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第七章
第269話
しおりを挟むまず、彷徨う死体と奴隷化した死体。それ自体が人と神とでは見解が違うらしい。その点を理解していない私に、妖精たちが講義してくれることになった。
「魔物と人工とメクジャ。その違いは?」
《 魔物はそのまんま。アンデッドという種族の魔物として生まれる 》
《 アンデッドの種類は様々ね。人だったり、魔物だったり、家畜だったり 》
《 違うよ。人の姿だったり、魔物のようだったり、家畜みたいなものだったり 》
うん、それは理解できた。
「腐った状態で生まれるのって可哀想だね」
《 うーん。そのほとんどが『生まれる前に母親が死んだ』から 》
《 母親が死んでも、お腹の赤ちゃんはわからないから 》
「魔物は赤ちゃんで生まれるの?」
《 ううん、成長してからね 》
《 母親の知識を取り込んでから 》
《 真っ先に母親や生まれなかった兄弟の復讐をするんだよ 》
……それはそれで悲しい話です。
《 基本、死んだら身体から魂は抜けるよね。後悔や恨み辛みが残っていても、丁寧に埋葬されれば時間をかけて浄化される 》
《 そのシステムがうまくいかないことがあるの 》
死んだ身体から抜け出た魂が、その場から動けなくなる。朽ちていく自身の身体を見続けるのって。それもその身体から離れられないって……
「悲しいね」
そう呟いたら、みんなが頭を撫でて、白虎は擦り寄ってきた。
「魔物が死んだら?」
《 それは腐った死体 》
《 人間が死んでも腐った死体だよ 》
「でも奴隷化されたのも『ゾンビ』って言うよね」
《 それは死体を操るからだよ。そのために『無関係の魂』を死体に入れる 》
「無関係の魂?」
《 使役している魂のことだよ 》
墓地などで身体から離れられない魂を毟り取って、使役するらしい。自分の死を受け入れられずに悲しんで泣いている魂は、自我が残っているため使役にむかない。泣く気力すらなくした魂が使役されるらしい。
「死霊使いが使う死霊とは違うの?」
《 うん、違うよ 》
《 死霊は主に自然界に残った『人の思い』 》
「それって『心のこり』とかいうやつ?」
《 そう。『もう一度、あの場所に行きたかった』などの思いを残してこの世界を去った魂の一部。その願いが叶ってもすでに『還る場所』はなくて彷徨っているのを保護するのが死霊使いなの 》
「妖精を保護した私みたいだね」
《 私たちは死霊じゃなーい! 》
《 そんなこという子にはお仕置きー! 》
妖精たちが背中、つまり私の手が届かないところを狙ってくすぐってくる。
「キャー! 白虎、反撃~」
ガウッ
背中に回ってくすぐる妖精たちを、白虎は大きな尻尾で追い払ってくれた。
《 キャー! ごめんなさーい! 》
しつこくくすぐってきた火と光と風の妖精がリリンの触手に捕まり、ピピンの取り出した鳥籠に投げ込まれた。
《 えー⁉︎ ごはん抜きー! 》
《 それはイヤー! 》
どうやら、ピピンから『ごはん抜き』を宣言されたようだ。……って、妖精はごはんを食べる必要がないのに。
《 美味しいものならなんでも好きよ 》
「じゃあ、今日のごはんは唐揚げとタルタルソースにしようか」
私の言葉に歓声をあげる鳥籠の外とは反対に、慟哭する鳥籠の中だった。
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