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しおりを挟む『美咲さん、美咲さん。早く早く逃げてちょうだい。あなたが、柊生に好意を寄せているなら。好意を寄せていなくとも、早く逃げてちょうだい』
だれ? 私は辺りを見回すと、其処に若い女性の姿を発見した。初めて見る美しい人だった。
「誰?」
『早く、早く逃げて。私のようになる前に』
「あなたは? それに、駄目よ。私、柊生さんが……」
『その人を、受け入れることは出来ないわ。あなたには。早く逃げてちょうだい。村戸籍を見たでしょう! マツリが終わる前に、早く逃げなさい』
「村戸籍?」
『あなたは、私の名前を見たはずよ。あなた、よく考えてちょうだい。村の住民でもない人が、どうして村の戸籍の中に名前を連ねられると思って? この村には、いま、住民が夕に五十人はいるのよ。あなたは、それをすべて見たはずよ』
「なにを言って……」
『私よ、桃源雛姫よ』
彼女は、枯れ果てた木の中に戻っていった。
『ああ、美咲。見てしまったんだね。私の、妻の、本当の姿を』
柊生さん!
『桃は、子供達だからね。だから、桃は、食べては行けないんだよ』
私は、柊生さんの姿を見た。
わたしが、触れると。
柊生さんの身体は、パズルがバラバラになるように、宙に離散した。
私の身体を、膨大な数の蝶々が。
取り囲む――――。
柊生さん!
叫んで、私は飛び起きた。
私に身体を委ねて、安らかに柊生さんは眠っている。
全身が、汗でべと付いていた。
そう言えば、桃源では、たわわに桃が実っているのに、なぜか柊生さんの奥様は薄紅色の花を付けた桃の木だった。
ああ、そうだ。たしか、確か。海棠先生の奥様も、花を付けた、桃の木で……。
なんで? 桃の木に桃が付くときに、花が付いているはずがない。
どうして、桃に、花が……。桃のはなって、確か季節が三月の頃……。ただ、これだけははっきりした。誰かの奥様である桃は、明らかに普通の桃ではないのだ。
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