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園田馨の場合。
1.唐突な告白
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「好きです!」
屋上へと続く階段を登る途中、突如聞こえたその声に僕はゆっくりと振り返る。
そこに居たのは、ネクタイの色から見るに歳上であろう男。
走ってこちらへ来たのか少々息を切らしつつこちらを見ていた。
告白されるのは初めてではない。
雑誌に載っているせいか、数え切れない程“好き”というその言葉を聞いてきた。
勿論、男も女もどちらからも。
どいつもこいつも、僕の事をよく知らない。
僕だってこいつらの事を知らない。
だから、僕はいつも通り、何度言ったか分からない言葉を口にする。
「悪いけど、僕は…」
するとどうだろう、僕が言い切る前に彼はこちらへと近付いて来て僕の手を握って言葉を遮るように喋り出したのだ。
「俺は3年の黒川雅紀、自分に一目惚れしたんや。いきなり付きおうてや言わんから友達になってくれ!」
……なんなんだこいつは。
「取り敢えず、そろそろ式始まるからもう行くな。じゃあ、また後でな!馨ちゃん!」
僕が呆気にとられている間に言いたい事を言うだけ言って去っていく。
その上、初対面の人間をちゃん付け…本当になんなんだ。
「…友達になんて、なる訳無いじゃない。」
誰もいなくなった階段で、誰に言うでもなくぽつりと呟く。
教師が煩いので登校はしたが入学式になんて出る気も無い僕はそのまままた屋上への階段を登った。
ああ言うのは放置していればそのうち飽きて離れていくだろう。
そんなことを思いながら、程よい日陰に座り目を閉じた。
そんな考えは甘かったと後悔するのは、もう少し後の話。
屋上へと続く階段を登る途中、突如聞こえたその声に僕はゆっくりと振り返る。
そこに居たのは、ネクタイの色から見るに歳上であろう男。
走ってこちらへ来たのか少々息を切らしつつこちらを見ていた。
告白されるのは初めてではない。
雑誌に載っているせいか、数え切れない程“好き”というその言葉を聞いてきた。
勿論、男も女もどちらからも。
どいつもこいつも、僕の事をよく知らない。
僕だってこいつらの事を知らない。
だから、僕はいつも通り、何度言ったか分からない言葉を口にする。
「悪いけど、僕は…」
するとどうだろう、僕が言い切る前に彼はこちらへと近付いて来て僕の手を握って言葉を遮るように喋り出したのだ。
「俺は3年の黒川雅紀、自分に一目惚れしたんや。いきなり付きおうてや言わんから友達になってくれ!」
……なんなんだこいつは。
「取り敢えず、そろそろ式始まるからもう行くな。じゃあ、また後でな!馨ちゃん!」
僕が呆気にとられている間に言いたい事を言うだけ言って去っていく。
その上、初対面の人間をちゃん付け…本当になんなんだ。
「…友達になんて、なる訳無いじゃない。」
誰もいなくなった階段で、誰に言うでもなくぽつりと呟く。
教師が煩いので登校はしたが入学式になんて出る気も無い僕はそのまままた屋上への階段を登った。
ああ言うのは放置していればそのうち飽きて離れていくだろう。
そんなことを思いながら、程よい日陰に座り目を閉じた。
そんな考えは甘かったと後悔するのは、もう少し後の話。
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