繊細な悪党

はるば草花

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繊細な悪党

繊細な悪党15ひとまず確保

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「それが? 結局は何も起きなかった。そもそもこの学校には運命の加護をかけてあるんです。そんな事態にならないんですよ」

「どういう…」

「かなりそれに力を入れました。入ってくる男達なんて入ってきた後でもどうにでもなりますが、向こうは魔術師や召喚師を何人も連れていましたし、呼ぶ人が一番運命をどう動かすか分からない存在でした。それを想定して細工してあったんです。つまりは初めから危険なんて起きるはずはなかった」

「そんなこと…、たしかだったとしても、こいつの罪は消えない」

「騎士団希望は頭堅いですね。そういう騎士団はどうなんですか? こっちが出した情報があったのに結局やってきた騎士はわずかばかりのようですね」

「それは、明確な日にちが…」

「それならそれでやりようはいくらでもある。つまり、上は本気で考えなかった。まあ、あいつがそんな判断をしたのでなく、騎士団が動くことを許可する者が判断したんでしょう。それを無理にこうして騎士をよこしたのはあいつの英断だ。しかし、数が少なくて死者が出たとしたら? しかたなかった、と言いますか? リンメルとどれだけの違いがあるんでしょう。俺でなくては今回のことを穏便にすますことなんてできなかった。その俺のやり方に口をはさみますか? 無能なのに」

「くっ…」


言ってることは全然わかんねえけど、ウィンレイのほうが悪役なのは分かる。可哀想に委員長頑張れ。精神的に疲れたのか委員長は剣を下ろした。ふうっ。気分のいいもんじゃなかったな。


「分かったなら、この後のことは頼みますよ。人の手におえないものは排除しましたし、後は主役がやるべきことです」

「…ああ。…セルツァーはなんであんたなんかを尊敬できるんだ」

「不思議ですね。関わった人は誰でも俺が正義じゃないって分かるんですけど」

「敵にはならないでくれ…」

「挨拶のように言われますよ。運のいいことにあんまり欲はないんで。ある欲といえば仕事をあまりしたくないってことくらいかな」


グランド委員長は深く息を吐いた。あんま悩むと禿げるぞ?


「うおっ、なにすんだ」

「移動します。疲れました」


ウィンレイに腰を引き寄せられて胸に密着する。男とくっつくなんて気持ち悪いだろと抗議しようと思ったら、風が吹いて、まばたきしたら、知らない場所にいた。
なんだそれ。


「色々したいけど、力を使いすぎたな」

「何を言って…、おい、なに、うお?!」


そこは寝室らしく、寝台があって、そこにウィンレイが横になったもんだから、捕まったままの俺まで寝台の上に倒れることになる。


「……眠ったのか? おい起きろ、つか寝ててもいいから俺を離せ」


すぐに眠ったらしいウィンレイで、俺はその腕から逃れようとするも、別に普通の腕なのにびくともしない。騒いでみても起きる気配がない。

そのうち俺も疲れたのか、眠りについた。いくら疲れたからって男と一緒に寝るなんて屈辱だ。





「……んあ? なんだここ。飲み過ぎたか? 最近飲む機会なかったと思ったんだげどなー」


目が覚めたら知らないとこにいた。こんな上等な場所にいたのは初めてだが、ゴミ捨て場にいたりしたことはある。真っ白なシーツはさらっとしてて動きづらい。


「うーわー、馬鹿がいる」

「はああ?! なにいきなり失礼なこと言ってんだ。ああ?」

「離れて見てたが近くで見るとますます柄の悪さが目につくな」


部屋に知らない男がいて初対面なのに失礼なことを言ってる。俺のこと無視しているような態度だ。着てるものは頭よさそうな奴が着そうなもんだし、プライド高い奴は俺みたいなのを蔑むんだよな。


「こらこら、それじゃあさすがに失礼にならない?」

「そんなつもりは…。…あなたも微妙な言い方ですね」

「あ、てめえ、なんでここにいる?」


部屋にウィンレイの奴が入ってきた。


「えぇー、なにそれ。シャスの気持ちも分かるな…。ここ、俺の部屋なんだけど」

「は?」

「まだ理解できない?っていうか思い出さない?」

「…なんで、お前のとこに?」


そういや昨日こいつに連れてこられたような…。


「単純に疲れたから寝にきたんだけどね。リンメル送ってる気力はなかったし」

「連れてくることねえだろ。…お前の部屋って寮にあったのか?」


寮部屋にこんな作りなかったと思うけど、色々あんのか?


「違うよ。そうだね。話すことはいくつもある。なんでまずは朝食食べない?」

「…おう」


そう言われると腹減った。
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