ごめ、わたし。嫌って言われるの、こわくて…ずっと、言えなくて、」
「…うん」
「でも、やっぱり、好きで…生のこと、好きだから。…あ、ありがと…」
「んーん、俺も、ありがと」
 そして、生は何かを決心したように一つ頷いて、言った。
「ちひろ、引越し、しようか」
「ひ、引っ越し?どこ、に?」
「ゆきのとこの近く」
「え、だ、って、住むとこ…」
「取り敢えず、アパート借りよう」
「おしごと、は」
「しばらくはフリーターかな」
 実はいま採用結果待ちの所が雇ってくれそうだからさ、と言い、生は言葉を切る。
「そう…あのね、準備は、出来てたんだ」
 その準備が何を指すのか、ちひろはすぐに分かった。
 きっとそれは、ちひろの願いだった、礼と生と自分の、三人での生活のことだ。
「でも、俺だけじゃ、これからはもう、ダメだから」
 生はそこまで言ってから口を閉じ、もう一度口を開くと、一音一音を噛みしめるように言った。
「ちひろ、…俺と一緒に、生きて」
 ちひろは生の顔を驚いた表情で見てから、顔を歪める。
 生がちひろのことを大切に思ってくれていることは分かっていたけれど、きっと生はちひろと共に歩もうとは言ってくれないだろうと、ちひろは思っていた。
 たとえ想いが通じても、生は自分と家族になる選択をしないかもしれないと、ちひろは覚悟していた。
「う、うん…うん。…いくと、いくと一緒に、生きたい」
 想いが溢れてまとまらず、舌をもつれさせながら、ちひろは必死に言葉を紡ぐ。
「嬉しい、うれしい…。いく、が、わたしに、…わたし、を」
 ちひろは生の手を握り、額に当てる。
「私をとなりに、ほしいって、おもってくれ、て。うれし…い」
 生は詰まりそうになる喉に唾を通し、ちひろの頭を抱き込んだ。
「うん。俺も、嬉しい」
 ぐずぐずと泣きながら「いく、好き。好きだよ。あいしてる…」
 生は微かに微笑んで、ちひろの柔らかい髪の毛に擦り寄り、米神に唇を落とした。
「うん、愛してる」



***


生はちひろを抱きしめながら、嬉しさと苦しさを示す両極端の本心に、引きちぎられそうになっていた。
生は、自分の愛を相手に晒すことで、相手を不幸にすることが、恐ろしい。
それは、自分が自分の母親のようになってしまうのではないかという恐れだった。
ちひろのことは好きだ。
けれど、その「好き」に欲が混じると、生は耐えられなくなる。
ちひろの「好き」はその欲が混じった、恋人や夫婦に発展するものである。
本来ならばそれが常識であり、ちひろに想いを告げた以上、生は自分の厄介なトラウマと正面から向き合っていかねばならない。
覚悟を決めるために一睡もできなかった生は、ちひろが慌てて貞操を確認する様子もばっちり見ていたため、トラウマの克服は急務だった。
折り合いがつけばいい。
昔の記憶と、今と、それぞれが別物であると。
そして、相手を愛情で傷つける自分ではないと、自分自身を許せるように。





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