獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま

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アレスの失敗

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ベルギアが見えた。見えた瞬間、冷静さを失っていた己の迂闊さを猛省する事になった。

先頭を爆速していた馬を急いで止めると、後に続いていた他の団員達も怪訝な顔をしながらそれにならう。

「アレスどうした?ベルギアはもう…」

どうやらみんな気が付いたらしい、

遥か遠くに見えるベルギアの城門は硬く閉じられ、その門の前には多くの武装した兵士達がいるのだから。

「…まずいな。」

ダルムの一言に、皆押し黙る。つがいに会いたいが為に、ただ浮かれていただけなのだが、人族にとっては街を襲うかも知れない脅威として映っていたらしい。つがいに一刻も早く会いたい。だがこの街の領主がどの様な人物か分からない以上つがいの話は出来ない。乱暴な者だとつがいに思われるなんて、想像しただけで死ぬ。どうしたものか…本当にまずい事になった。

とりあえず、今度はゆっくり馬を進めていきなりの戦闘は避けるしかあるまい。

「ダルム…、どうするか」

「アレス…、アレ、団長の脳筋兄上がよくやる、とりあえず体を動かしたい衝動にかられて突っ走ってしまったという事にしますか」

「・・・そうだな。あれと同じだと思われるのは心外だが致し方ない。」

それだけでは心許ない。この国の騎士が1人でも追い付いて来てくれれば…
あの塀の向こうにつがいが居るのに、急いで来ても入れないとはもどかしい。




この時遠方と会話出来る魔道具魔伝話の存在を思い出していれば、あの脳筋だと言わんばかりの説明をしなくて済んだし、もっと、もっと早く街に入る事が出来た。もしかしたら身を焦がす絶望を味わう事もなかったかも知れない。
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