もう二度と、愛さない

蜜迦

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出迎え③

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 ──剣術だけでなく、弓術や馬術の稽古にも励まれ、特に弓術は騎射はもちろん歩射では遥か先の敵を貫くほどの腕前
 ──恵まれたお立場であるのにもかかわらず、一般兵と同じように武具の手入れや馬の世話までされるとか
 ──あの日は間近でそのお姿が見れて本当に幸運でした!

 私から刷り込まれたレティエ殿下に関する情報を、興奮気味に話すルカスの足取りは軽い。

 「僕だって行きたかったのに……」

 ルカスの斜め後ろを歩くエリックは、兄に先を越されていた事実にわかりやすく落ち込み、小さな声で恨み言を呟いた。
 ちびっ子二人の先導で、父の部屋へと向かう。
 どうやらアベル様は、私たちが何時に到着するのかはわからないため、普段通り過ごして欲しいと御者に伝えたそうだ。
 しかしそれをよしとしなかったのがこの弟たちで。
 家人を集め、殿下の訪れを張り切って待ち構えていたようだ。

 「利発な弟たちだな」

 ルカスが口を開く度、殿下の唇は弧を描き、不敵な笑みを私に向ける。
 私はというと、身を固く縮こまらせ、早くこの時間が過ぎるのを待つだけだ。

 「ルカス。お前にその気があるのなら、今度は陰からみるのではなく、練習に参加するつもりでくるといい。部下に話を通しておく」

 「本当ですか!?」
 
 どうかいたいけな弟をたぶらかすのはやめていただけないだろうか。
 しかし最初に弟たちを誑かし、“カスティーリャの銀獅子沼”に嵌めたのは私なので、なにも言えないのが情けない。

 「あ、あのっ……!」

 喜色満面のルカスの横で、エリックはぷくぷくした小さな手を恥ずかしそうに、もじもじと擦り合わせていた。
 我が弟ながら、可愛いが過ぎやしないか。

 「エリック。お前も剣に興味があるのか?姉に付き添って修道院にいたから、てっきり慈善活動の方に関心があるのかと思っていたが」

 「ぼ、僕のこと、覚えていてくださったんですか……?」

 「ああ。そなたもルカスのように、姉から私の話を聞いていたのだろう?それなのに、出しゃばらずに修道院の子らに譲っていたな。いい心根だ」

 「あ……ありがとうございます……!」

 まさか、素性を隠すために弟を止めた自分の行為が、こんな結果に繋がるとは。
 さっきまでの落ち込みはどこへやら。
 いつも少し生意気な弟とは別人のように、エリックの笑顔は清く、そして瞳はきらきらと輝いていた。

 「それにしても……そなたたちの姉は、どうしてそれほどまでに私のことを知っていてくれたのだろうな?」

 天を仰ぎたくとも、仰いだ先にはこの男の顔がある。
 私は目を閉じ、ただ無心になれと自分に言い聞かせた。
 大丈夫。
 弟たちは私の味方だ。
 まさかそんな、あっさり売り渡すような真似は──

 「それは、姉さまがレティエ殿下のことが大好きだからです!」

 


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