溺愛魔王は優しく抱けない

今泉 香耶

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アルフレドの術

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(夢で、泣き言、か)

 ならば、少しぐらいは聞かせてもらおうか、とアルフレドは思う。

 今、目覚めた彼女と話した時に、どうしたことかインキュバス側はざわつかなかった。彼女の寝顔を見ながらあんなに強烈な「抱きたい、孕ませたい」という思いをぐっと堪えていたのに、今は不思議と静かになっている。

(弱っている獲物は面白くないとでも言うのか? どうしようもないな、俺は)

 そっとリーエンの頭に手を当てる。触れなくても出来るが、触れる方がお互いの負担が少ない。アルフレドはインキュバスの能力を使って、リーエンの夢の中――夢を見ていなければ強制的に夢を見せるのだが――へ意識を侵入させた。

(ああ、本当だな。夢を見ている)

 アルフレドの能力で強制的に見ている夢ではない。つい今しがた眠りに入った彼女の無意識下で見ている夢の世界だ、と思う。白いもやがかかっていて何も見えない。が、彼女はそこにいた。

 リーエン自身が夢で見ている世界とアルフレドが見ている世界は完全に一致するわけではない。たとえば夢の中で木があったとしても、リーエンには明るい緑の葉をつけた木に見えていても、アルフレドには暗い色の葉をつけた木に見える程度の差はある。だが、リーエン本人と夢に入り込んでいるアルフレド自身については、お互いを明確に正しく認識できる。

 アルフレドは夢の中で自分の姿を彼女に見せない状態を作り出した。相当失礼なことではあるが、自分がいない状態で見ている彼女の夢を観察したかったからだ。だが、彼女から自分が見えないだけではなく、なんだか自分からも彼女の姿が不明瞭だ。こんなことは通常ないことで「おかしいな」と眉間にしわを寄せる。

(リーエンは、誰かと話しているな……)

 何故かよく見えないし、アルフレドが近付こうとすると阻まれる。それが、リーエンと話している「誰か」が夢に干渉している力だと感じ、アルフレドは舌打ちをした。自分以外の誰が彼女に干渉しているというのか。ああ、だからこちらからもなんとなく見えにくいと感じるのだろうか。

 夢の中のリーエンは、確かに彼女が言っていた通り何か泣き言を言って泣いて、それから、無理矢理笑った。あんなうわごとのように「夢で泣き言を言っている」と告げた直後に本当にそんな夢を見ているなんて、実はアルフレドが思っている以上彼女は日々に対してつらく思っているのだろうか。そう思えば心が痛む。

(……それにしても、誰だ。この干渉をしているやつは……外部からの干渉は感じないが、明らかに何かの操作をされているぞ、これは……)

 誰かがリーエンを通して、アルフレドの情報を得ようとでも思っているのだろうか。もしかして彼女が倒れたのも、これが原因かもしれない。アルフレドがリーエンにあまり会いに行っていない間に、反勢力がリーエンに何らかの術を施した可能性があるだろうか。いや、いくらなんでもそれはない。そんなことをされて見抜けないアルフレドではない。

(しかし、実際にこの白いもやや、彼女の姿がぼやけるのは他者の術のせいだ……具体的な干渉は……この白いもやのようなものが媒体になっているな。どうやってこれを作り出しているかはわからないが、これがあるから……)

 アルフレドは少しばかり力を使った。あまり夢の中で力を使うことはよろしくないと知ってはいたが、これではわざわざ夢の中を覗いた意味がない。白いもやは彼女の脳が作り出している何かだ。それを一時的に取り払えないかとアルフレドが僅かに魔力を送ると……。

 パンッ

 どこかでなにかが弾けた音。

 一瞬でその白いもやは消え去り、そして、リーエンの前に立っていたはずの誰かも消える。やり過ぎたか、と思った瞬間、夢の中の彼女がアルフレドを見つけ、驚いて叫ぶ。

「まあ! やっと、お顔が、見えました……!」

「……!?」

 白いもやが消えたのと同時に、アルフレドが「自分の姿をリーエンに見せないように」していた術も解除されたのだと気付くのが少しばかり遅れた。一体どういうことだ、と思うアルフレドに反して、夢の中のリーエンは嬉しそうだ。

「わたし、ずっと、ずっとあなたを思いだしくて……」

 リーエンはふわりと笑みを浮かべ、かと思えば、目の端にじわりと涙を滲ませる。彼女の言葉と様子から、アルフレドは自分が何をしでかしたのかをようやく察した。

「ちっ……!」

 喜んでいる彼女には申し訳ない話だったが、アルフレドは即座にもう一度自分の姿を消した。彼女が先程まで話していた相手の姿も突然消え、アルフレドも消え、夢の中のリーエンはきょろきょろと辺りを見渡している。アルフレドは姿を消しているだけで、まだ夢の中に「どうにか踏みとどまって」いた。

(駄目だ。戻さなければ……あれは……)

 さっき弾けたのは、過去の自分が張っていたプロテクトだ。

 彼女の目には見えないが、夢の中でアルフレドはだらだらと脂汗を額に浮かべ、呼吸も荒くなっていく。苦しい。やらかした。苦しいが、もう一度「あれ」を戻さなければいけない。プロテクトが解除されれば、それは術の取り消しと判断される。まだ早い。まだ、アルフレドは「取り消しによるペナルティを受ける準備が出来ていない」し、そんなものを彼女の夢の中にいる状態で受ければ、とんでもないことになる。

(今ならまだ夢の中で彼女の脳の判定が緩い。まだ俺の肉体にも影響は出ていない。戻すなら、今、ここでやるしかない)

 意識はリーエンの夢にありながら、肉体は当然外側だ。夢の中では苦しんでいるが、残されている本体にまだ「それ」は影響していないと感知し、荒い息をつきながらアルフレドは無音で呪文詠唱を行った。

「……っ……」

 ゆっくりとではあったが再び白いもやがリーエンの夢の世界に広がっていく。ああ、そうだったのか。このもやは「アルフレドを思い出させないための、認識阻害」そのものだ。

(気付いてよかった……! 気付かずに夢から抜け出ていたらきっと、俺もリーエンも……)

 そのもやにリーエンの姿も霞んで消えた瞬間、アルフレドは彼女の夢から脱出をした。眠っている彼女から手を離すと、夢の中で与えられたダメージをそのまま持ち帰ってしまったようで、体を斜めに仰け反らせて、どしん、と床に尻もちをついてしまう。

「ハッ……ハ……や、らかし、た……」

(夢の中に意識がある時にあんなものを解除したら、受け止めきれないだろうが……馬鹿野郎……!!)

 ようやく理解をした。あの白いもやに包まれてリーエンが話していた相手は、過去のアルフレドだ。

(干渉をしているやつは誰だと? それは、俺の術だろうが……間抜けにもほどがある!)

――やっと、お顔が、見えました――

――わたし、ずっと、ずっと思いだしくて――

 彼女の言葉は本心だろう。
 まさか、自分の認識阻害が彼女をこの年までずっと煩わせていたなんて。そんなことは思いもよらなかった。アルフレドは呼吸を整えて立ち上がると、念のためにとリーエンの額に手を置いて彼女に「既にかかっている」術の強化を施した。

 人間界であれば何度も1人の人間に継続的な術を掛けなおしたり強化することはよくないが、ここはもう魔界だ。彼女が、当時の自分を思い出さないようにと認識阻害を強化する。

(俺に関わる記憶を消そうとすると、それを定義するために一度認識阻害を解かなければいけないし、そうすればペナルティを喰らってひどい目に合う。今は、認識阻害の強化で凌ぐのが一番だ)

 夢でどんな泣き言を言っているのか聞こうと思ったらこの有様だ。彼女の泣き言を聞くことは叶わなかったが、彼女がずっと過去の自分のことを気にかけていたのだと知れたのは良かったと思う。

(妖精界に貸し付けた力が戻ってきたら、彼女の認識阻害を解いても耐えられるだろうし、いつか、覚悟を決めた方が良いのかもしれない)

 認識阻害を解除することは通常そこまで面倒なことではない。だが、人間界で魔力を使うことはあまり望ましくなかったし、当時のアルフレドは「魔力を使いすぎると巡礼は失敗」とされる立場だったため、魔力を必要としない、いささか劣悪な術を使ってしまった。それが10年を経てこんなことになるなんて。

 魔術と呪術は違う。魔術は魔力が必要だが呪術には魔力を必要としない、あるいは、必要だが魔力の代わりに「くべる」ものがあれば発動する。当時のアルフレドはまだ若かったし、この先自分と彼女の人生に接点はなくなると思っていたため、軽率に「ペナルティ」をくべた。

 本末転倒な話ではあるが「術を成功させるために、術の取り消し時に受けるペナルティ」を原動力として「くべた」のだ。ねじ曲がった構図になるが「魔力をくべれば、術を取り消した時に受けるペナルティは発生しない。だが、ペナルティを受けることを前約束し、そこで発生するエネルギーを原動力にすることで魔力をくべずに術を発動させる」という遠回しなことを行った。

 そうすることで「魔力を使わないで、魔力を使う」という状況を疑似的にアルフレドは作り出し、巡礼の失敗を回避した。あの頃、魔界に戻ってからことをヴィンス師に話したところ、しこたま怒られたがその反面「困ったことにその発想は天才だ」と褒められたことをアルフレドは覚えている。彼の「なかったことにする」能力の逆で「存在していない事象を既に存在したことにする」という発想にはさすがにヴィンスもお手上げだった。

(それが、こんなことになるとは)

 誰が予想出来ただろうか。

 アルフレドは苦々しい表情でリーエンを見る。
 10年間。外に魔力を漏らさずに継続した術を人間界で有効にし続けることは難しい。魔界ならば魔力が漏れても問題がないため、そんな複雑なことにならないが、人間界だと話は別だ。

 魔界は長年、人間に魔力を与えないように、魔力というものを解明されて手に入れられないようにするため、魔族が人間界に行くときにも厳重なルールを強いて来た。魔力を使うならば、一過性で魔力が残らないもの。継続するならば、魔力を漏らさないように厳重に保護をかけること。そして、人間に対して行使した場合は対象者の脳に「魔力を使われた」痕跡を残さないようにする。それの基本は記憶の消去だ。それは徹底されている。

 当時のアルフレドにしては、相当頑張った。頑張ったし、本来それで問題はなかったはずだった。行きずりのたった一晩共にいただけの少女への返礼をしただけだし、実際、彼女が魔界に来るまで何一つ問題なかったのだから、彼の諸々の選択は間違っていなかったのだ。だが、今となってはそれらすべてが足枷になる。

(そもそも、信じてもらえるのだろうか……10年前の祝福も、本当に心からのものだったのだと……)

 恨んでいるだろうか。あるいは、アルフレドが仕組んだことだと思われるだろうか。どう弁明をしても信じてもらえるような気がしなかったし、ペナルティを受けるにはアルフレドは少々弱っているため、今日までこうやってそのことを伏せて来たが、そろそろ限界なのかもしれない、と思う。

(その気になれば、あちらこちらに貸している力を即戻してすぐにでもペナルティを受けるぐらいは出来るが……)

 彼は歴代の魔王での中でも類を見ないほどの魔力と能力の持ち主だ。それゆえ、魔界ではなく妖精界に力を「貸付」るようなことも出来るし、今は魔界召集直後で高位魔族が後継者作りに専念出来るように、魔界の僻地にある冥界との境界の防御強化も魔王城に居ながらにして彼が行っている。師匠であるヴィンスが呆れていたように、転移石に新しい術式を組み込む作業は、アルフレドの「なかったことにする」彼だけが使える先払いシステムで信じられない速度で行われたし、そもそもそれら1つずつのことでも、アルフレドと同じレベルで行える魔族は魔界にはいない。

 魔界召集は魔界の「魔力濃度」が低下した時に発生するものだ。アルフレドが魔界にいるだけで本来そんなことはありえない。ありえないのだが、それではアルフレドが生きている間、高位魔族達は永遠に人間の女性を娶れなくなってしまう。そのため、彼は常軌を逸する魔力の半分を魔力濃度にカウントされないように『なかったことに』している。

 そう。先程のねじ曲がった構図と方向性は同じだ。彼は「半分の状態では魔力が足りない時に「なかったことにしたい分の魔力を使うことによって、なかったことにする」という道理が通らない魔力の運用をする。魔力量が規格外だと、その運用も他者には理解出来ない形になるらしく、様々な定義や前提をひっくり返す。

 ヴィンスはそれを「やめろ」というし、ダリルもやめとけと何度もアルフレドに言うが、こればかりはアルフレドにしかわからない苦悩があるのだから仕方がない。彼らは頭でわかっていても、現実的に「類を見ない魔力を持つ者」が持て余すほどの魔力のせいで生きづらいと感じる体感を知らない。魔力を切り売りし、半分欠如させ、そして体に負担を強いてでもなかったことにした方が「楽」だと彼は感じているのだから仕方がないではないか。

「いつだってそうだ……いつだって、俺は自分の魔力のせいで、不自由を強いられる……」

 だから、逆に言えば妖精界に彼の魔力を与えているのは、彼にしてみれば好都合だったのだ。いつだってそれは彼の心ひとつで取り返せるものだが、貸し付けている力の分、彼は手元にある魔力が減ってむしろ快適に生きている。

 それなのに、今度は魔力が必要だなんて。ままならない。まったく、うまくいかない……。

「……執務に戻ろう……」

 静かに寝息を立てているリーエンの寝顔を見て、ふ、と口端を緩めてから彼は寝室を出ていった。
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