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3.お荷物
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その頃には、オレは完全にお荷物になっていた。
アレスが挑むようなダンジョンの魔物はオレには強すぎて、アレスがオレを守ってケガする事が増えた。
オレは、必死にアレスに訴えた。
オレをパーティーから抜けさせて欲しい。
それか、このダンジョンに見合う仲間を見つけて欲しい、と。
だけどアレスは、オレをパーティーから抜けさせるのを何故か嫌がった。剣だって魔法だって微妙、何とか補助魔法はかけられるが、それだって微々たるものだ。そんなオレをパーティーに入れておくのは、負債でしかないのに。
仲間探しも、この高レベルに見合うソロの冒険者はなかなか居らず難航していた。
そんな折、アレスの名声は国中に響き渡り、魔王討伐に期待が膨らんでいた。
だから、わざわざ王様がアレスを王城に呼び出して激励し、同じく国中に名前が知れ渡っている、近衛騎士団長のミーナ、大いなる魔女アンリ、神の愛し子エレフィーナを、アレスのパーティーに入れると王命を下した。
みな、それぞれ違った分野の超一流で、凄い美女たちだった。それこそ、アレスの隣に立っても見劣りしない人たちだ。
さらに、期待を高めた王様は、魔王を討伐した暁には、王女であるオフィーリアと結婚させるとまで言い出したのだ。流石にその場では辞退したそうだが、王女は乗り気だったらしい。流石の美貌である。
それでもアレスは、オレをパーティーに入れたままだった。
オレの事を、表立って批判する奴も、裏で陰湿な事を言う奴もいた。アレスの名声が怖くて、実質的な被害を受けるのは少なかったが、それでもオレの精神を疲弊させ続けた。
新しく加入した三人は、生真面目、高飛車、世間知らずとなかなかのくせ者揃いだったが、実力は確かだった。
試しに潜ったダンジョンでは、連携こそ取れなかったけれど、個々の能力は素晴らしく問題無くクリアする事が出来た。オレが突っ立っていた事以外は。
もちろん、そこをミーナに突っ込まれたが、アレスは頑としてオレを置いておく事を譲らなかった。
その日の晩、アレスが寝た後でオレは三人が泊まる宿屋に呼び出された。
口火を切ったのは、生真面目なミーナだった。
「……で、えっと、何て言ったっけ、マルク?」
「メルクです」
「あ、そうそう、メルク。あなた、なんで勇者と一緒に居るの? お世辞にも、釣り合いが取れて無いよね。下手したら、死んじゃうよ」
ミーナが言いにくそうに言葉を発したので、この人はおそらく悪い人間では無いだろうと判断し、ここぞとばかりに頷いた。
「そう、そうなんです! どうか、オレをこのパーティーから追放するのに、協力してくださいっ」
そして、勢いのまま頭を下げた。
それには、三人共ビックリしたようだった。
「えっと、どういうことですの? 追放、というのは、穏やかじゃないですね」
オズオズとエレフィーナが聞いてくる。聞き方が優しくて、つい縋るように見てしまった。
「あなた達も、見ましたよね? アレスが、何故かオレをパーティーから抜けさせてくれないのを。オレは、ずっと、高ランクにあがったくらいから、ずっと言ってたんです。オレじゃお前に釣り合わない、だからパーティーを解散してくれって」
オレの言葉に、疑問の声を上げたのはアンリだった。
「それ本当? 巷の噂じゃ、あんたが勇者に縋り付いて離れないって感じだったけど」
「アンリっ」
ズケズケと物を言うアンリに、ミーナが焦ったように声をかけた。
そんな風に言われているのは、百も承知だった。
「知ってます。だけど、おかしいと思いませんか? オレがどんなに縋っても、結局決めるのはリーダーであるアレスだし、オレが仕返ししようにも、あいつは勇者ですよ。何も出来るわけないじゃないですか」
誰かに聞かれたらこう言おうと思っていた事を、ようやく言えた。何故か今まで、面と向かってオレにそう言って絡む奴がいなかったのだ。
オレの言葉に、三人は顔を見合わせていた。
そして、しばらくの後頷いた。
「確かに、あなたの言う事には一理ある。だけど、勇者にも考えがあるのかもしれない。あなたが言った通り、リーダーは勇者よ。しばらく様子見って事で良いかしら」
やはり隊の指揮をとっていただけあって、ミーナが話しをまとめてくれた。
オレはその言葉に頷いた。
この提案は、お互いに有利になるはずだ。
オレは分不相応のダンジョンに行かなくてすむし、彼女らは足手まといがいなくなりより効率的に攻略できるし、邪魔者は少しでも居ない方がいいのだ。
ひと一人を守って戦うのは、普段の何倍も厳しい戦いになる。オレはもう、オレのせいでアレスを傷つけたく無かった。
その日から、新生勇者一行の旅がはじまった。
アレスが挑むようなダンジョンの魔物はオレには強すぎて、アレスがオレを守ってケガする事が増えた。
オレは、必死にアレスに訴えた。
オレをパーティーから抜けさせて欲しい。
それか、このダンジョンに見合う仲間を見つけて欲しい、と。
だけどアレスは、オレをパーティーから抜けさせるのを何故か嫌がった。剣だって魔法だって微妙、何とか補助魔法はかけられるが、それだって微々たるものだ。そんなオレをパーティーに入れておくのは、負債でしかないのに。
仲間探しも、この高レベルに見合うソロの冒険者はなかなか居らず難航していた。
そんな折、アレスの名声は国中に響き渡り、魔王討伐に期待が膨らんでいた。
だから、わざわざ王様がアレスを王城に呼び出して激励し、同じく国中に名前が知れ渡っている、近衛騎士団長のミーナ、大いなる魔女アンリ、神の愛し子エレフィーナを、アレスのパーティーに入れると王命を下した。
みな、それぞれ違った分野の超一流で、凄い美女たちだった。それこそ、アレスの隣に立っても見劣りしない人たちだ。
さらに、期待を高めた王様は、魔王を討伐した暁には、王女であるオフィーリアと結婚させるとまで言い出したのだ。流石にその場では辞退したそうだが、王女は乗り気だったらしい。流石の美貌である。
それでもアレスは、オレをパーティーに入れたままだった。
オレの事を、表立って批判する奴も、裏で陰湿な事を言う奴もいた。アレスの名声が怖くて、実質的な被害を受けるのは少なかったが、それでもオレの精神を疲弊させ続けた。
新しく加入した三人は、生真面目、高飛車、世間知らずとなかなかのくせ者揃いだったが、実力は確かだった。
試しに潜ったダンジョンでは、連携こそ取れなかったけれど、個々の能力は素晴らしく問題無くクリアする事が出来た。オレが突っ立っていた事以外は。
もちろん、そこをミーナに突っ込まれたが、アレスは頑としてオレを置いておく事を譲らなかった。
その日の晩、アレスが寝た後でオレは三人が泊まる宿屋に呼び出された。
口火を切ったのは、生真面目なミーナだった。
「……で、えっと、何て言ったっけ、マルク?」
「メルクです」
「あ、そうそう、メルク。あなた、なんで勇者と一緒に居るの? お世辞にも、釣り合いが取れて無いよね。下手したら、死んじゃうよ」
ミーナが言いにくそうに言葉を発したので、この人はおそらく悪い人間では無いだろうと判断し、ここぞとばかりに頷いた。
「そう、そうなんです! どうか、オレをこのパーティーから追放するのに、協力してくださいっ」
そして、勢いのまま頭を下げた。
それには、三人共ビックリしたようだった。
「えっと、どういうことですの? 追放、というのは、穏やかじゃないですね」
オズオズとエレフィーナが聞いてくる。聞き方が優しくて、つい縋るように見てしまった。
「あなた達も、見ましたよね? アレスが、何故かオレをパーティーから抜けさせてくれないのを。オレは、ずっと、高ランクにあがったくらいから、ずっと言ってたんです。オレじゃお前に釣り合わない、だからパーティーを解散してくれって」
オレの言葉に、疑問の声を上げたのはアンリだった。
「それ本当? 巷の噂じゃ、あんたが勇者に縋り付いて離れないって感じだったけど」
「アンリっ」
ズケズケと物を言うアンリに、ミーナが焦ったように声をかけた。
そんな風に言われているのは、百も承知だった。
「知ってます。だけど、おかしいと思いませんか? オレがどんなに縋っても、結局決めるのはリーダーであるアレスだし、オレが仕返ししようにも、あいつは勇者ですよ。何も出来るわけないじゃないですか」
誰かに聞かれたらこう言おうと思っていた事を、ようやく言えた。何故か今まで、面と向かってオレにそう言って絡む奴がいなかったのだ。
オレの言葉に、三人は顔を見合わせていた。
そして、しばらくの後頷いた。
「確かに、あなたの言う事には一理ある。だけど、勇者にも考えがあるのかもしれない。あなたが言った通り、リーダーは勇者よ。しばらく様子見って事で良いかしら」
やはり隊の指揮をとっていただけあって、ミーナが話しをまとめてくれた。
オレはその言葉に頷いた。
この提案は、お互いに有利になるはずだ。
オレは分不相応のダンジョンに行かなくてすむし、彼女らは足手まといがいなくなりより効率的に攻略できるし、邪魔者は少しでも居ない方がいいのだ。
ひと一人を守って戦うのは、普段の何倍も厳しい戦いになる。オレはもう、オレのせいでアレスを傷つけたく無かった。
その日から、新生勇者一行の旅がはじまった。
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