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第九話・攻め込もう。
しおりを挟むセルド・ゴルドニアの屋敷の前
私たちは王国騎士団と共にやってきた。セルドが行動を起こす前、エリオには王国に密告してもらった。
『セルド・ゴルドニアが邪教のアジトから悪魔の魔石を持ち出し、王国を乗っ取ろうとしている』と
実際、邪教のアジトから魔石は発見されておらず、破壊された後もない。
ゲームのエンディングでも、セルドは悪魔の魔石を秘密裏に回収し、王国へ襲撃を仕掛けていた。
だから持っていることは間違いないだろうと思ったが…ビンゴだった。
最初は半信半疑だった王家も、間者を呼んでセルドの屋敷を調べてくれた。結果、クロとなった。
悪魔の魔石をブローチに加工して身に着けているのを発見したらしい。
そうして証拠が出そろい、王家は精鋭ぞろいの騎士団を出動させてくれた。
私たちもそれに混ざり、捕獲に乗り出す。
「こ、これはこれは、騎士団の皆様、一体何のマネですかな?」
突然の騎士団の登場に、セルドは戸惑いながらも腰を低くして対応してくる。
だけどこちらには決定的な証拠があるのだ。言い逃れなんてさせない。
「領主、セルド・ゴルドニア。貴公が邪教のアジトから悪魔の魔石を持ち出し、王都を襲撃する計画を立てているという報告が入った。そのブローチがそうだな?」
騎士団長は警戒を解かないまま、セルドの胸元でぼんやりと不気味に輝く魔石を指した。
「い、一体何のことだか…」
「ちょっと!何なのよあんたたち!」
セルドが言い逃れをしようとしていると、ナタリーが割り込んできた。彼女に続いて、女冒険者たちがセルドと騎士団の間に割って入る。
「なんで王国の騎士団たちがここにきてるのか知らないけど、どの道潰してしまうつもりだったから、そっちから来てくれるなんてね!」
あらら、女冒険者の方から攻撃を仕掛けてきたわ。
でもまぁ、その方がこちらとしてはやりやすい。拘束の理由をつける手間が省けたのだし。
私たちも迎え撃つために武器を構える。
「ま、待てお前たち!……クソッ!」
もはやどうにもならないと悟ったのか、セルドは悪魔の魔石を天に掲げた。
すると魔石は黒い光を放ち、女冒険者たちに降り注ぐ。
黒い光は彼女たちを包み込み、力を与えていく。
やがて光が消えたかと思うと、彼女たちの衣装がサキュバスのような、露出の多い妖艶なものとなった。
いや、露出が多いってレベルじゃないなこれ。隠さなきゃいけないところがモロ出しだもの。
「うふふ、私たちの身体を見て平然としていられるかしら?」
先頭を仕切っている女冒険者が妖艶に笑う。ゲームでも彼女たちはこんな風に変身し、迎え撃った王国騎士団の動揺を誘い、蹂躙していった。
だけど、今回はそうはいかない。
「突撃ぃいいいいい!」
「え、きゃっ!?」
「全てはソフィア・グランデール様のために!」
「「「「「彼女に勝利を!!」」」」」
騎士団には皆、私の魅了魔法をかけてある。
ただの魅了魔法じゃない。隠しダンジョンの裏ボスを倒した特典として拾ったこの護符…「祝福のアミュレット」の効果により、魅了の効果が極限まで強まる上、かかった者のステータスが上がっていくという優れモノだ。
結果、彼らは私以外の女性に興味を示さない狂信者みたいになった。
王家には事前に魅了魔法をかけるという許可は頂いている。セルドに洗脳魔法があるという疑いがあるためだ。
彼に抱かれた女冒険者たちがこうなってるのも洗脳魔法のせいだということにしておいたからね。
けどこれはこれで怖い。ちゃんと元に戻るよね?
「ここは騎士団に任せて、私たちはセルドを追いましょう」
「そうだな」
ちなみにエリオ達も魅了済みだ。もしかしたら元婚約者のシャルロッテ様や、グレンとガルフの恋人や妹も出てくる可能性もありますからね。念のため。
私たちはこの場を騎士団に任せ、中へ逃げ込んだセルドを追いかける。
セルドは見失い、数名ほど追いかけてきたため、私たちは二手に分かれて探すことにした。
私はロイドと二人になった。私たちはあちこちを走り回り、セルドを探す。
「どこへいったの…」
「見つけたわよ、ロイド!」
あちこちの部屋を開けて探し回っている私たちの前に、ナタリー、キャロ、ミモザが現れた。追いつかれたようだ。
「ナタリー…」
「ロイド、あなたは粗チンだけどまっすぐで、誰かを妬んだりするような奴じゃないって思ってたのに、こんなことするなんて…」
「どうしてこんなことするのお兄ちゃん!」
「それにあなたはフィアさんですよね?何故あなたまでこんな…」
彼女たちの攻めるような声にロイドは何も返さない。武器を握る手が強くなったように見える。
私も槍を構え、彼女たちの動きを警戒した。
「それはこちらのセリフですわ。何故セルド・ゴルドニアが、世界を滅ぼす悪魔を召喚する魔石を持っているのですか?あなた方はあれの危険性をよくご存じなのでしょう?」
「知ってるわよ、でも領主様が欲しがってるんだもの。褒美をもらうためにはしょうがないでしょ」
「褒美って…まさかそれだけのためにあんな危険物を?」
褒美とはおそらく、セルドに抱いてもらうことだろう。まさかそれだけのために、世界を崩壊しかねない危険物を持ち出したというのか。
彼女たちは最早、セルドのためなら道を踏み外すこともいとわないそうだ。
「さてロイド、あなたも領主様に歯向かうのなら殺してあげるわ。大丈夫、村の人たちには、ロイドは平和のために戦って死んだと言っておいてあげるから」
「……」
ロイドは黙ったままナタリー達と対峙する。私の魅了魔法で彼女たちがどんなに煽情的な格好をしていても、それに気を取られることはないけれど、彼の心中は分からない。
戦闘開始、3対2で人数はこちらが不利だが、私もロイドも隠しダンジョンでレベルを底上げしているし、装備だって最強レベルのものを身に着けている。
負けるわけにはいかない。
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