NTRもののゲームの世界に転生した私の生存戦略

クラッベ

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番外編・その後の彼女達

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※ナタリー視点

「もう戻ってくるなよ」

衛兵の人にそう言われ、私は刑務所を後にした。
出入り口ではミモザとキャロがいた。彼女たちも出してもらえたようだ。

「あ、お姉ちゃん…」

「ナタリーさんも釈放してもらえたんですね」

「うん…まぁね」

釈放してもらえたのは良いが、私たちの顔は暗いままだ。
これからどうすればいいんだろう。私たちはロイドを裏切り、セルドの悪事に加担しようとした。

今更彼の元に戻るなんてできない。あんなひどいこと言っておいて戻るなんて厚顔無恥もいいとこだ。

それにあの時…ロイドは私たちを拒絶した。ロイドのあんな目、初めて見た。
あれは仲間に向ける目じゃなかった。

『軽蔑』
あれはそう、軽蔑の目だった。

その目を向けられた瞬間、私の胸は締め付けられた。
自然と私はロイドの名前を呼んでいた。馬鹿にしたのに、捨てたのは私の方なのに。こっちを見てほしくて何度も呼んだ。
だけどロイドは、もう私を見てくれなかった。

彼の隣にはフィア…いや、ソフィア様がいた。まさかお貴族様だったなんてね。

…そこでようやく気付いたの。私はロイドの優しさに甘えてたんだって。
ロイドなら私を裏切ることなんて絶対ないから、何したって平気だって勝手なこと考えてた。

おかしいわよね。そんなことあるわけないのに、ロイドのこと大好きなはずなのに、セルドと体を重ねてるのを見せつけた時の顔を見た時、私は罪悪感を抱くどころか馬鹿にして笑ってた…あんな小さいのおったててみっともないって、思ってた…

私…本当に最悪よ。

もう二度と、彼の目に私が映ることはないんだ。

それからセルドを追っていたロイド達が戻ってきて、ロイドが瀕死だって聞いた時は…体は動いていた。

縛っていた縄を無理やりほどいて、彼の元へ向かっていた。キャロとミモザも追いかけて来てくれて、私はロイドのところに到着していた。

こんなことして許してもらおうとなんて思わない。だけど私は…彼に死んでほしくなかった。

なんで今更そう思ったのか分からない。こんなことしたって、私が彼を裏切った事実は消えない。それでも…彼を助けたかった。

「これからどうしますか?」

「…私、この国を出ようと思うの」

「お兄ちゃんに会わないの?」

「うん、ロイドだって他の男と寝るような女に会いたくないだろうから」

私がそういうと二人はうつむいた。二人ともロイドの事が好きだったから思う所があるのだろう。ややあって、ミモザが口を開く。

「…それなら私たちもついてきていいですか?」

「え?」

「ミモザお姉ちゃんと話してたんだけどさー私たちもお兄ちゃんに会い辛いし故郷にも帰り辛いからから、しばらくは遠くに行っとこうかなって。お姉ちゃんも行くんなら一緒に行こうよ」

苦笑するミモザと頭の後ろで手を組んで笑うキャロ。私自身、当てもなく旅するつもりだったから、二人についてきてもらったらすごく心強い。
なにより…一人でいたらこの罪悪感に押しつぶされそうだったから。

それから私たちは人知れず、この国から出ることにした。


ーーーーーー

私たちは国を出て、誰も知っている人のいないほど遠くまでやってきた。
そこで私たちは一から冒険者としてやり直すことにした。

私たちは一度ギルドのトップにまで上り詰めたことがあるから、ここでは期待のエースとして歓迎された。
そんなある日の事、私たちがいつものようにギルドに行くと、初めてこの国に来た時仲良くなった道具屋の娘がうかない顔をしていたのを発見した。

「どうかしたの?」

「あ、ナタリーさん…いえ、なにも…」

気になって声をかけたけどはぐらかされる。だけどこの時、何故かは分からないけど絶対に彼女を放置してはダメだと私の勘が告げていた。

「話し辛いかな?それなら場所を変えようか?力になりたいの」

なんとか話してもらおうと引き留めてたら、その子は観念して話してくれた。

なんでも幼馴染の彼と、いつか二人で独立しようと将来を誓い合い、つい最近二人の店を持つことになった。
しかしどういうわけか、店を建てた時にできた代金を今すぐ返せと経営者側が言い出してきたのだ。
本来ならお店を経営しながら少しずつ返済する話だったはずなのに、突然の要求に幼馴染は抗議したが、ガラの悪い男たちに大怪我をさせられてしまう。

負傷してしまった幼馴染のために、彼女はなんとか返済は待ってもらうように一人で頼み込んだ。それが間違いだった。

向こうは彼女に「その体でオレたちの事を奉仕してくれるなら考えてやる」と言ってきたのだ。

もちろん彼女は断りたかったが、返済期限が近付いてくるにつれ焦りだす。
幼馴染との夢を守るため、彼女は体を差し出すことにしたのだ。

最初は口で奉仕していたのだが、段々と胸をもませろだとか尻でしごけだとか、段々と要求がエスカレートしていった。

このままでは最後にとんでもないことになるかもしれない。そこまで言うと彼女は泣き出した。ずっと誰かに助けを求めたかったのかもしれない。

私は彼女に、かつての自分を重ねた。

「分かったわ。私たちに任せて」

ーーーーーーー

そうして私たちはさっそく、その男の事を調べた。
どうやらそいつは似たような手口で女を脅し、最終的には娼婦にしてしまうようなゲス野郎だった。

警察に突き出そうにも、この街の警察は皆あの男の味方だ。金を握らせ、無料で女を使わせているらしい。
ならばこの国の騎士団にでも突き出そう。そう決めた私たちはさっそく証拠集めを開始した。

「お隣よろしいかしら?」

「んあ?姉ちゃん一人か」

「えぇ、今日一人で寂しく飲んでるところなの…よかったらご一緒してくださる?」

調査した結果、その男が良くいりびたる酒場に足を運び、ワンナイト狙いの淫売を演じた。セルドに溺れてた時、一度あいつの経営する風俗店で働いた時の経験が役に立つなんて複雑だけど、使えるものは何でも使うつもりだ。

そして男の好みドンピシャだった私は、ソイツの屋敷へ連れてかれ一夜を共にした。

そうしてる間にキャロとミモザが屋敷に侵入し、証拠を集めてくれた。私の方も男に酒と薬を飲ませて自供させていった。
十分な証拠がそろったら、それを王都の騎士団へと提出した。そして男とその仲間はお縄についたのだ。

「ありがとうございます!ほんとうにありがとうございます!」

男が逮捕された知らせはすぐに道具屋の娘のところに届いた。
彼女は私たちにすごい勢いで頭を下げて何度もお礼を言ってくれた。

聞けば彼女はあの後、借金の返済期間を延ばすためとはいえ幼馴染を裏切っていることに変わらないから、全てを打ち明けたらしい。
軽蔑されるのを覚悟で言った彼女に対し、幼馴染の彼は泣きながら抱きしめてくれたそうだ。「そんなことさせてごめん」「これからは君を守れるくらい強くなるから」彼はずっとそう言って謝ったって…

私もあの時、ロイドに全てを打ち明けていたら何か変わったのだろうか。

「お姉ちゃん大丈夫?」

「…え、あ、ごめん。何が?」

「すごくつらそうな顔してたよ?」

どうやら顔に出ていたらしい。二人が心配そうにこちらをみていた。

「もしかしてロイドさんのことですか?」

ずばり言い当てられ、つい言葉に詰まってしまった。バカよね。今更あの時こうしていればって後悔してももう遅いのに。

…でもこんな時、ロイドだったらなんていうかな、なんて思ってしまう。私はまだロイドの事が好きなのかな…

「…ううん、本当に大丈夫だから」

私は笑って二人にそう言った。これ以上心配かけたくなかったからだ。


ーーーーーー

ロイドと別れて世界を奔走していて気が付いたのだが、どうもこの世界は愛し合う恋人同士を引き裂く男たちが多い。

相手の弱みを握って体を向こうから差し出させ、最終的には快楽の虜にして女を食い物にしている、所謂「寝取られ」というものが蔓延っているらしい。

それを知って私は…いや、私たちはやるべきことを悟った。
今日もどこかで愛し合う二人の仲を引き裂こうとしている、セルドのような卑劣な下衆どもを成敗すること。
愛し合う者達の絆を守ること。

それがロイドを裏切った私たちにできる、唯一の贖罪だと信じて…
 
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