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勇者想う時2
しおりを挟む「危険が多いのは中央なんだけど、大事なことはいろんなところであるよ。今通ってる村はね、素朴でいい村なんだ。そうだ、なにか雑貨の素材になりそうなものを探してこようか?」
「…べつにいい。それより使命を頑張れよ」
「ん、頑張るよ」
朝がきて、名残惜しそうにゆっくり歩いて戻ろうとするクロアで、昨日の弱さは消えたノノロリルはクロアの背を叩いて送り出した。
その日は店番のないノノロリルは旅人向けのバッグの構想をねり、午後には時々やってきてくれる苦労仲間の神官レアドとお茶をする。
「ああ、聞いたんですか。なんでも占い師によっての予知と、その村に伝わる言い伝えから警戒してるそうなんです」
「ふーん。あ、でもさ、俺のせいでクロアは遠いとこに毎日通うなんて面倒なことしてんだよな。本当は村にずっといたほうがいいんだろ?」
「まあ…。でもそんなに気にすることはないですよ?他の方はずっと滞在してるんで異変があればすぐわかりますから」
「ん………」
周囲はノノロリルは悪くないと言ってくれるも、気にしないわけはない。気にする姿をクロアフィートに見せることもできずにいるのだろうと、レアドはこうしてお茶を飲み合い気遣う。
「そういえばクロアフィート殿はわざと言わなかったのかもしれないですけど、最北の村にあるお店にクロアフィート殿はよく行ってるそうなんですが、そこの店番の少女がノノロリル殿を思い出させるようですね。クロアフィート殿も寂しく感じてるんですよ」
「少女…」
「あっいや、まだ子供なようですから心配するようなことはないですよ?!」
「分かってます。今更気にしないですよ。クロアが美人にもてもてなんて知ってます」
言葉に刺があるような気がレアドはするが、ノノロリルはこれまでにもうたっぷり自分の容姿に悩んだ。見てもいない少女にまでいちいち悩むくらいなら恋人やめてる。
「で、ですよね。よかった。ノノロリル殿を泣かせてはクロアフィート殿に怒られてしまった」
「その時は俺がクロアを怒るんで言ってください」
拳まで作るノノにレアドは何とも言えず笑ってごまかす。しかし切り替えて優しい顔になる。
「私はクロアフィート殿には自由に幸せになってほしい派ですからね。応援だけでなく協力もしますよ。神官としてはいけないかもしれないですが、友人なんです。だからノノロリル殿は堂々とつき合ってください」
「レアドさん…」
「もちろん、ノノロリル殿にも幸せになってほしいですよ。あ、そうだ。私もクロアフィート殿の考えに賛同です。恋人は話をきけて当然です。もっと現在の勇者の行動を知ればいいんじゃないですか?会えない時間も2人だけの共有になると思います」
「2人だけの共有…」
昨日はつい気になって何をしてるのか聞いたけれど、クロアの使命なんて知っても力にはなれないのだから意味がないと思ってた。無意識に避けていたのかもしれない。だけど2人だけの共有ということには心動かされる。
その日早めに家に来たクロアにさっそくレアドの提案を話してみる。クロアも共有という言葉に興味をもってくれる。
「響きがいいね。よし、なら今回の始まりから話そうかな」
ベッドの上で2人長い話をした。勇者としての使命に関わることでシリアスなこともあるが、クロアは楽しそうに話す。
「うん。ノノに聞いてもらえて良かった。これからはたくさん話すね。過去のこともノノが望むなら」
「そっか」
どこかに行ったりしないでとか、みんなの勇者なんてやめてとか、それは言う気もないけど、こうしてクロアの時間が共有できるなら幸せだ。
「あ、レフェとの出会いとかもきいてみたい。どんな感じだったんだ?」
「え、あ、うん」
魔王レフェレクトのことを知りたいと思うなんて嫌だ。顔が引きつったクロア。噂で有名な姫とのこと聞かれるよりはマシだが。嫌でもやっぱり話すのは楽しかった。
違いは2人を引き離そうとするけど、繋がってますようにと、2人は望む。
応援ありがとうございます!
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