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しおりを挟む昨日サボってしまった分、今日は頑張ってみようかとペンを取った。
蝶々を自分たちの祖先だとする部族。そう、私はルーズリーフに書いて、違う、と思った。蝶々を自分たちの祖先とする部族。どこかが違う。何かがおかしい。
自分の書いた一行に、私は言いしれぬ違和感を感じた。
蝶々。自分たちの、祖先。部族。別に、変わったところはない。いや、違う! 変わったところは確かに存在する。おかしい。私の感覚の中ではこういう表現はなかったはずだ。
部族!
日本は、確かに複数の人種の混在する国だけれども、部族なんて言う言葉は、現在において表記されない。部族というのは適当ではない。
私は、ここだけを違うと感じた。蝶々を祖先として崇拝する月ヶ瀬村。ここは、違うと感じた。
蝶々のまき散らす鱗粉は、金砂銀砂のように光を孕んで乱反射し、私を幻惑させる。
蝶々。トーテム。樹木婚。
初めて触れる謎に、満ち満ちた世界は、私になぜか不安を抱かせた。
それは、得体の知れないもの、未知への本能的な恐怖だったのかもしれない。
襲い来る怖気(おぞけ)を払拭させるために私は、思い切り頭(かぶり)を振った。そうでもしなければ、多分、ひらひらと群舞する蝶々達を前に、この村から出ていってしまうかもしれない。
柊生さんの端正な横顔が、ふと、脳裏を過ぎった。整いすぎて冷た気な印象を与えるのに、穏やかな雰囲気。優しげな物腰。低い声。柔らかな笑顔。笑い顔。くすくすとわらう、得体の知れない表情。
脳裏でその人は、にやりと笑った。
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