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第四章

第75話

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馬車が・・・三台編成になっています。エリーさんたちの予想通り、途中で『回収隊』の馬車を見つけて『回収』していました。アンジーさんとシシィさんが『王都守備隊』として、エリーさんが『交渉代理人』として回収隊と会い、「セイマール交渉人一行に少女が殺されて遺棄されたと報告があったため、その被害者の家へ向かっている。セイマール代表としてついて来い」と言ったそうです。

「エアちゃん。ジャロームに着いても馬車から降りなくて良いわ」

エリーさんと『王都守備隊隊長』のアンジーさんとシシィさん、そして『回収隊の代表数名』が少女の家に向かうそうです。王都の守備隊に『行方不明になった少女がいる』と報告を出していたのが『ジャローム』だったそうです。そのため、私が寄り道先としてジャロームの名を挙げたことで事情を察して、詳しく聞かないでくれたそうです。
その『事実確認』に回収隊を連れて行くことで、「交渉人一行がこの国で何を仕出かしてきたか」を知らしめるためです。そして、混乱を防ぐためにセイマール国の関係者と名乗らせずに、『少女の家族遺族の悲しみや、人々のいかりと憎しみ』を直接感じてもらうそうです。

「スモア。エアちゃんを馬車に残すから、セイマールの連中に不審な動きがあったら、遠慮なくっちゃって」

「連中は交渉人じゃないから、行方不明になっても問題無いわ」

「エアちゃんの代わりに地面に沈めても良いですか?」

「もちろんよ。『守備隊権限』で許すわ」

アンジーさんとシシィさんが、スモアさんに『楽しそうなこと』を許可しています。エリーさんは少し考えてから、私の方を向いて言いました。

「・・・エアちゃん。一応、安全のために荷馬車の中ここでテントの中にいてね」

「それは・・・」

「エアちゃんの安全のためよ」

「・・・ツマンナイ」

私の言葉に「やっぱり」とエリーさんが苦笑しました。

「エアちゃん。絶対アンジーとシシィの話を『面白そう』って思ってたでしょ?それにアンジーが『守備隊権限』って言ったから『自分もやりたい』なんて考えていたと思うけど・・・?」

「えっと・・・」

「「考えていたのね」」

アンジーさんとシシィさんに、声を揃えて当てられてしまいました。




「エアちゃん。勝手に出てこられないように、テントの周りの結界は私が張るからね」

アレ?私がこっそりテントから出るつもりだったのを、エリーさんに見破られていました。

「あら。エリーったらエアちゃんの考えを先読みしていたのね」

「そりゃあ、エアちゃんだもの。手を出さない約束をしても、こっそり覗いたり、こっそり町で食材などの買い物をしたりしそうだもの」

「あ、エアちゃん。『買い物』をする気だったのね」

「だって・・・。ご遺体をご家族のもとへ送って行ったのに、その足で屋台に寄って買い物なんて出来ないもの・・・。だからといって、お家に寄る前に買い物って・・・。失礼でしょ?」

私がそう言ったら、御者台にいたスモアさんが頭を撫でてきました。

「エアちゃんは優しいからなあ。ウチの息子らなんか、そんな『気配りに心配り』なんて上等なモン、母親の腹ン中に置いて生まれたからなあー」

スモアおまえが母親のお腹に置いてきたから、子供に遺伝しなかったんじゃないか?」

「いやいや。もしオレが『お袋の腹ン中に放り出して生まれた』としても、彼奴アイツらの母親から少しチビッとは遺伝してるだろ」

「つまり『父親のマネをして放り出した』と言うことか。・・・さすが親子」

「いや~。そんなにホメるなよ~。テレるじゃないか」

「誉めてない!」

スモアさんはエリーさんと『掛け合い漫才』を楽しんでいます。

「エリー。そろそろ行くわよ」

「エアちゃん。この周辺にも迷宮と洞窟、両方のダンジョンがあるわ。いずれ、此処のダンジョンに来た時の『お楽しみ』にするといいわ」

「エアちゃん。呼ぶまで出てきちゃダメよ」

「・・・エリーさんが閉じ込めちゃうから出られません」

「フフフ。そうね」

「じゃあ。『お留守番』お願いね」

「スモア。エアちゃんをお願いね」

「ああ。・・・まあ双子がいるからな。一応大丈夫だろ」

エリーさんにテントに入るように促されて、渋々テントを出して入りました。テントに入らなくても良いのでしょうが、ただ何もせずに待っているのも退屈です。
テントの中に入りましたが、料理をする気になれません。
メアベアとパンを出して食事にしましょう。



私が譲られた『薬学やくがく施設』に向かっていた時に、ソレはいました。何勝手に敷地内に入り込んでいるのでしょう?

「わざわざ来てやったんだ!中に入れろ!」

そう言っていたので建物には入れなかったようです。だいたい「入れろ」と言いつつ私を取り囲んで、どうしろというのでしょうね?

其奴そいつらは、人を馬鹿にしたような口調で『回復魔法』を自慢しましたが、この国では庶民でも使えるし私でさえ使えると言われて恥ずかしさからか顔を真っ赤にしていました。
そして脅しのつもりで言ったのでしょう。少女の話を一方的に聞かされて、思わず王都を飛び出してしまいました。

飛翔フライ』で聞いた話に近い風景を見つけては周辺を探して回り・・・。いくつ目でしょう。ようやく『少女のご遺体』を見つけました。馬車から投げ出されたのでしょう。着衣は破かれ、身体は殴られたようなアザも多く、顔面は腫れ上がって傷だらけでした。
・・・可哀想ですが、その時の姿は記録に残しています。

もちろん、その後はエリーさんに話した通りです。
ご遺体に『状態回復』で傷も衣服も『元通り』になりました。・・・本当に『寝ています。起こさないで下さい』と言ったら誰もが信じてくれたでしょう。

飛翔フライでご遺体を応接室に運び寝かせました。それからテントを収納して『ジャローム』まで行きました。そして、人々に聞いて少女の家に辿り着きました。お父さん、よく見ず知らずの私を家に入れてくれたと思います。だって、私は町に入る前に『冒険者服』からワンピースに着替えていましたから。
家に入って、お父さんにひとこと言ってからテントを出して応接室に招きました。少女のご遺体は失礼ですが、『何もない部屋』に床にシーツを敷いて置かせて頂きました。

「娘さんに間違いありませんか?」

「はい・・・。娘を家族のもとへ連れ帰ってくださりありがとうございました」

そう言ったお父さんは、少女の頬を撫でて「おかえり」と呟いていました。そして言ったのです。「綺麗にして貰ったんだな」って。
シーツは譲ったので、お父さんは大切にくるんで抱き上げてテントを出られました。出たところでお姉さんは妹さんに縋って自分を責めていました。そして少女を部屋へと連れて行ったようです。
勝手に家を出てきましたが、お父さんは追いかけてきました。そして「お礼がしたい」と言われて辞退しました。

お花を買って、ご遺体を見つけた場所に戻ってお花を供えたら、会いたくもない連中と再会してしまいました。
そして今度は『淫乱女』と見下されて、無差別殺人を『予告』されたのです。

少し離れた場所の崖の中腹にダンジョンの出入り口があったので、其処へ入っていたつもりでした。大量の素材など採取して進んでいたら、追いつかれてしまいました。

・・・そして殺されかけて『再起不能』にしてきました。

供花きょうかを踏みにじって、自分たちが殺した少女を侮辱したのです。流石に我慢出来ませんでした。


ふと自分の賞罰がどうなったか気になって、ステータスを開いてみました。称号に『神に代わりバツを落とす者』があったからでしょうか。商人ギルドでエリーさんが言った「私たちが手をくだしても罪を免除してくれる」という部分が聞き届けられたのでしょうか。
私の賞罰は何もありませんでした。

・・・これで、王都に戻ってもバツを受けることはないでしょう。それだけで安心出来ました。
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