繊細な悪党

はるば草花

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繊細な悪党

繊細な悪党18えらいえらい

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「危なそうになったので、普通の生徒に紛れたんすよ」

「そう…。他には誰も来ていない。援助も来ないんだ」

「それは大変ですね。それで、あの報酬はもらえないですか?」


失敗にはなったが、仕事はちゃんとしてたし、リンメルとしては貰わないと苦労した意味がない。


「そんなもの…。いや、たしかお前は呼ぶ人と知り合いだったな」

「はあ。そうですけど…」

「それはいい。今からでもやり直せる。呼ぶ人をここに呼んでこい。そうすればいくらでも金はやる」

「あー…。そういうのはちょっと…。もう危ないことはしたくないんで」


馬鹿なんで正直に答えたリンメル。その結果なんて想像できない。


「拒否は許されない」

「へ?」


馬鹿リンメルは男の目が剣呑なものに変わったと気づかない。


「うあっ、いっ…」

「…どうしてくれよう。逆らう気力がなくなるほどに痛めつけようか? それとも手っとり早く魔術で操るか」

「うぐ…」


殴られたリンメルは倒れ、男はリンメルを踏み潰し、抜いた剣の切っ先を近づける。


「まずは憂さでもはらさせてもらうか」


男がリンメルの腕に狙いをさだめ、切っ先を上げた。



「それはお仕置きにしては過激すぎる」

「ぐあっ」


突然別の男の声が響き、男の剣は何かの力に弾かれる。


「何者だ!」

「あはは、なに、リンメル並の馬鹿なのかな? 状況判断早くできないとお仕事やってけないよ?」


暗闇から姿を見せたのは秀麗なウィンレイ。


「あなたは…!」

「逃げたのは分かってるんだから、捜すに決まってるでしょ。捕まってもらうね。それとうちのリンメル返してね」

「誰が…!」

「あららー。禁術使った? 反動えぐいのに。リンメル以上の馬鹿だね」


地面から獣が1匹出現する。その姿は異様で、魔獣と呼ぶにふさわしい。濃灰色の長い毛にいくつもの足らしきもの。

いきなり出現したことから召喚したということになる。しかし契約を済ませていても召喚は簡単ではないし、そもそも才能と地道な努力なくして出来る者がいないのが召喚術だ。もちろんウィンレイも。それを簡単にやってのけたのは、才能もあるのかもしれないが、考えなくても禁術だと推測ができる。


「うるさい!」


天才魔術師の出現に自棄になったのか、まさか勝てると思ったのか。
ウィンレイからすると捕まれば終わりなのだから、抵抗するのは当然だとは思う。無意味であるが。


「さて、…捕縛。そして散れ」

「なっ…!」


人にとっては害でしかない存在の獣なので、遠慮なくウィンレイは獣の動きを封じ、小規模結界内での爆発で獣を消した。


「そっちも容赦はしない」

「ひっ…」


ウィンレイが獣から男に視線を向ければ、男は情けない声を上げた。


「あれ? 俺の今の顔怖いことになってる? これでも隠してるつもりなんだけど。ま、知ってるだろ? 俺には容赦なんてない」


悪いことなんてしないウィンレイではあるが、容赦なんて欠片もないと有名である。行動の理由は、固い頭の騎士と似たようなまっとうな理由があってなのだけど、上品に嘲笑う姿が怖すぎて行動以上の噂になっている。


「うわあああ…!」


噂を思い出して恐ろしくなった男は、化け物を目の前にしているかのように転げるように逃げる。


「失礼じゃない? …捕縛」

「ぐがあっ」

「ああ、ごめん。間違えた」


男の足だけが捕らえられ、男は勢いよく倒れて全身を打つ。もちろんウィンレイがわざとした。大罪人だ。どうなっても咎められない。


「うるさい連中がここぞとうるさくなりそうだから、不服だけど、捕縛」


今度はしっかり男を捕らえた。
ウィンレイはそれで男に興味は失せ、リンメルに近寄る。


「今度はお守りちゃんと持っていったね。えらいえらい」

「うー、痛い…」


ウィンレイはリンメルの頭を撫でる。

リンメルの馬鹿な行動はウィンレイには簡単に想像できたので、そこは今更なにも言わない。躾はこれから。お守りさえ持っていてもらえば場所の特定もできる。

その後、連絡した騎士団の騎士達がやってきて男を連れていく。

今回もリンメルは場所は教えなかったけど、貢献はしたということで相殺である。
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