テューリンゲンの庭師

牧ヤスキ

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エリザベスの訪問

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「カスパル、その顔はシムと仲直りしたのね?」


エリザベスは嬉しそうにカスパルの横へ座る。
カスパルは機嫌良さげに、にっと口角を上げた。



「はい、シムは私の目を見て話しくれました。」

そう嬉しそうに話すカスパルに、エリザベスはあら、と驚きながらそれを聞いた。

「それは良かったわね。
シムはあなたをもう怖がったりしなかったのね」

エリザベスは母の笑みで頷いた。

お互いに馬鹿正直そうな人間だ、気は合うのではないかと思っていたのだ。
見事に2人の距離は縮まっている。エリザベスはそんな2人が愛しくてたまらなかった。


「明日また改めて私に花の説明をしてくれるんです。これも彼からの申し出ですよ。」

カスパルは軽快にお酒を口に入れていく。普段こんなににこにこしているカスパルも中々珍しい。

晩餐会で大広間に散らばる子息達は笑顔を固まらせた。

エリザベスは頬を緩めるカスパルに、意地の悪い笑みを浮かべて「まるで恋に浮かれる男の様にヘラヘラしてるわねえ?」と脇を肘でつついた。

カスパルはぎょっとし瞬時に眉を寄せエリザベスを睨みつける。

「何を言い出すんです!
野郎同士です!恋とは悪い冗談だ」



「その通りよ。冗談なんだから笑い飛ばすくらいでいいのに、必死になって…」

予想外に熱い批判にエリザベスは暑苦しそうに手を振った。
そんなエリザベスにカスパルはさらに言葉を重ねようとした時に執事が近寄りエリザベスへ礼をした。


「王妃陛下、晩餐会の最中で恐縮なのですが、明日も朝から視察があります故、今晩はこの辺で…」

エリザベスは執事に向き直り頷いた。

「そうね、客間へ戻るとしましょう。カスパルもそろそろお酒をやめて」

カスパルははい、とグラスを置き立ち上がった。











召使い達は大広間の端に立ちながら今夜の自分達の夕飯は豪勢だぞ、と残飯を眺めて考えていた。

そのうちの1人が大広間の大きな装飾の施された扉とは反対の、シンプルな作りをした小さな扉を開けて中へ入った。



中は細い石造りの廊下が続く。

ここは従業員のためのスペースで、ここにそれぞれの部屋や休憩室、調理室や倉庫も詰まっている。



召使いは慣れた足取りで2階に続くさらに細い木製の階段をすっと昇り、左端の扉の前に立ち扉を数回叩く。



「おいシム、今夜の夕飯は豪勢だぞ。」

扉の奥から小さくやったーと聞こえた後、布の刷れる音がしてしばらくたってからシムが出てきた。



シムは庭で作業をしすぎたせいでいつのまにか自室で寝落ちていた。
右頬によだれの後と机の後がくっきり残っている。

「なんだシム寝てたのかよ。

今夜は皆酒ばっかり呑んでたからな、ローストビーフも余ってるのさ。
行こうぜ」



召使いは自分の袖でシムの頬をとても乱暴に拭ってやりながら、ぼさぼさな髪を軽く整えてやる。

召使い達のシムへの対応は大体こんな感じで、もはや従業員達の弟と呼んでもいいような位置にシムはいる。
シムはそれを少し嫌がりながらも階段に向かった。


ギシギシと音を立てて下れば、既に大広間への扉から厨房までの廊下は召使いが忙しなく行き来をして既に慌ただしかった。
もう王妃陛下を含めた御一行は客間で休まれてるのだろう。

後片付けの後、彼等が残したご飯達はシムや他の従業員達のありがたい夕飯だった。
本来ならば従業員には従業員用の献立があるのだが昨日から続く宴に予算が割かれ、今だけ臨時で残飯処理をしているのだった。

シムは美味しいご馳走を待ちながら今日のことを思い返していた。





 
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